【品薄は解消傾向、資材最大4割高/資金需要に融資拡大で応える】
2月28日の米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を発端に、ホルムズ海峡は事実上の閉鎖状態となった。国内の建設現場では、春先から初夏にかけて、シンナーや塗料、塩化ビニール管など石油由来の資材が品薄になり、工期の遅れなどの影響が出た。その後、情勢の収束が見通せない中でも、資材の需給は落ち着き、大手企業を中心に影響は峠を越えたとの見方が広がっている。一方、東京都内の地場企業の声を聞くと、高止まりする価格への懸念や、支援の行き届き方への戸惑いなどがうかがえた。同じ夏を過ごしながらも、それぞれが見ていた異なる景色。都と23区はどのような対策を講じ、地域に根差した企業はこの夏をどう過ごしたのか。
◆悩みは「モノ」から「カネ」へ
資材の供給不足が最も深刻となったのは初夏だ。建設物価調査会が主な建設資材10品目の需給を追った調べでは、「ひっ迫」と判定された品目は4月上旬の1品目から増え続け、6月上旬には7品目に達した。都内のある設備業者は「影響を一番感じたのは6月末から7月上旬。ひどかった」と振り返る。まず接着剤が消え、塩ビ管や保温材も品薄になったという。
その後、品薄は急速に和らいだ。ひっ迫品目は7月上旬に1品目へ減り、9月上旬の調べでゼロになった。改修工事を多く手掛ける業者も「品薄は若干残るが、ほぼ出てきている」と話す。帝国データバンクの8月の景気動向調査では、南関東の「建設」の景気DIが5カ月ぶりに50台に回復した。
資材供給が回復に転じた一方、価格は高い水準のままだ。同調査会が調べた東京の価格を4月上旬と9月上旬で比べると、建築用断熱材は1枚1200円から1680円へと40%上がった。硬質ポリ塩化ビニール管は21%、防水工事用アスファルトは19%の上昇で、塩ビ管とシーリング材は9月の調べでも値上がりが続く。
こうした波は資金繰りにも及んだ。東京信用保証協会の建設業向け保証承諾は、4月に前年同月を下回った後、5月にプラスへ転じ、6月は件数、金額ともに前年同月の約1.5倍に膨らんだ。品薄の山と資金需要の山が、ほぼ同じ時期に重なった形だ。
◆都と区も対策に乗り出す
資金需要の高まりに、都と区はまず融資で応えた。都が5月に「中東情勢対応クイックつなぎ」を新設し、中野区は6月に「中東情勢対応資金」を設けた。同区には建設業を中心に、「原材料の調達遅れや価格上昇に伴う経営上の不安や課題が生じている」などの声が寄せられていたという。
目立ったのは、既存の融資枠を広げる動きだ。足立区では限度額の引き上げ後、旧限度額を超える枠を使う申し込みが大半を占めるようになった。特別貸付の限度額を11月から引き上げる練馬区の吉田健一区長は会見で「私も経営者として区の融資を枠の上限まで受けた経験がある。枠を上限まで使って余裕がない事業者も利用できれば、支援として意義が大きい」と語った。
発注者としての対応も進んだ。都財務局は、値上がりの影響を受けやすい単価契約工事での物価変動への対応などを庁内に通知した。スライド条項の運用を改めた北区の担当者は「地元企業から年間単価契約工事の増額を求める声が寄せられていた。特にアスファルトの高騰で『逆ざや』の状態になっていた」と説明する。台東区は「工期を延ばすなどで対応している。発注を控えることはない」とする。
先の見通せない情勢が続く中、自治体は手探りで支援策を打ち出してきた。これを、都内の地場企業はどう受け止めていたのだろうか。
(次回から4面に掲載します)
