【業容拡大へ知見束ねる/ニーズの変化を成長に/東急設計コンサルタント 澁谷宗彦(しぶや・むねひこ)社長】
人口構成や暮らし方が変われば、建築やまちに求められる役割も変わる。東急設計コンサルタントの澁谷宗彦社長は、建築の企画から年月を経た建物の改修・用途変更の提案まで、業務範囲を設計業務の外にも広げ、さらなる成長を目指す。土木にまで及ぶ社内の幅広い知見を束ね、2027年のオフィス移転を機に、部署の壁を物理的にも取り払う。描くのは、変化に応じた提案を新たな仕事につなげる組織像だ。
建築物は公共・民間を問わず、昨今の人口減や少子高齢化に応じて施設規模や数、用途などを見直す時期を迎えている。こうした施設の将来を考える上では、「ただ建物の傷みを直すだけでなく、変化する暮らしや地域ニーズに合わせて、改築やコンバージョンを選択していくことが大切だ」と指摘する。その一例として歴史的価値を持つ小学校を、建築が持つ価値を保ちつつ、ホテルに転用した京都市の事例を挙げる。
工事費が高騰する中で、既存建物の活用を模索する動きは増加しているものの、「施設運営の現場には、建築の専門家がいないケースは多い」という。コストやニーズの変化を見据えつつ、建築の専門的な知見から適切な時期に改修や用途変更を提案する業務に商機を見いだす。
必要な下地は、既に社内に整っている。東急グループの一員として鉄道沿線のさまざまなプロジェクトに携わってきたことで、まちづくりに対する意識が深く社内に浸透している。「蓄積してきたノウハウを、設計前段階の企画や完成後の更新に関わる部分で今まで以上に生かせれば、われわれの活躍の場はさらに広がる」と力を込める。
最近は、農地を物流施設建設のための用地に転用する際のまちづくりの企画などにも携わっているという。農業・物流・商業といった異なる用途の施設を、どのように組み合わせたら良いかという相談が寄せられるようになった。
たとえ民間プロジェクトであっても「事業者だけを見ていたら事業は絶対に前に進まない」。開発行為によって変わるまちの未来を行政や地元の人たちに示し、ともに考えることが事業の成功の大前提だと言い切る。
最近ではホテルと住居の中間に当たるコンドミニアムなど、用途の境目が曖昧になりつつあり、「今までの縦割り的な分野の置き方だけでは対応しきれない施設が増えている」とし、社内の知識の共有を最も重要視する。
社内では既に、物件の着工や進行状況、さらには、従来は隠しがちだったトラブルにまつわる情報なども共有している。生成AI(人工知能)はコンペや企画段階での情報収集などに活用し、技術情報の活用や専門知識のデータベース化に取り組んでいるという。
情報や知見を共有する一方で、「集めた情報から何を選び、どの方向を目指すかは人間が決めなければならない」とも。事業者や住民と考えをすり合わせていくためにも、設計者自身に「まちを良くするためにどうしたいのかを常に自分に問い掛けてほしい」と呼び掛ける。
25年度は商業・宿泊・生産・住宅と幅広い用途で高い実績を継続し、売上高は過去最高となった。引き続き、高い業績目標を掲げつつ、28年4月に迎える創立55周年の節目に向けて中期経営計画を刷新する。社長主導だった前回と異なり、管理職には将来の会社のあるべき姿を、若手には会社の良い点や悪い点、期待などを尋ね、一丸となって進むべき方向を見定める。
駅ができ、店や住宅、いろいろな施設が並び始める。まちとともに毎日の風景も変わっていく様に心を動かされたことが仕事の原点という。
