「この道は俺たちが守るという誇り、その熱量に引き込まれてカメラのシャッターを押し続けた」
これまで写真家として世界40カ国以上を旅し、さまざまなジャンルを追いかけながら「人々の営みを感じる路地裏、風景に漂う目に見えない人の気配に魅力を感じて撮影してきた」という。
「圧倒的に撮りたいと思った」。それが「人」だった。除草現場の写真は社内外で大きな評判を呼び、その後も毎月福島に通い、撮影を続けた。風雪吹きすさぶ厳寒のトンネル、うだるような炎天下の路上、轟音とともにトラックが猛スピードで走り抜ける高速道路…。「どんな環境の中でも安全に、周囲にも配慮して仕事を進めていく。そのたくましさ、集中力に感動した。ひたむきなその姿勢が本当に格好いいのです」。
撮影では望遠レンズを使わず、「1~2mの距離感」で働く人々を見つめ続けた。ふとした時に浮かぶ笑顔。「その笑顔を切り取る瞬間の幸せ。それが私にとってのご褒美です」と目を細める。 神戸出身で阪神・淡路大震災では陥没した道路や横倒しになった高架橋も目の当たりにした。「それを誰かが直してくれたのだとは思っていたが、それが誰かはまったく想像がつかなかった」と振り返りつつ、今回の撮影を通して「人の目につかないところにも私たちの安全や暮らしを守っている人たちがいる。コツコツと直す、日々メンテナンスに取り組む、その日常の積み重ねこそが大切なのだと教えてもらった」と感謝する。
これまで福島や仙台、東京ビッグサイトなどで写真展が開かれたが、「涙を流して見入る女性もいて正直驚いた。現場に対する理解が得られたらとてもうれしい」と率直に語る。「被写体になってくれた方のお子さんが“お父さん格好いい”と写真の前で飛び跳ねて離れない。その光景が一番うれしかった」とも。
東京の八重洲ブックセンター本店で開催中の写真展では「働く人たちの誇りを伝えたい」と作品としての質にこだわった。いま撮影のフィールドは新潟や栃木にも広がる。かつて活動の拠点としたパリでも「土木の写真展をできないか」と企画を練る。「これからも建設現場を撮影していきたい。写真だからこそ伝わるコミュニケーションツールとして広く発信していければ」と思いを強めている。