【特集】コンストラクション・イーシー・ドットコム創立20周年vol.2 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

公式ブログ

【特集】コンストラクション・イーシー・ドットコム創立20周年vol.2

 コンストラクション・イーシー・ドットコム(CEC.COM)が創立20周年を迎え、主力となる電子契約クラウドサービス『CIWEB』を始め、電子商取引に関連するサービスを充実させている。建設業で進むデジタルトランスフォーメーション(DX)もバックオフィスの生産性向上を加速させ、電子商取引の普及を後押ししている。建設業振興基金の佐々木基理事長に、建設産業界のEDI標準となるCI-NETの現状と今後について語ってもらうとともに、橋本店と三井デザインテックのCIWEBの導入事例を紹介し、建設業の電子商取引を展望する。

建設業振興基金理事長 佐々木 基氏


――CI-NETの概要とメリットを教えてください
 CI-NETは建設業界のEDI(電子データ交換)標準です。見積もり、契約、出来高・請求といった帳票データを電子的に受け渡すルールを定め、元請けのゼネコンと協力会社の双方に利用されています。直接的なメリットとして印紙税のコスト削減がありますが、見積もりのデータを契約、出来高・請求で一貫して利用し、生産性を向上させることが最も重要な目的です。最近は着工前に素早く契約締結することや、電子データを契約原本としてきちんと保管することが重視されるため、企業コンプライアンスの強化にも貢献します。
 複数の元請け企業と取り引きする下請け企業は各社のフォーマットに対応する必要がありますが、CI-NETがさらに普及すれば同じフォーマットで対応できるため業界全体の効率化に貢献します。
 10月末現在で1万3371社がCI-NETを導入済みです。今後3年間で1万5000社を目標にしています。なるべく早く達成したいと思います。

――IT環境と電子商取引を取り巻く状況について

 新型コロナウイルス感染症が拡大し、テレワークなどの新たな働き方が広がる中、諸外国に比べて日本のIT活用が遅れていることが認識されるようになりました。その危機感から、企業はIT化を急速に進めています。
 CI-NETもこの流れの中にあります。建設現場は発注者、元請け、下請け、作業員と多くのプレーヤーが参加し、膨大な情報をやりとりします。ただ大企業から零細企業まで千差万別で、紙ベースの作業が多く残ります。そこを電子化することで大きな効果を得られます。
 さらに政府は押印を廃止し、デジタル庁を設立します。国土交通省も発注や契約の電子化を進めています。若い世代はパソコンを使いこなし、メールなどで情報を取り合う時代です。まさにCI-NETを開始したときに想定していたことが実現する時代になりました。経営者も進取の気風を持ち、将来を見据えて投資を決断できることが重要です。

――今後の展開は

 今後は地域建設業への普及を拡大したいと思います。ある程度の事務処理能力を持つ企業ならASPを利用することでCI-NETに簡単に対応できます。課題は、元下関係が固定化されている場合もあり、従来の商習慣を変える動機を持ちにくいことです。電子商取引が経営の効率化に貢献することを知ってもらいたいと思います。
 バックオフィスの電子化の効果は他産業ですでに実証されています。建設業界はi-ConstructionでUAV(無人航空機)など施工の新技術の導入を進め、地域建設業も取り組みを加速しています。バックオフィスの電子化も建設業に大きな効果があるため、積極的に推進するべきだと思います。
 県の大きな工事を受注するような企業は常に複数の現場を動かしています。現場が増えると下請け企業も増えるため、事務作業に大きな負担がかかります。電子契約はその負担を改善できます。効果を数値化するのは難しいため、行政には現場マネジメントを評価する制度をつくってほしいと思います。表彰や総合評価の加点などで、企業のモチベーションを高めることも重要です。




ユーザー事例・橋本店/年間30時間短縮 コロナ対策で普及拡大

社長 佐々木 宏明氏

 橋本店(仙台市)は、2011年3月の東日本大震災以降、災害復旧工事などで契約業務が増加し、限られた人員での対応という課題を抱えていた。業務を効率化するため、同社が着目したのがCI-NETだった。

 震災以降、契約件数が大幅に増え、1日最大2000件に達した。「郵送の手間や切手代も負担になっていた。13年に電子契約を導入すると時間と経費の削減に大きな効果を得た。下請けも印紙代が節約できるメリットがある」と相原真士取締役技術・管理部長は説明する。

 普及には3つのステップがあった。第1段階の導入時は、別のシステムで見積もりや出来高査定していたため、注文書・請書の電子化から開始した。説明会を開催し、約100社と電子契約を開始。ただ基幹システムとは連携しないため、「電子契約のために入力する手間もあり、社内に浸透しきれなかった」(相原部長)という。

 第2段階は17年7月の基幹システムの再構築だ。基幹システムと連携するコンストラクション・イーシー・ドットコム(CEC・COM)の『CIWEB』に切り替え、注文から出来高請求まで電子化した。再入力の手間がなくなり普及体制が整った。

取締役技術・管理部長 相原 真士氏


 第3段階は新型コロナウイルス感染症対策と重なる。人と接触する機会の防止、デジタルトランスフォーメーション、働き方改革を追い風に、10月の説明会を経て電子契約率が上昇した。佐々木宏明社長は「これまでの説明会ではあまり気乗りしない企業も多かったが、接触防止の効果を説明すると導入する企業が増えた」と実感する。現在は年間30時間の短縮効果があるという。

 一方、地元企業だけと取り引きする下請け会社はCI-NETの名前すら知らないケースが多い。電子契約が浸透する上で「知名度の向上や総合評価方式などのインセンティブの付与が重要になる」と力を込める。

 4月には民法改正に合わせて『基本契約締結サポートサービス』を導入。約300社と一気に契約し、印紙代の総額より安い金額、圧倒的に少ない手間で業務を完了した。「電子化に移行する上でCEC・COMのサポート体制も大きい。今後も生産性向上や働き方改革を進めたい」と意気込む。

新システムの体制表





ユーザー事例・三井デザインテック/基幹システムとのEDI連携実現

スペースデザイン事業本部長業務推進室長 
市川 祐次氏

 三井デザインテック(東京都港区)は、CI-NETに準拠したクラウドサービス『CIWEB』を活用し、協力会社との電子商取引を実施している。基幹システムのEDI連携を実現するとともに、協力会社の加入が進んだことで契約手続きの生産性が大幅に向上した。これにより現コロナ禍への対応としても大きく寄与している。

 建設業法に認められた電子契約に対応するため、コンストラクション・イーシー・ドットコム(CEC・COM)の提供する『CIWEB』を2015年2月に導入し、施工協力会に所属する約80社が導入した。紙ベースの作業は、郵送する契約書や請求書を開封し、確認するだけでも大きな手間がかかるが、電子化することで協力会社とのタイムリーなやりとりが可能となり、事務の負担が大幅に減少した。市川祐次スペースデザイン事業本部長業務推進室長は「使い勝手が良くなり業務が円滑化した」と振り返る。

 下請け代金を50日以内に支払うルールもあり、従来の書類の印刷、押印、郵送、返送などにかかっていた手間と時間を大幅に縮減できるメリットは大きい。受発注の記録も電子データとして残るため、企業コンプライアンスの向上にも貢献する。協力会社も電子化による業務効率化に加え収入印紙代が不要になる。

 さらに、19年に基幹システムをリプレースし、ことし7月には基幹システムとCIWEBがEDI連携したことで、社内基幹システムの操作だけ行えば業務が完結するようになり、大幅な業務効率化を実現した。「コロナ禍の対応としてバックオフィスのペーパレス化を進めており、良いタイミングでEDI連携が実現した。接触防止の観点から協力会社のCIWEBへの加入も増えている」と実感する。

 また、協力会社がCIWEBを導入する際、ヘルプデスクによるサポートが効果的であるという。「システムの疑問点をヘルプデスクに問い合わせれば、CEC・COMのスタッフが丁寧に対応してくれる。協力会社へのサポートはありがたい」と語る。

 クラウド上で帳票データをやりとりするため、リモートワークの親和性も高い。「コロナ禍で広がったリモートワークに電子契約は対応できる」と実感する。今後は紙ベースが中心の発注者との契約手続きについても電子化を検討し、さらなる効率化を探る。

自社システム・CIWEB間の自動連携化により 発注・支払業務のさらなる効率化を実現





CIWEB・EDI連携サービス/自社システムと密連携サービス

 CIWEB・EDI連携サービスは、お客さまの自社システムからWEB・APIを使い、CIWEBを利用するサービスです。従来のWEB画面利用サービスに比べて操作面、運用面が大幅に向上します。WEB・APIの開発工数も大幅に低減できるよう工夫されています。

 操作では、自社システムの画面操作のみで、CIWEBを意識することなく利用できるようになるため、新たな教育は不要です。

 運用面では取引先マスタ、利用者マスタ等の各種マスタは 自社システムのみの管理となるため、CIWEBに対するマスタ管理作業は不要です。

 実際、WEB画面利用サービスからEDI連携サービスへ変更されたお客さまでは、それまで月数件あった問い合わせが、変更以降なくなりました。

 また、自社システムの開発に関しては、本来自社システム側で実装すべき制御をCIWEB側で実装していることから、自社システムの開発工数を大幅に低減可能としています。自社システムをお持ちで、取引件数の多い発注者には最適のサービスです。




CEC-Q請求/すべての請求書を電子化

 CI-NETの普及により建設の現場では請求書の電子化が実現し、業務効率化が図られるようになりました。ただCI-NETは建設工事請負契約を対象としており、それ以外のリース・レンタルや資機材の取引は依然として紙の請求書のままです。「CEC-Q請求」は電子証明書等が必要なく簡単に、低コストでCI-NET以外の取引の紙請求をクラウド上で電子的に行う請求サービスです。建設業に特化した請求フォーマットのため利用しやすいサービスとなっています。

 取引先はクラウド上の「CEC-Q請求」にログインし、請求データを入力し発注者へ請求します。請求情報の発生源で電子データを作成するため紙そのものが存在しません。あらかじめ取引先コードを保有している取引先に限定し、発注者は請求先情報をその取引先に通知しておきます。そうすることで、指定された請求先以外に請求データは送付できないので誤送信の心配がありません。

 発注者はその請求データを自社システムに取込んで承認・否認を行い、自社の支払システムで請求データを処理します。取引先も本サービスで承認・否認の状況を確認でき、請求業務の効率化がさらに進みます。請求データは本サービスで11年安全に保管されます。CI-NETと「CEC-Q請求」を組み合せて利用することですべての請求書の電子化が実現できます。




建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら