【BIM2024⑨】PLUS.1 協創パートナーと価値最大化 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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【BIM2024⑨】PLUS.1 協創パートナーと価値最大化

中立性軸にBIMレベル3導く

 BIMレベル3の到達を使命の一つとして掲げるコンサルティング会社としてPLUS.1株式会社が誕生した。高木英一CEOと大島友延CCOの両代表は「あえてBIMのツールを持たず、より中立的な視点からクライアントやパートナーとともにBIMの価値を最大化することがわれわれの使命」と口をそろえる。日本のBIMは普及のフェイズに入り、国として新たなステージに踏み込もうとしている。絶妙のタイミングでの発足とあって、各企業でBIMを推進するキーマンからの期待も大きい。設立の狙いや活動の方向性を両代表に聞いた。

高木英一CEO(左)、大島友延CCO

  ――設立の目的は

 高木 BIM確認申請が2025年度から始まるように、日本のBIMステージが大きく一歩前に踏み出そうとしている。ツール提供を軸としたオールインワンのコンサルティング活動では中立的な視点でアプローチできない。BIMの価値を最大化するためには、人的資本と知的資本の両面から価値提供を行うべきと発足を決意した。

 大島 われわれはシステム開発中心の活動ではなく、クライアントやパートナーとともに知恵を出し合い、最適解を導くコンサルティング活動に主眼を置く。一企業だけでなく、もっと幅広い視点から、BIMの価値提供を提案していく。同じような悩みを抱える企業各社に対して、共同による課題解決の方策を示し、より効果的にBIMの標準化を支援していきたい。

 高木 差別化する部分ではなく、むしろ標準化する部分に注力し、アイデアを出していきたい。一企業のためだけにコンサルティングするというよりも、企業グループや業界単位の視点からBIMの価値を見い出す。われわれはこれまでにない新しいタイプのBIMコンサルとして成長していきたい。

 大島 前の企業でやったことを、次の企業でも同じようにやることは、中立的なコンサル会社とは言えない。共通する部分は皆で取り組めるように、全体の調整役として活動していく。非競争領域の部分に踏み込んだコンサルティングを指向していきたい。

  ――BIMの価値をどう最大化していくか

 高木 BIMデータをプロジェクト関係者間で共有していくワンモデルプロジェクトの実現がゴールではない。そこに蓄積したデータを維持管理はもちろん、物流や製造、サービス業にも連携することでBIMの価値領域は広がる。そこから新ビジネスにつなぐこともできるほか、都市や地域の環境配慮や防災面など社会課題の解決につなげていくことが可能と考えている。

 大島 各企業で整備されているBIMライブラリーやパラメーター、ファミリなども統合化していくことで、データの維持更新もしやすく、建設段階だけでなく、維持管理のフェイズにもより活用しやすくなる。そうしたBIM基盤整備の仕組みづくりにも挑戦していきたい。

 高木 日本をBIMレベル3に導くことは使命の一つと考えている。国内の先行企業はBIMレベル2に踏み込み、蓄積データをクラウド上で利活用している。レベル2まではプロジェクト関係者内でのデータ共有になるが、レベル3になると建設業界以外の分野との連携が必要になり、BIMデータ自体の価値も変わってくる。その価値基準を枠組みとしてきちんと示し、社会課題への解決にも貢献したい。

 大島 これまでのBIMは図面への出力を重要視してきたが、これからは図面の中にあるデータに価値を見いだす時代となる。クライアントやパートナーがBIMを使って何をしたいか、その目的をきちんと把握し、BIMデータの価値を最大限に発揮できる枠組みを提示していく。

 高木 われわれのコンサルティングは、その会社がBIMをどうとらえ、定義しているかを知ることから始まる。ゴールをしっかりと描くためには、現状分析が欠かせない。押しつけのコンサルはしたくない。事業の成長戦略を示す点でも、ビジネスコンサル的な部分を大事にしていく。

PLUS.1はクライアントやパートナーにとっての「もう一歩」をサポートする

  ――発足から2カ月が経過した

 高木 ありがたいことに40社ほどの企業から相談をいただいている。まだ発足したばかりで、その全てに十分な対応ができる状態にないが、一社一社と着実に向き合い、BIMの価値共有を進めていきたい。われわれは知恵の提供を主体に活動し、場合によっては企業同士をつなぐ役割もしていく。

 大島 ツール開発の会社や、人材を提供する会社を結びつけるハブとしても活動していく。クライアントの戦略をワンランク引き上げる“プラスワン”の会社になれればと考えている。実は、BIMコンサル会社からも相談が来ている。当社の得意な部分は標準化やプロセス改革であり、作ったデータをどういうプロセスで回していくか、データ構造の部分についても最適な提案ができる。

 高木 BIMの価値共有に向け、われわれは競合相手をつくるつもりはない。協創パートナーを増やし、ともに日本のBIMレベルを上げていければと考えている。だからこそ常に公平な目線からコンサルティングすることを主眼に、日本のBIM価値創出に少しでも貢献したい。

◎業界からも期待の声(50音順)



【社会課題を一緒に解決する仲間】

大成洋二朗氏


 BIMレベル3の実現に向けた高木英一代表の熱い思いに共感するとともに、社会課題を一緒に解決する仲間だと思っている。ビルなどの建造物のデータベース化は将来的には都市の激甚化対応として、面的な災害対策シミュレーションの重要なツールになる可能性があり、蓄積データの複合的な活用方法についても異業種同士の視点から知恵を出し合い、出口戦略を導き出したいと考えている。BIM普及の観点では若手育成や人材確保の側面からも、その先導役として期待している。(NTT 研究開発マーケティング本部アライアンス部門)



【互いに刺激を与えられる存在】

高田照史氏


 パネリストとして参加したBIMのセミナーで、モデレータを務めた高木代表と知り合い、意気投合した。私自身、街づくり×デジタルの視点からBIMの有効性を捉えているが、設計から施工、維持管理までの建物ライフサイクルの視点だけでなく、社会課題の解決も意識しながらBIMに取り組むという考え方に共感している。BIM活用に関しては目的を持って取り組むことが前提になる。BIMの価値最大化をテーマに活動することを聞き、互いに刺激を与えられる存在としてぜひとも一緒に仕事をしていきたい。(NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部デジタル共創担当部長企画担当部長)



【全体俯瞰の視点で逆提案を】

野々村嘉洋氏


 両代表を始めとする発起メンバーは、日本のBIM業界でも名が知れた実力者揃い。国内外の幅広いコネクションを持つ点も心強い存在だ。聞いたことに答えるだけの一方通行のコンサルティングではなく、全体を俯瞰しながら幅広い視点で逆提案してくれるプラスワンのコンサルティングで、われわれ企業だけでなく、日本自体のBIMステージを引き上げてもらいたい。BIMレベル3への到達は流通や金融など他分野との連携が欠かせない。BIM普及に向けて制度設計や政策立案の支援も担ってもらいたい。(スターツCAM 建設統轄本部執行役員BIM統括部長)



【新ビジネス創出も重要な役割】

三戸景資氏


 建築BIM推進会議の動きが着実に進展する中で、同じ目標をもって、一緒に日本のBIMレベルを引き上げていこう。BIM確認申請に向け、データ標準化がより重要になってくる。その部分でもぜひ力を貸してほしい。施工系に強いBIMコンサル会社は少ない。その強みを生かし、日本のBIMの裾野を広げる先頭に立ってほしい。まずは国としてBIMレベル2への到達が第一であり、特に中小企業へのBIM普及を重要なミッションの一つとして位置付けてもらいたい。幅広い活動を通してBIMの新たなビジネス創出も担ってほしい。(清水建設 建築総本部生産技術本部BIM推進部長)



【日本ファーストのBIM確立を】

宮内尊彰氏


 会社名を聞き、とても良いと感じた。BIMの導入や普及には、様々な部分で一歩踏み出すプラスワンの要素がある。その企業だけでは成り立たず、プロジェクト関係者も含めたプラスワンの連携が欠かせない。あらゆるBIMのプラスワンを後押しする存在になってほしい。持ち前の技術力、知識力を提供し、BIM標準化の部分でも活躍してもらいたい。国としてのBIMレベル向上にはBIM先進国の欧米に学ぶだけではクリアできない部分もある。日本BIMを確立する上でも、その先頭に立って、日本ファーストのBIMの確立に取り組んでもらいたい。(大和ハウス工業 建設DX推進部次長)



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