時流読解・直轄土木工事脱炭素化へ道筋示す/50年CNに向け国交省が行動計画 | 建設通信新聞Digital

5月8日 木曜日

行政

時流読解・直轄土木工事脱炭素化へ道筋示す/50年CNに向け国交省が行動計画

CO2排出量の削減方針
脱炭素化へのロードマップ
【発注者として三つの先導施策展開/受注者ら民間の取組みけん引

 国土交通省は、4月に定めた直轄土木工事の脱炭素アクションプランで、政府が掲げる2050年カーボンニュートラル(CN)までのロードマップを公表し、国内CO2排出量の1割を占める建設段階の脱炭素化に向けた直轄土木工事の道筋を初めて示した。発注者として三つのリーディング施策を展開し、受注者や機械・資材メーカーなど民間の取り組みをけん引する。CO2排出抑制効果のある機械や資材の使用を27年ごろから原則化するとともに、脱炭素に寄与する技術などを活用した受注者を適切に評価してインセンティブ(優遇措置)を付与する。 インフラ分野に関わる建設段階のCO2排出量は22年時点で、建設機械からの直接的排出が約0.07億t、主要材料のサプライチェーン(生産、輸送)を通した間接的排出が約1.28億tに上る。計約1.35億tは国内排出量の13%を占める一方、建設段階の脱炭素化は民間の取り組みに委ねられ、「グリーン購入法に基づく特定調達品目の指定など個別の取り組みは行っているものの、計画的な取り組みはなされていなかった」(官房技術調査課)。
 こうした建設段階での取り組みを強化するため、経済性に配慮しながら脱炭素化を含む総合的に価値の最も高い資材の採用に努めることを発注者の責務に追加した改正公共工事品質確保促進法の施行や、2月に閣議決定された新たな地球温暖化対策計画などを踏まえ、直轄土木工事の発注者としての行動を示すアクションプランを定めた。国が政策目標とロードマップを明示することで、企業の予見可能性を高め、脱炭素技術などの開発・実装を促進する狙いもある。
 CO2排出量の捉え方には、スコープ1(事業実施に伴う直接排出)、スコープ2(供給されたエネルギーの利用に伴う間接排出)、スコープ3(サプライチェーンで発生する事業実施に関連した間接排出)の三つがある。直轄土木工事のCO2排出過程を「現場でエネルギーを消費して直接的にCO2排出する建機」(スコープ1、2)と、「製造過程などでエネルギーを消費して現場が間接的に排出する材料など」(スコープ3)の二つに分類し、排出過程ごとにCO2排出削減方針を定めた。
 スコープ1、2は、建機の脱炭素化に向けた制度の活用を促しながら、国交省が公共事業の実施者として主体的に直轄土木工事で制度などを活用してCO2排出量を削減する。スコープ3では、CO2排出割合が大きく、かつ費用対効果が高い材料・製品などを調達するとともに、費用対効果の優れた技術の開発を後押しするとした。
 直轄土木工事が民間の取り組みをけん引する姿勢を示し、▽建機▽コンクリート▽その他建設技術--の三つの脱炭素化をリーディング施策として当面展開する。
 建機の脱炭素化は、「燃費向上」「電動化推進」「次世代燃料使用促進」「施工の効率化」の四つを進める。燃費向上として、国交省の燃費基準達成建設機械認定制度に基づき、低燃費認定した型式の油圧ショベル使用を27年ごろに原則化する。原則化適用機種は普及状況を踏まえながら順次広げる。
 電動化推進は、25年度にモデル工事としてGX(グリーントランスフォーメーション)建設機械活用推進工事(仮称)を始める。次世代燃料使用促進では、同じくモデル工事のゼロエミッション促進工事(仮称)を25年度に開始し、バイオ燃料の一種であるHVO(水素化植物油)を含めて軽油に代えられる次世代燃料の使用を促す。
 施工の効率化に向けては、ICT施工の原則化対象工種拡大、ICT施工StageIIの推進、チルトローテータなど新たな施工技術の活用促進を図る。
 二つ目のリーディング施策としたコンクリートの脱炭素化は、「CO2排出削減」と「CO2吸収源増」の二つの取り組みを推進する。CO2排出削減は27年ごろから低炭素型コンクリート、CO2吸収源増では30年ごろからCO2固定・吸収技術を活用したコンクリートについて、それぞれ使用を原則化する。ともに発注者が用途や地域を指定しながら原則化対象を順次広げる方針だ。
 その他建設技術の脱炭素化としては、技術や材料などのCO2排出削減効果を評価し、脱炭素に寄与した受注者に対して「入口(入札)」と「出口(実績)」でインセンティブを付与する措置を講じる。27年ごろから表彰制度や工事成績評定を対象に出口の加点評価を始め、受注者の実績を積み重ねた上で35年ごろから総合評価方式で入口の加点評価を開始する考えだ。研究開発が進むグリーンスチールや低炭素アスファルトなどの使用は27年以降に原則化し、対象を順次拡大する。
 新たな地球温暖化対策計画で建設業を含む産業部門のエネルギー起源CO2排出量の40年目安が13年比57-61%削減になっていることを踏まえ、直轄土木工事で使用する建機からの40年排出量を13年比約6割削減を目安とすることも示した。
 技術開発の進展や費用対効果の向上などを踏まえ、リーディング施策やロードマップを含めてアクションプランの内容は適宜見直す。