設備工事費の上昇傾向続く/日建連が発注者向け説明資料改定/機器価格は依然アップ/施工人員の逼迫度も増す | 建設通信新聞Digital

5月22日 木曜日

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設備工事費の上昇傾向続く/日建連が発注者向け説明資料改定/機器価格は依然アップ/施工人員の逼迫度も増す

東京の工種別労務需給状況
 建築工事分野で近年、調達や施工体制上の最大の懸案とされる設備工事の逼迫(ひっぱく)は、いまだ落ち着きの片りんも見えず、厳しさが増すばかりだ。日本建設業連合会(宮本洋一会長)が、『2025年春版』として改定し、20日に公表した設備工事費上昇の現状を説明する発注者向けパンフレットによると、大規模建築物に使われる特注の主要な設備機器は、依然として価格上昇が続いている。さらに、設備関係の専門工事業は、総じて労務需給の逼迫度合いが増しており、人手不足の深刻化が労務費や必要経費のアップに拍車を掛ける。 国内での活発な工場建設、大都市圏や地方都市での大型再開発、データセンター建設などの同時進行によって、全国で多くの設備工事の需給がタイトになり、資機材・工事価格が高騰し、納期の遅延も発生している。特に、日建連の会員企業が施工する大規模物件には、特注品の設備機器が多用されるほか、特注品以外でも中心価格帯の汎用(はんよう)品とは異なる場合が多いことから、平均的な資機材の価格動向と違って大幅に高騰しているケースがある。
 また、高度な技術力などが要求される大規模物件の設備工事は、大手のサブコンとその協力会社が手掛けるケースが多く、現地で新規の設備工事会社を見つけるのは容易ではなく、大手傘下の技能労働者を遠方から呼び寄せるための宿泊費や交通費などの経費もかさむ。24年度から適用された時間外労働の上限規制への対応も加わり、設備協力会社の人員確保は困難さを増し、労務費の高騰や新規受注の手控えなどを生じさせている。
 最新版のパンフレットによると、20年12月を基準とした場合、大型物件に使う変電設備は95%、エレベーターは89%、盤類は83%、自動制御は82%、空調機類は81%、ポンプ類は77%の上昇率などとなっている。半年前の『24年秋版』との比較では、空調機類が16ポイント、ポンプ類が12ポイント、盤類と自動制御が11ポイントのアップなどとなった。
 これらの数値は、大手建設会社12社が扱う設備機器の価格上昇率を平均したもので、個々の機器の値上がり状況を表すものではないが、価格が高止まりしてきた建設資材とは異なり、主要設備機器は値上がりの傾向が続いている。
 今回のパンフレット改定に当たっては、機器があっても設置する人が足りないといった業界の声を踏まえ、労務需給に関するデータ類も追加した。経済調査会が全国11都市を対象に実施しているマインド調査の「労務需給」と「施工費変動」がそれだ。
 建築・設備工事に関する労務需給の2月調査結果によると、配管や給排水衛生、消火、保温、ダクト、昇降機、電気、通信・情報といった設備系の専門工事は、建築系の専門工事に比べて総じて逼迫度が高い。3カ月後の先行きについても、さらに逼迫するとの見方が大勢を占めている。
 また、施工費変動状況調査によると、3カ月前と比べた現況について、配管工事、ダクト設備工事、保温工事、電気設備工事はいずれも6割強が「上昇」と回答した。3カ月後の先行きについても、いずれも8割弱が上昇するとみており、まだまだ踊り場は見えない。主に、労務費と材料費の上昇が施工費アップの要因となっている。
 日建連の24年度会員受注調査によると、建築工事が中心の民間受注は9.5%増の13兆8977億円を記録し、過去20年間で断トツの水準となった。価格転嫁が一定程度進展した影響もあるものの、物量の豊富さは明らかだ。
 活況な市場環境下で生じている施工上の制約は、業界としても歯がみをする思いだが、技能労働者が減少する中での労働法令順守を含めた施工人員確保という構造的課題は、一朝一夕に解決できない。日建連は、改正建設業法で発注者への提示が定められた「おそれ情報」としての活用を含め、適正な工期や価格の設定に向けた発注者の理解獲得にパンフレットを生かしてもらいたい考えだ。