
カンボジアのアンコールワットを訪れた際、回廊の壁面を覆う彫刻に圧倒された。ガイドによると、物語になっているという。描かれているのは、インド叙事詩「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」にある戦いの場面や天国と地獄などだ◆スペインのサグラダ・ファミリアの外壁にもレリーフが施され、一回りするとキリストの一生を表現していることが分かる◆両者とも芸術というより伝承を目的としているように見える。時代や国も異なるが同様の手法で残されたのは偶然か。頑丈な建造物に刻み込んだのは、災害などにも耐え得ることや当時の識字率などを踏まえ、より多くの人に後世まで語り継ぐことを考えた結果だろうか◆情報の保存や伝達方法が限られた時代、人々は建物に語り部としての役割を託していたのかもしれない。