そこが聞きたい・東亜建設工業執行役員専務土木部門(土木営業本部・土木本部)統括兼土木本部長 木下 正暢氏 | 建設通信新聞Digital

7月2日 水曜日

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そこが聞きたい・東亜建設工業執行役員専務土木部門(土木営業本部・土木本部)統括兼土木本部長 木下 正暢氏

【土木本部の戦略は?/人材・技術を武器に稼ぐ力強化】

 東亜建設工業の土木部門(土木営業本部・土木本部)統括兼土木本部長に木下正暢氏が就任した。「人的資本を活性化して技術力・エンジニアリング力をベースに本業である現場で稼ぐ力をさらに高めていく」と強調し、人材育成や技術力の強化を重視する姿勢を示す。「港湾・空港建設分野のトップランナーとしての地位を堅持しつつ、領域拡大を図っていきたい」と語る木下氏に今後の事業運営の方針を聞いた。 国内土木の市況については「先日閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画では、われわれの得意とする港湾分野で『協働防護』による気候変動への適応策や港湾施設の老朽化対策、津波対策などが示された。また、埼玉県八潮市の事故に端を発した下水道施設の点検・更新といった喫緊の対応のほか、AI(人工知能)などのデジタル技術を活用したインフラ管理の高度化も盛り込まれている。さらに、防衛力強化を主眼とした重要インフラ整備への集中的な対策も続いている」とし、政府建設投資の増加に期待感を示す。
 民間分野についても「新エネルギーや脱炭素といった環境側面から既存施設のリニューアル、解体・撤去、更新などの大型案件が増加している。洋上風力関係もウインドファーム建設に加え、基地港湾の整備などが加速的に出てくる」と分析し、「短期・中期的には官民ともに十分な投資規模が見込める」と展望する。
 良好な市場環境を踏まえて、「本業で稼ぐ力を高めることが重要となる。得意分野である港湾工事で武器を持たなければならない」と断言し、技術力の強化と生産性向上を両輪で進める。「プレキャスト化の促進による工期短縮や当社の主力となる作業船の自動化・自律化に取り組んでいる。4月からはDX(デジタルトランスフォーメーション)技術の運用・活用で現場支援の拡充を図るため、土木本部内にDX技術支援室を新設した」と説明する。さまざまな取り組みは土木本部内で完結するのではなく、洋上風力推進部や建築部門、国際事業本部との連携も図りながら、積極的に施策を前進させる。
 働き方改革の観点からは「意識改革が必要だ」と指摘する。「全員での朝礼など既成概念を取り除き、現場でも可能なら在宅勤務を導入する」といった柔軟な考えを示し、文字どおりの“改革”に挑戦する。
 現場職員の50%近くを占める30歳以下の若手人材の育成にも力を注ぐ。「上昇志向を持って、切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長してほしい。資格取得の報奨金といった支援制度や母校へのリクルート活動、インターンシップの受け入れにインセンティブ(優遇措置)を持たせるなど、モチベーションを向上する環境は整えている。早い時期から自ら考え、取り組む姿勢を身に付けてほしい」と自発的成長を後押しする。
 東亜建設工業の創業者である浅野総一郎の『人間の目的は死んだ後まで社会を益することを志すにある』という名言を引用し、「土木は利他業であるということを若い人に伝えたい。そして土木を好きになってほしい」と温かいまなざしで語る。

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 (きのした まさのぶ)1987年3月京大工学部交通土木工学科卒後、同年4月東亜建設工業入社。2021年4月執行役員千葉支店長、23年4月執行役員常務土木本部工事統括を経て、25年4月から現職。座右の銘は「得意淡然 失意泰然」、「夢なき者は理想なし」。趣味はゴルフで、先日ホールインワンを達成した。兵庫県生まれの熱心なタイガースファン。63年8月20日生まれ、61歳。