【ビジョンの重点施策は?/シニア人財の処遇改善】
千代田エクスワンエンジニアリング(横浜市)の中長期経営計画「CXOビジョン2030」が好調な滑り出しを切った。計画初年度の2025年3月期業績が想定以上に伸びる見通しだ。ビジョン統括担当の馬場朗取締役兼専務執行役員は「増益分を、シニアをはじめとする社員に還元しつつ成長分野に投じることで収益力を高めていく」と話す。ビジョン達成に向けた重点施策を聞いた。 同社は千代田化工建設グループ3社が統合し、23年4月1日に発足した。統合効果を最大限に引き出し、創出した利益を賃金や新事業に充て、社員と会社のさらなる成長につなげる好循環を生み出すことを狙いにビジョンを策定した。計画最終の31年3月期に、営業利益が24年3月期の約3倍増となる100億円を目指す。
目標達成に向け、石油関連のEPC(設計・調達・建設を含むプラントエンジニアリング)やメンテナンスエンジニアリングといった既存サービスを維持しつつカーボンニュートラル、ファインケミカル、非鉄金属、蓄電池、バイオインダストリーなどの成長分野でサービスを遂行できる準備を進め、事業ポートフォリオや収益構造の転換を図る。これら新規分野の国内における元請け比率は現在7割台だが、「分野を広げつつ利益を確保するため8割以上に増やしていく」方針を示した。
25年3月期の完成工事高総利益率は、前期に比べ3.6ポイント増の13.6%を見込む。「想定を大きく上回る結果で、この水準が30年度まで続き順調に受注を増やしていけば、営業利益目標は十分達成できる」と手応えを口にする。好業績の要因として、全社員を対象に実施した約10%の定期昇給込みベースアップと、60歳の定年を迎えたシニア社員の年収が大幅増となる新人事制度導入を社内で発表したことを挙げた。「社員の士気が上がり、会社との信頼関係が構築されたことが大きい」と振り返る。賃上げは離職率改善の効果もあったため、25年度も実施を予定している。
「こうした処遇改善策が、ビジョンを進める上での鍵を握る」と強調する。今後、全社の43%を占める50歳以上の社員が順次定年退職を迎えれば、「目標達成はおろか30年度までの事業存続すら危ぶまれる」と考えている。また、プラントエンジニアリングの設計、調達、工事などで建設現場への常駐が大半を占めることから「結婚や育児を控えた30代が次々と退職してしまう」懸念がある。中堅社員をつなぎ止めるには、現場を任せられる子育てを終えたシニア社員が定年後も勤続を希望する処遇に見直す必要がある。
さらに、少子化に伴う労働力人口の減少に鑑み、採用ターゲットの重点を従来の新卒者から、定年や役職定年を機に同業他社を退職した40代後半や50、60代の経験者に置き換えた。採用サイトにはシニア採用として、50-60代だけでなく70歳のモデル年収も掲載している。「シニア人財が集まれば、人手不足により他社が断念した地方のメンテナンス事業の引き継ぎも可能になる」と期待を込める。
* *
(ばば・あきら)1987年3月早大理工学部機械工学科卒業後、同年4月千代田化工建設入社。2006年8月QPGカタール国GTLプロジェクトエンジニアリングマネージャー、12年10月IGL豪州LNGプロジェクトプロジェクトマネージャー、20年7月国内医薬品プロジェクトプレジデントディレクターを経て、23年4月から現職。神奈川県出身、61歳。
千代田エクスワンエンジニアリング(横浜市)の中長期経営計画「CXOビジョン2030」が好調な滑り出しを切った。計画初年度の2025年3月期業績が想定以上に伸びる見通しだ。ビジョン統括担当の馬場朗取締役兼専務執行役員は「増益分を、シニアをはじめとする社員に還元しつつ成長分野に投じることで収益力を高めていく」と話す。ビジョン達成に向けた重点施策を聞いた。 同社は千代田化工建設グループ3社が統合し、23年4月1日に発足した。統合効果を最大限に引き出し、創出した利益を賃金や新事業に充て、社員と会社のさらなる成長につなげる好循環を生み出すことを狙いにビジョンを策定した。計画最終の31年3月期に、営業利益が24年3月期の約3倍増となる100億円を目指す。
目標達成に向け、石油関連のEPC(設計・調達・建設を含むプラントエンジニアリング)やメンテナンスエンジニアリングといった既存サービスを維持しつつカーボンニュートラル、ファインケミカル、非鉄金属、蓄電池、バイオインダストリーなどの成長分野でサービスを遂行できる準備を進め、事業ポートフォリオや収益構造の転換を図る。これら新規分野の国内における元請け比率は現在7割台だが、「分野を広げつつ利益を確保するため8割以上に増やしていく」方針を示した。
25年3月期の完成工事高総利益率は、前期に比べ3.6ポイント増の13.6%を見込む。「想定を大きく上回る結果で、この水準が30年度まで続き順調に受注を増やしていけば、営業利益目標は十分達成できる」と手応えを口にする。好業績の要因として、全社員を対象に実施した約10%の定期昇給込みベースアップと、60歳の定年を迎えたシニア社員の年収が大幅増となる新人事制度導入を社内で発表したことを挙げた。「社員の士気が上がり、会社との信頼関係が構築されたことが大きい」と振り返る。賃上げは離職率改善の効果もあったため、25年度も実施を予定している。
「こうした処遇改善策が、ビジョンを進める上での鍵を握る」と強調する。今後、全社の43%を占める50歳以上の社員が順次定年退職を迎えれば、「目標達成はおろか30年度までの事業存続すら危ぶまれる」と考えている。また、プラントエンジニアリングの設計、調達、工事などで建設現場への常駐が大半を占めることから「結婚や育児を控えた30代が次々と退職してしまう」懸念がある。中堅社員をつなぎ止めるには、現場を任せられる子育てを終えたシニア社員が定年後も勤続を希望する処遇に見直す必要がある。
さらに、少子化に伴う労働力人口の減少に鑑み、採用ターゲットの重点を従来の新卒者から、定年や役職定年を機に同業他社を退職した40代後半や50、60代の経験者に置き換えた。採用サイトにはシニア採用として、50-60代だけでなく70歳のモデル年収も掲載している。「シニア人財が集まれば、人手不足により他社が断念した地方のメンテナンス事業の引き継ぎも可能になる」と期待を込める。
* *
(ばば・あきら)1987年3月早大理工学部機械工学科卒業後、同年4月千代田化工建設入社。2006年8月QPGカタール国GTLプロジェクトエンジニアリングマネージャー、12年10月IGL豪州LNGプロジェクトプロジェクトマネージャー、20年7月国内医薬品プロジェクトプレジデントディレクターを経て、23年4月から現職。神奈川県出身、61歳。