そこが聞きたい・安井建築設計事務所取締役兼副社長執行役員 寺岡 宏治氏 | 建設通信新聞Digital

5月30日 金曜日

企業

そこが聞きたい・安井建築設計事務所取締役兼副社長執行役員 寺岡 宏治氏

【人やまちを元気にする取り組みは?/全社連携で一体感醸成】
 4月1日付で、安井建築設計事務所の副社長に寺岡宏治氏が就任した。大阪事務所長を2015年から10年務めるなどこれまでも同社経営の中軸を担ってきたが、今後は副社長として全方位の活躍が求められることになる。事務所創業の精神である「誇りと情熱」を基盤にしながら、「人やまちを元気にする活動を活発化させたい」と意気込む寺岡副社長に、自身が担うミッションや今後の取り組みなどを聞いた。 「『人やまちを元気にする』という事務所のモットーを実現するために一人ひとりがいかに行動し、貢献すべきかを自問自答しながら行動することが求められている。若手社員だけでなくベテランも含め、積極的に後押ししていきたい」と抱負を語る。
 果たすべきミッションとして、「業務基盤整備」「業務最適化」「カスタマーリレーション」の三つを挙げた。「当たり前のことを確実に遂行し、社員同士が高め合う土壌をつくる。顧客や社会から求められるものを提供し、信頼関係の構築と維持に尽力しなければならない」と前を見据える。
 事務所の25年度基本方針は、「個人も組織も学びあい、成長しよう」。佐野吉彦社長は幹部役員に対し、「『背中で教える』=率先垂範」の重要性を訴えたという。「上司と部下という上下の関係ではなく、同じ使命を共有するパートナーとして、組織としての一体感を高めていきたい。そのためなら私が設計者として積み重ねてきた知識や経験は、若手にとどまらずベテランも含め、惜しみなく提供する。そうした積み重ねが結果として社員が家族、友人、知人にも自慢できる安井建築設計事務所のブランド力向上につながれば」と考えている。
 一体感を高めていくために大阪・東京といった地域や部署の枠を超えた「全社連携」が重要だと説く。戦略的な人材採用もあって現在事務所の陣容は約460人と、10年前と比べ1.5倍まで拡大した。「効率的な業務の在り方を考えていく必要がある。一方で所員間でのコミュニケーションも重要。顔の見える関係を構築していきたい」と話す。
 同社が得意としている領域の一つに、駅舎や空港といった「ターミナル」がある。「駅や空港はヒトやモノが集まる結節点。今風に言うなら、例えば物流施設や道の駅、あるいは公共の複合施設なども、広い意味で出会いの場所だと言えよう。ヒトやモノが行き交い、交じり合う結節点をつくり続けてきたことがわれわれの強みであり、それこそが100年続く組織設計事務所としてのDNAだ。そうした強みをしっかりと発信していく」
 副社長のポジションは「役職」でなく「役割」と認識。名将・山本五十六の格言を引用しながら「褒めてやらねば人は動かじ、任せてやらねば人は育たず、信頼せねば人は実らず。相手に敬意を払い、行動を促し、感謝することを心掛けたい」と語る。プレッシャーを感じつつも、「自分らしくありたい」と自然体を強調する。「立場が変わっても人間すぐには変われない。一つひとつ、コツコツとやっていくしかない」とも。
 趣味の一つは、大阪事務所長になってから始めたゴルフ。「やってみたら、なかなか奥が深い」と話す。最近は「夫婦の共通項」として裏千家茶道もたしなむ。
*    *
 (てらおか・こうじ)1985年神戸大工学部卒。安井建築設計事務所に入社後は大阪事務所設計部長、大阪事務所長、専務執行役員などを経て、2025年4月から現職。大阪府出身、63歳。