新会長・国際観光施設協会 浅野一行氏 | 建設通信新聞Digital

7月18日 金曜日

団体

新会長・国際観光施設協会 浅野一行氏

【唯一無二の活動で貢献】
 「われわれにしかできない唯一無二の活動で、観光業界と社会に貢献する」。国際観光施設協会の新会長に就任した浅野一行氏(スターツ総合研究所理事)はこう強調し、協会会員の力を借りながら、観光施設計画・建設の知見やノウハウを結集することで、観光業の慢性的な人手不足といった課題解決に尽力する考えを示す。「今求められていることを的確に捉え、さらには未来を見据えた取り組みを進める」と決意を新たにする浅野会長に、協会運営の方向性を聞いた。  --就任の抱負を
 「当協会は発足から70年以上の間、時代の要請に的確に応えながら発展してきた。これからも、時代が何を求めているのか、解決すべき課題は何かを見極めながら、発展を続ける観光業界と歩調を合わせてさらなる高みを目指していく」
 「協会会員の皆さんは素晴らしい技術や知見を持つ。『より良い社会にしたい』という強い思いで日々活動する皆さんの意思を形にできるように、その道筋を立てるのが私の役目だ。協会活動は会員の皆さんの使命感に負うところが大きいのが実情のため、会員であることのメリットを最大限享受できる組織づくりを目指す」
  --観光業を取り巻く環境は
 「2025年のインバウンド(訪日外国人客)数が4000万人を超える見通しであることからも分かるように、観光業は力強い成長軌道に乗っている。その半面、オーバーツーリズムやインバウンド需要の地域間格差、慢性的な人手不足といった課題もある。これらの課題に向き合うことが業界のさらなる成長につながる」
  --取り組みの方向性を
 「観光業の人手不足が深刻化する中、観光DX(デジタルトランスフォーメーション)がその課題解決の一助となる。中でもロボットの導入は生産性向上に寄与する。ただ、これまでの旅館やホテルの施設計画のままでは、ロボット活用に限界がある。だからこそ当協会では、ロボットが動作しやすい施設環境を構築すべく、ホテルや旅館に特化したロボットフレンドリー施設の研究を6月に始めた」
 「働き手の確保に向け、バックオフィス環境の改善も重要になっていくはずだ。働きやすいオフィスづくりが進んでいるのと同じように、ホテルや旅館従業員が生き生きと働けるバックオフィス環境の在り方を考えていきたい」
 「南海トラフ地震や首都直下地震をはじめとする大規模地震への備えも忘れてはならない。当協会では先駆的に、フェーズフリーの概念を研究している。平常時と非常時の区別をなくすという考え方で、非常時に役立つことはもちろん、平常時にも価値を高める商品・サービスをつくるべく、フェーズフリー協会と連携しながら取り組んでいる」
--他団体との連携について
 「最近は自治体や関係省庁、観光関係団体と連携して取り組む事業が増えてきている。連携することでより実効性の高い事業となることを実感している。引き続き取り組んでいきたい」
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 (あさの・かずゆき)1987年3月横浜国大大学院工学研究科計画建築学専攻建築コース修了後、同年4月日本設計事務所(現日本設計)入社。2013年10月スターツ総合研究所入社、執行役員を経て、21年4月から現職。13年6月国際観光施設協会理事、15年6月常務理事、21年6月副会長を経て、25年6月から会長。趣味はゴルフ、山登り、ランニング。東京都出身、64歳。
 ホテルエミオン東京ベイ(千葉県浦安市)や東京ステーションホテル(東京都千代田区)など多数のホテル設計を手掛けてきた。“ホテル愛”は人一倍強く、宿泊したホテルの間取りをスケッチし、着彩。その数は100を超える。誠実であることを常に意識するのは、それが作品の根源になると信じるためだ。その言葉どおり、実直で謙虚な人柄が、人々を引きつける。協会では、能登半島被災地復興支援委員会の委員長も務めている。