新会長・日本トンネル専門工事業協会 横山英樹氏 | 建設通信新聞Digital

7月4日 金曜日

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新会長・日本トンネル専門工事業協会 横山英樹氏

【独自の安全文化を創造】
 日本トンネル専門工事業協会の会長に就任した横山英樹氏(横山工業取締役会長)は、「トンネル工事独自の安全文化を高めたい」と力を込める。どれだけ新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現しても安全の確保なくしてトンネル工事業界の持続的発展はあり得ないからだ。担い手確保や女性技能者の坑内労働規制といった課題がある中、横山新会長に協会の運営方針などを聞いた。  --就任の抱負を
 「トンネル工事は、ひとたび事故が起きると重篤災害につながりやすいだけに、安全文化をつくることが大切だ。現場がきれいになって、技能者の処遇改善も進んでいると言っても、死亡事故が起きやすい業界に人は入ってこない。それぞれの現場で発生しているヒヤリハットの事例を集め、その防止策を水平展開していきたい」
  --協会運営の方針は
 「変化の激しい時代にあって、われわれトンネル工事業界もタッグを組まなければ生き残っていけない。98社の会員企業が安全や技術などに関して情報交換することで、よりメリットを感じられる組織にしていきたい」
 「野崎(正和)前会長が、土木学会や国土交通、厚生労働両省など、さまざまな団体・機関との意見交換の場をつくってくれた。こうした場を継続し、異業種の皆さんと意見を交えて得たものを取り込んでいきたい」
--トンネル工事の市場環境は
 「全体的な工事量は漸減傾向にあり、特に新設の鉄道トンネルは限定的だ。一方、道路トンネルに関しては災害対策として海抜が低いトンネルの山側移設や、古くて内空断面積が小さいトンネルの拡幅などの需要が見込める」
--担い手確保については
 「各社でトンネル現場を案内したり、宿舎の個室化などを進めたりしている。最新の重機はスティックを使い、ゲーム感覚で操作できるものもある。現場見学会では、小中学生にこうした重機を体験してもらっている。トンネル工事の魅力を伝えるには、現場をもっとオープンにすべきだ」
 「女性技能者の坑内労働規制の問題もある。男女平等が叫ばれて久しく、一般的な土木工事や建築工事では女性技能者がごく普通に働いている。しかし、トンネル工事では、いまだに女性技能者の坑内労働が認められていない。現場は着実に機械化が進んでおり、きれいで明るくなっている。女性技能者が坑内で仕事ができるよう、厚労省に継続的に働き掛けていきたい」
--生産性向上の取り組みは
 「ゼネコン各社が開発した新技術をわれわれが早く身に付け、それを共有できれば良いが、地域によって地質が異なり、全ての現場に採用できるわけではない。とは言え、安全確保につながる技術も多いため、今後は自動化や遠隔化などの技術導入に本格的に取り組んでいく」
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 (よこやま・ひでき)1973年3月中部工業大学付属高校(現中部大学春日丘高校)卒後、77年2月横山工業入社。86年9月社長、2025年5月から現職。同協会では常務理事、副会長兼技術・情報委員長などを歴任。5月26日の定時社員総会で、19年間にわたって会長職を務めた野崎前会長からバトンを受け継いだ。趣味は神社仏閣、城跡巡り。兵庫県出身。54年4月2日生まれ、71歳。
◆記者の目
 記者の質問に温和な表情で丁寧に答える。幼少の頃、トンネル工事の現場宿舎で育ち、「気性の荒い職人をたくさん見てきた」ため「自分には、この仕事は向いていないと思った」という。高校卒業後しばらく、異業種でアルバイト生活を送った。父に諭され、23歳で横山工業に入社し、現場に従事。トンネルの実貫通を初めて目の当たりにし、「皆と手を取り合って喜んだ」と懐かしむ。きっと、それまでの迷いが吹き飛んだのだろう。以来、約半世紀にわたってトンネル工事に携わってきた経験・知識を協会運営に生かす構えだ。