新会長・日本橋梁建設協会 川田忠裕氏 | 建設通信新聞Digital

6月18日 水曜日

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新会長・日本橋梁建設協会 川田忠裕氏

【鋼橋発注量の拡大へ】
 日本橋梁建設協会の新会長に川田忠裕氏(川田工業社長)が就任した。川田会長は「協会が直面している最も大きな課題は、鋼橋需要の拡大だ」とし、重量ベースで年々減少傾向にある鋼橋発注量に危機感を募らせる。会員企業が保有する工場設備の多くは、施設維持に最低限必要な生産量を下回っている状況にある。国土の保全を担う橋梁業界の存続をかけたかじ取りを聞いた。--就任の抱負は
 「技術を維持していくためには、若い人たちに業界に入ってもらわないといけない。『俺たちがこれをつくったんだ』と胸を張れるような仕事に携わらせてあげたい。2年間という短い期間だが、日本の若いエンジニアが活躍できる場をつくる。日本の橋職人、技術者は世界一だと思う。今は会員会社の一部しか海外での事業展開を行えていないので、もっと外に飛び出していけるようにしたい」
--新設した特別委員会は
 「鋼橋事業の需要拡大を最重要課題と位置付けた。これに伴い、『需要拡大戦略特別委員会』を設置した。鋼橋の魅力や必要性、優位性、メリットを明らかにする組織となる。広く関係機関などに訴え、鋼橋事業の積極的な活用を推進していく」
--具体的な取り組みは
 「従来は『橋の数が足りないので発注してほしい』と要望することが多かった。今後は『何県のどこで、このような意見がある。橋をかければ経済的にも安全保障の観点からもよくなる』といった、積極的な事業提案を目指す。10年、20年といったスパンになるだろう。将来の結果につながるようなスタートを切りたい」
--自社が得意とするロボット研究の知見は
 「川田工業の人型ロボットがすぐさま、本格的に橋梁で活躍することはない。ただ、ロボット研究者と現場スタッフが一緒にDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める取り組みは社内で進めており、省力化のアイデアが出ている。こうしたものは個社で独占するのではなく、(会員の)皆で活用していきたい」
--ニーズが保全に移行する中での課題は
 「保全の現場は総合的な技術を持っていないと、なかなかできない。アーチ橋やトラス橋といった工事は、新設を経験した人でないと直せない。新設のほとんどをコストが安い鈑桁橋が占める中、若い人が経験を積む機会が減っている」
--安全対策について
 「約2年前に重大な事故があったが、あれは夜間作業中に発生した。お客さま目線では『昼間の交通に迷惑をかけられないので夜のうちに』となるのだが、協会では今、勇気を持って『昼間に交通を止めて、夜間工事はできるだけやらないようにほしい』といった活動をしており、理解も進んできている」
 「加えて今、現場には、外国人材も入ってきている。海外の人たちも含めた安全対策が求められる。例えば、立ち入り禁止区画に入った際に警報で知らせるようなものだ。AI(人工知能)、ICT、ビッグデータといった最新技術による対策も進めていかなければならない」
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 (かわだ・ただひろ)1989年12月米サン・ディエゴ州立大大学院航空宇宙工学専攻修了。85年川田工業入社、97年取締役航空事業部長、2002年取締役管理本部副本部長兼航空・機械事業部長、03年常務兼常務執行役員管理本部副本部長航空・機械事業部長を経て、05年6月から社長。川田テクノロジーズ、カワダロボティクスの社長も兼務する。
◆記者の目
 橋梁業界は建設分野で大型装置を抱える装置産業の代表格だ。発注量が減少する中、ともすればパイを奪い合い、殺伐となりかねないはずだが、同協会の会見はいつも和やか。就任会見では、川田会長を中心に、副会長を務める横河ブリッジの中村譲社長、IHIの小林淳代表取締役副社長、石原康弘専務理事も同席した。記者団の質問に川田会長が時折、3人にも発言を促すシーンがあった。橋建協に根付く風通しの良さを感じた。