【価値を発揮する主体に】
5月29日の定時総会で建設コンサルタンツ協会の会長に就任した大本修氏(パシフィックコンサルタンツ社長)は「建設コンサルタントは、社会の変化に合わせて柔軟に進化する必要がある」と語り、発注者を支援する従来の立場から、社会に価値を提供する主体への転換を訴える。同日公表した建設コンサルタントビジョンでは、協会が業界の異業種連携を後押しすることも掲げた。大本新会長に今後の展開や組織体制を聞いた。--就任の抱負は
「建設コンサルタント業界は、世の中が大きく変わる中で依然、発注者を陰で支える立場にとどまり、知名度や認知度も低い。発注者から任された仕事をこなすだけの構図から脱し、業界の可能性を広げていくべきだ。より広く社会に価値を提供できるような変化のきっかけをつくりたい」
--注力することは
「最大の課題は地位向上だ。いまだに、建設コンサルタントが提供する技術に対する評価は十分とはいえない。報酬はもちろんだが、設計ミスに対する責任範囲の明確化や発注者に納めた成果物の知的財産の取り扱いなど、整理すべき課題は多い。課題を分野横断的に議論する『地位向上検討委員会』を立ち上げた。論点や考え方を整理し、2年間で協会として一定の方向性を示したい」
--組織体制は
「副会長を従来の2人から3人に増やした。増員した副会長には、地位向上や認知度向上といったテーマを担ってもらい、協会内の各部会活動に横ぐしを刺す形で課題解決に動いてもらう」
「現在、協会内の委員に占める女性の比率は6%ほどだ。優秀で意欲のある技術者に男女の違いはないが、なかなか女性技術者が活動に参加できていない。社外での活動や交流は、成長のチャンスでもある。女性の参加を今まで以上に促進し、意欲があれば誰でも委員長や部会長を目指せるような環境を整えたい」
--オープンイノベーションの展開は
「社会の将来予測が不透明な中、山積する課題も複雑に絡み合い、単独の業界だけでは社会課題に対応しきれない。例えば、自動運転の社会実装支援や衛星データを使った防災情報配信など、他分野の技術と連携して、これまでにない解決策やアイデアを生み出すことが求められている」
「業界の知見と技術を結集したマッチングプラットフォームの整備を進めたい。具体的な在り方はこれから検討していくことになるが、特に、地方や中小規模の会員が参加しやすい仕組みづくりを意識し、業界全体の事業領域を広げる後押しをしたい」
--国土強靱化について
「閣議決定された国土強靱化実施中期計画には、南海トラフ地震など大規模災害への対策も含まれている。われわれの役割を果たすためにも、担い手の確保や業務量の確保などを軸に、地域の建設コンサルタントの持続可能な体制整備などを継続的に訴えていく」
「これからの防災・減災に向けては、ハード対策のみならずソフト対策を充実させて、総費用を低減していくことも大切で、住民との関わりが求められる。それはまちづくりの分野でも重要な要素だ。将来像を描き、提案できる業界に変わっていきたい」
* *
(おおもと・おさむ)1986年3月京大大学院工学研究科修了。鴻池組での勤務を経て、96年10月パシフィックコンサルタンツ入社。2018年12月代表取締役専務などを経て、22年10月から社長。建コン協では、23年5月副会長を経て、25年5月から現職。愛媛県出身。61年2月2日生まれ、64歳。
◆記者の目
「発注者に言われたことをこなすだけでは、もう通用しない」という言葉は、業界の現状を変えたいという思いの表れだ。「提案し、社会に働き掛けられる存在に」と変化を語る背景には、建設コンサルタントが持つ知見や課題解決力への信頼がある。コンサルをもっと社会に知ってほしいという思いがひしひしと伝わってきた。
5月29日の定時総会で建設コンサルタンツ協会の会長に就任した大本修氏(パシフィックコンサルタンツ社長)は「建設コンサルタントは、社会の変化に合わせて柔軟に進化する必要がある」と語り、発注者を支援する従来の立場から、社会に価値を提供する主体への転換を訴える。同日公表した建設コンサルタントビジョンでは、協会が業界の異業種連携を後押しすることも掲げた。大本新会長に今後の展開や組織体制を聞いた。--就任の抱負は
「建設コンサルタント業界は、世の中が大きく変わる中で依然、発注者を陰で支える立場にとどまり、知名度や認知度も低い。発注者から任された仕事をこなすだけの構図から脱し、業界の可能性を広げていくべきだ。より広く社会に価値を提供できるような変化のきっかけをつくりたい」
--注力することは
「最大の課題は地位向上だ。いまだに、建設コンサルタントが提供する技術に対する評価は十分とはいえない。報酬はもちろんだが、設計ミスに対する責任範囲の明確化や発注者に納めた成果物の知的財産の取り扱いなど、整理すべき課題は多い。課題を分野横断的に議論する『地位向上検討委員会』を立ち上げた。論点や考え方を整理し、2年間で協会として一定の方向性を示したい」
--組織体制は
「副会長を従来の2人から3人に増やした。増員した副会長には、地位向上や認知度向上といったテーマを担ってもらい、協会内の各部会活動に横ぐしを刺す形で課題解決に動いてもらう」
「現在、協会内の委員に占める女性の比率は6%ほどだ。優秀で意欲のある技術者に男女の違いはないが、なかなか女性技術者が活動に参加できていない。社外での活動や交流は、成長のチャンスでもある。女性の参加を今まで以上に促進し、意欲があれば誰でも委員長や部会長を目指せるような環境を整えたい」
--オープンイノベーションの展開は
「社会の将来予測が不透明な中、山積する課題も複雑に絡み合い、単独の業界だけでは社会課題に対応しきれない。例えば、自動運転の社会実装支援や衛星データを使った防災情報配信など、他分野の技術と連携して、これまでにない解決策やアイデアを生み出すことが求められている」
「業界の知見と技術を結集したマッチングプラットフォームの整備を進めたい。具体的な在り方はこれから検討していくことになるが、特に、地方や中小規模の会員が参加しやすい仕組みづくりを意識し、業界全体の事業領域を広げる後押しをしたい」
--国土強靱化について
「閣議決定された国土強靱化実施中期計画には、南海トラフ地震など大規模災害への対策も含まれている。われわれの役割を果たすためにも、担い手の確保や業務量の確保などを軸に、地域の建設コンサルタントの持続可能な体制整備などを継続的に訴えていく」
「これからの防災・減災に向けては、ハード対策のみならずソフト対策を充実させて、総費用を低減していくことも大切で、住民との関わりが求められる。それはまちづくりの分野でも重要な要素だ。将来像を描き、提案できる業界に変わっていきたい」
* *
(おおもと・おさむ)1986年3月京大大学院工学研究科修了。鴻池組での勤務を経て、96年10月パシフィックコンサルタンツ入社。2018年12月代表取締役専務などを経て、22年10月から社長。建コン協では、23年5月副会長を経て、25年5月から現職。愛媛県出身。61年2月2日生まれ、64歳。
◆記者の目
「発注者に言われたことをこなすだけでは、もう通用しない」という言葉は、業界の現状を変えたいという思いの表れだ。「提案し、社会に働き掛けられる存在に」と変化を語る背景には、建設コンサルタントが持つ知見や課題解決力への信頼がある。コンサルをもっと社会に知ってほしいという思いがひしひしと伝わってきた。