クローズアップ・「小さな道」の大きな改革/JAPIC | 建設通信新聞Digital

7月26日 土曜日

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クローズアップ・「小さな道」の大きな改革/JAPIC

エリア別の「まちなかの小さな道」の使い方のイメージ
中心市街地や観光地における「まちなかの小さな道」および関連施策の面的な展開イメージ
コミュニティーが道路活用のマネジメントに参加(京都市三条通り)
交通(トラフィック)のプライオリティーとヒエラルキーの分類案
【道路構造令に「第5種」新設提言/26年の法定速度30km化が好機】
 日本の道路総延長は約122万㎞。このうち車道幅5.5m未満の道路は約87万㎞あり、さらにそのうちの約60万㎞は市街地に存在している。日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は、この膨大な「小さな道」に着目し、安全でにぎわいのある人中心の街中空間に変えるための提言をまとめた。現在4種に区分されている道路構造令への「第5種道路(歩車融合道路)」の新設などを提案している。 JAPIC国土創生プロジェクト委員会の「小さな道の大きな改革」提言作成ワーキンググループ(委員長・石田東生筑波大名誉教授)が作成した。
 石田委員長は「小さな道は量が多いものの、安全な交通環境整備がほったらかしになっている」と指摘する。小さな道は、事故の減少件数が小さく、歩行者・自転車事故の割合が高い。幅5.5m以上の幹線道路は、2007年に約60万件だった交通事故件数が23年に約22万件まで減ったが、小さな道は07年が約21万件、23年が約7万件となっている。歩行者・自転車事故の割合は、幹線道路が31%なのに対し、小さな道は50%を占める。事故は都市部で多く、さらに死亡事故の半数以上は小学校の1㎞圏内で発生しているというデータもある。
 昨年の道路交通法施行令の改正では、26年9月から、小さな道の法定速度が時速60㎞から30㎞に引き下げられることになった。JAPICは、国のこの英断をチャンスと捉え、道路空間を「人と人との出会いの空間、人間中心の空間」に転換させる具体的な提案をまとめた。
 提言の目玉は、道路構造令での「第5種道路」の創設だ。歩行者は道路内のどこを歩いても立ち止まってもよく、車両は歩行者を尊重して最徐行で通行する。通行機能よりも空間機能を重視した道路と位置付ける。歩行者の安全に加えて、にぎわいを創出するための滞留空間を確保する「第5種第1級」と、歩行者の安全を確保する「第5種第2級」に分ける。第1級は中心市街地や商店街、観光地など不特定多数が集まる道路、第2級は生活道路のようにある程度特定の住民が利用する道路を想定している。
 中心市街地や観光地などでは、まちづくり施策と連携しながら、ゾーン10・ゾーン20プラスによる面的な交通静穏化対策などを展開し、周辺エリアとの差別化を図る。クルマの総量を削減するための総合的な交通マネジメントとして、歩行者専用道路と一方通行規制の組み合わせによる通過交通の抑制、路面公共交通の利活用施策と一体となったトランジットモール化、カーゴバイク特区の導入なども提案。沿道施設や公園との一体的運用、「ほこみち制度」の活用が難しいところでの道路占用・使用許可の面的な緩和も呼び掛ける。
 通学中の児童が巻き込まれるなど痛ましい交通事故の撲滅を目指し、学校の入り口と接する道路の1ブロックを対象に、時間限定で車両の通過を原則禁止する「学校前の小さな道(子ども達のみち)」の創設も提案している。
 道路上交通・移動手段のプライオリティーとヒエラルキーの確立、社会への発信も目指す。車いすを最上位に歩行者、自転車、原動機付自転車、路面電車、バス、タクシーなどといった順で優先度を明確化させ、一般乗用車を最下位に位置付ける。これらを道路、交通安全政策に明示することで、小さな道に対する社会的合意やコミュニティーの参画を促す。