11日正午、東京ビッグサイト。傘を打つ雨音が響く中、リクルートスーツ姿の大学生が、巨大な展示会場に吸い寄せられるように集まっていた。「どうしても早期化トレンドに引っ張られる。勉強したい学生には厳しい状況だ」と話すのは建築系の修士1年生。専攻はユニバーサルデザイン。小さい頃から家族の介護を見てきた。誰もが使いやすい空間を学ぼうと、学部・院への進学を決めた。ただ、直後の6月ごろには夏季インターンシップのエントリーシート作成に追われるようになっていった。「本音を言うと、もう少し遅くしてほしい」と小声で明かした。 =1面参照 選考の早期化傾向は年々顕著になっている。マイナビが3月初旬、2026年3月卒業予定の大学3年生・院生約2700人に実施したアンケートによると、内定率は43.1%。土木・建築分野に限っては6割を超えていた。同時期の内定保有率は増加傾向にある。
「早く動かないと“優秀な”学生に巡り会えない」と企業が早く動き出せば、学生も「出遅れれば“良い”企業の席が埋まる」と呼応する。こうした循環を人材確保への焦りが加速させ、早期化の連鎖に歯止めが利かなくなっている。
【就業体験不要のPR】
マイナビキャリアリサーチLabの井出翔子主任研究員は、この現状に「極端な早期化は企業・学生双方のミスマッチにつながる」と警鐘を鳴らす。「学部3年生の多くはまだ、卒業研究に着手していない。学術的な専門性が身に付く前段階で選考が進めば、ミスマッチのリスクは高まる」と指摘する。
業態が異なれば、社員に求められる適正は異なる。採用基準の「優秀さ」の定義は、企業ごとに異なるのが本来だ。ただ、自社の“オリジナルな”優秀さで、専門性が未熟な学生をふるいにかけることは容易でない。採用が早まれば早まるほど、面接を通じた適否の判断は難しくなる。
一方の学生側も、研究が中途半端な状態ではキャリアの青写真は描きにくい。結果、賃金水準や会社規模、社会的な認知度に引きずられがちになる。
では、企業・学生双方に望ましい就活・採用活動の形とは何か。井出氏が着目するのが「オープンカンパニー」だ。
オープンカンパニーは、政府の就活ルールとなる改正三省合意に設けられた枠組みの一つ。就業体験を伴わずに、イベントなどで自社PRができることが特徴だ。
企業が学生と接点を持つには従来、就業体験が必須だった。オープンカンパニーでは、この要件が取り払われ、大学生は1年次から参加できる。学生のキャリアプランの早期形成に役立つと期待されている。
井出氏によると、「オープンカンパニーは開催ハードルが低く、これまで就業体験型イベントに手が回らなかった企業も参加し始めている」という。以前は手薄だった「大学低学年へのキャリア支援の取り組みとしても広がってきている」そうだ。
「あまりに早い採用選考はミスマッチのリスクが高い。売り手市場ではあるが、選考自体を早期化せずとも、政府ルールを適切に活用すれば、早い時点で学生に会社を知ってもらうことは可能だ。その上で、学生の専門性が育つのを待ち、採用選考を進めることが望ましい」と説いた。
井出 翔子氏(いで・しょうこ)2015年マイナビ入社。同社研究所「マイナビキャリアリサーチLab」で新卒採用領域を担当。企業動向についての知見が深い。
「早く動かないと“優秀な”学生に巡り会えない」と企業が早く動き出せば、学生も「出遅れれば“良い”企業の席が埋まる」と呼応する。こうした循環を人材確保への焦りが加速させ、早期化の連鎖に歯止めが利かなくなっている。
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マイナビキャリアリサーチLabの井出翔子主任研究員は、この現状に「極端な早期化は企業・学生双方のミスマッチにつながる」と警鐘を鳴らす。「学部3年生の多くはまだ、卒業研究に着手していない。学術的な専門性が身に付く前段階で選考が進めば、ミスマッチのリスクは高まる」と指摘する。
業態が異なれば、社員に求められる適正は異なる。採用基準の「優秀さ」の定義は、企業ごとに異なるのが本来だ。ただ、自社の“オリジナルな”優秀さで、専門性が未熟な学生をふるいにかけることは容易でない。採用が早まれば早まるほど、面接を通じた適否の判断は難しくなる。
一方の学生側も、研究が中途半端な状態ではキャリアの青写真は描きにくい。結果、賃金水準や会社規模、社会的な認知度に引きずられがちになる。
では、企業・学生双方に望ましい就活・採用活動の形とは何か。井出氏が着目するのが「オープンカンパニー」だ。
オープンカンパニーは、政府の就活ルールとなる改正三省合意に設けられた枠組みの一つ。就業体験を伴わずに、イベントなどで自社PRができることが特徴だ。
企業が学生と接点を持つには従来、就業体験が必須だった。オープンカンパニーでは、この要件が取り払われ、大学生は1年次から参加できる。学生のキャリアプランの早期形成に役立つと期待されている。
井出氏によると、「オープンカンパニーは開催ハードルが低く、これまで就業体験型イベントに手が回らなかった企業も参加し始めている」という。以前は手薄だった「大学低学年へのキャリア支援の取り組みとしても広がってきている」そうだ。
「あまりに早い採用選考はミスマッチのリスクが高い。売り手市場ではあるが、選考自体を早期化せずとも、政府ルールを適切に活用すれば、早い時点で学生に会社を知ってもらうことは可能だ。その上で、学生の専門性が育つのを待ち、採用選考を進めることが望ましい」と説いた。
井出 翔子氏(いで・しょうこ)2015年マイナビ入社。同社研究所「マイナビキャリアリサーチLab」で新卒採用領域を担当。企業動向についての知見が深い。













