【実質事業量減、官民で認識共有/公共予算「安定」から「増額」へ】
全国建設業協会と47都道府県建設業協会が、業界を取り巻く諸課題について国土交通省などと意見を交わす2025年度の地域懇談会・ブロック会議が10月31日の北海道地区で全日程を終えた。26年度からスタートする業界待望の国土強靱化実施中期計画を含め、今年は公共事業予算の増額確保を求める声がかつてないほどに高まった。近年の資機材価格や人件費の上昇・高止まりに起因する実質事業量の減少という地域建設企業の経営を直撃する危機が、現実のものとして表面化しているためだ。また、時間外労働の上限規制は、適用開始から1年半余りが経過した段階ではあるものの、特殊環境下での仕事を余儀なくされる建設業において、さまざまな課題を見える化させるには十分だった。全国各地で繰り広げられた議論を振り返る。 「気候変動の影響で自然災害は激甚化・頻発化し、酷暑対策や防災・減災、国土強靱化は待ったなしの状況にある。地域建設業が『地域の守り手』としての役割を果たし続け、地域経済を回し続けていくためには、地域ごとに安定的・継続的で、計画予見性のある事業量の確保が不可欠だ。国土強靱化実施中期計画の着実な執行を含め、必要かつ十分な公共事業予算の確保が強く望まれる」。全建の今井雅則会長はこう強調した。
もちろん「質」も大切だが、受注産業の建設業にとって、それ以前の大前提となる「量」が生き残りには欠かせない。各地方からも窮状を訴える声は相次ぎ、東北建設業協会連合会の千葉嘉春会長は「長引く物価上昇は、実質的な公共事業予算の減少を招き、地域のインフラの整備・維持管理・更新を困難にしている。これは地域の安全・安心を脅かし、われわれの企業経営すら危ぶまれる状況だ」と危機感をあらわにした。
現に、全建がブロック会議を前に実施した都道府県協会会員企業のアンケート結果(1891社回答)によると、全体の半数近くに当たる48.1%が受注状況を「悪い・悪くなってきた」と回答し、前年度調査と比べて8.5ポイントも悪化した。主な要因は「公共発注量の減少」が圧倒的に多く、資機材価格や労務費の上昇などを背景とする実質事業量・工事件数の減少が問題視されている。前払金保証会社の調査ではこの数年、地域建設業の利益率が下降傾向にあることも判明。パイの縮小による受注競争の激化などが懸念されている。
このような中、「5年20兆円強」という事業規模が示され、25年度補正予算で初年度分が措置されるとみられる強靱化実施中計への期待が各地で相次いだ。全建は、事業費の半分を国費の公共事業費(5年10兆円強)と想定し、初年度はその5分の1に当たる2兆円超を最低でも確保するよう主張した。5年20兆円強にとどまらない大幅な上積みを求める意見などもあった。
併せて、実質事業量の安定確保の観点から、当初予算に対する注文が多かったのも今年の特徴だ。各地の会場に駆け付けた自民党の見坂茂範参院議員は「1件1件の工事は価格転嫁が進んでいるが、公共事業予算には転嫁がされていない。その結果、この数年で工事量は2、3割減っている。当初予算の公共事業費はこの10年間、1.00倍で横ばいに推移しており、これが一番の問題だ。どんなにもうかる構造にしても、工事、予算がなければどうしようもない」と指摘した。
予算編成作業が今後本格化していく中、国交省側も「必要な予算と事業量の確保に全力で取り組む」と思いは同じ。財政当局との攻防を見据え、「施工余力がないから公共事業予算を拡充しても意味がないという指摘は、全く当たらないと考えている。業界も同様の認識だと思うが、これは大変重要なポイントだ。各地域でもあらゆる機会を捉えて、積極的に発信してもらいたい」と後押しを呼び掛けた。
東日本大震災などを契機に、公共事業関係費は減少の一途から抜け出し、その後は安定飛行に入った。減少局面に比べれば「安定的・持続的な確保」は歓迎すべき事象だったが、時代はインフレ志向のフェーズに移った。明確な「増額確保」を実現できるか。今、分岐点にある。
全国建設業協会と47都道府県建設業協会が、業界を取り巻く諸課題について国土交通省などと意見を交わす2025年度の地域懇談会・ブロック会議が10月31日の北海道地区で全日程を終えた。26年度からスタートする業界待望の国土強靱化実施中期計画を含め、今年は公共事業予算の増額確保を求める声がかつてないほどに高まった。近年の資機材価格や人件費の上昇・高止まりに起因する実質事業量の減少という地域建設企業の経営を直撃する危機が、現実のものとして表面化しているためだ。また、時間外労働の上限規制は、適用開始から1年半余りが経過した段階ではあるものの、特殊環境下での仕事を余儀なくされる建設業において、さまざまな課題を見える化させるには十分だった。全国各地で繰り広げられた議論を振り返る。 「気候変動の影響で自然災害は激甚化・頻発化し、酷暑対策や防災・減災、国土強靱化は待ったなしの状況にある。地域建設業が『地域の守り手』としての役割を果たし続け、地域経済を回し続けていくためには、地域ごとに安定的・継続的で、計画予見性のある事業量の確保が不可欠だ。国土強靱化実施中期計画の着実な執行を含め、必要かつ十分な公共事業予算の確保が強く望まれる」。全建の今井雅則会長はこう強調した。
もちろん「質」も大切だが、受注産業の建設業にとって、それ以前の大前提となる「量」が生き残りには欠かせない。各地方からも窮状を訴える声は相次ぎ、東北建設業協会連合会の千葉嘉春会長は「長引く物価上昇は、実質的な公共事業予算の減少を招き、地域のインフラの整備・維持管理・更新を困難にしている。これは地域の安全・安心を脅かし、われわれの企業経営すら危ぶまれる状況だ」と危機感をあらわにした。
現に、全建がブロック会議を前に実施した都道府県協会会員企業のアンケート結果(1891社回答)によると、全体の半数近くに当たる48.1%が受注状況を「悪い・悪くなってきた」と回答し、前年度調査と比べて8.5ポイントも悪化した。主な要因は「公共発注量の減少」が圧倒的に多く、資機材価格や労務費の上昇などを背景とする実質事業量・工事件数の減少が問題視されている。前払金保証会社の調査ではこの数年、地域建設業の利益率が下降傾向にあることも判明。パイの縮小による受注競争の激化などが懸念されている。
このような中、「5年20兆円強」という事業規模が示され、25年度補正予算で初年度分が措置されるとみられる強靱化実施中計への期待が各地で相次いだ。全建は、事業費の半分を国費の公共事業費(5年10兆円強)と想定し、初年度はその5分の1に当たる2兆円超を最低でも確保するよう主張した。5年20兆円強にとどまらない大幅な上積みを求める意見などもあった。
併せて、実質事業量の安定確保の観点から、当初予算に対する注文が多かったのも今年の特徴だ。各地の会場に駆け付けた自民党の見坂茂範参院議員は「1件1件の工事は価格転嫁が進んでいるが、公共事業予算には転嫁がされていない。その結果、この数年で工事量は2、3割減っている。当初予算の公共事業費はこの10年間、1.00倍で横ばいに推移しており、これが一番の問題だ。どんなにもうかる構造にしても、工事、予算がなければどうしようもない」と指摘した。
予算編成作業が今後本格化していく中、国交省側も「必要な予算と事業量の確保に全力で取り組む」と思いは同じ。財政当局との攻防を見据え、「施工余力がないから公共事業予算を拡充しても意味がないという指摘は、全く当たらないと考えている。業界も同様の認識だと思うが、これは大変重要なポイントだ。各地域でもあらゆる機会を捉えて、積極的に発信してもらいたい」と後押しを呼び掛けた。
東日本大震災などを契機に、公共事業関係費は減少の一途から抜け出し、その後は安定飛行に入った。減少局面に比べれば「安定的・持続的な確保」は歓迎すべき事象だったが、時代はインフレ志向のフェーズに移った。明確な「増額確保」を実現できるか。今、分岐点にある。














