【キーワードは「人」/どんな時代でも選ばれる仕掛けづくり/三菱地所設計 谷澤淳一(たにさわ・じゅんいち)社長】
まちづくりは人と人との出会いを生み出すこと--。東京・丸の内の開発に長らく事業者として携わってきた三菱地所設計の谷澤淳一社長は、「人」をキーワードに、街と建築に向き合ってきた。「人が集うことで街の価値が高まる」からこそ、「ハード・ソフト両面からの仕掛けが重要だ」とし、設計事務所が果たす役割の大切さをかみしめる。
「人が集まる街づくり」で重視するのが、「どんな時代でも選ばれる仕掛けづくり」だ。丸の内では、美術館や広場、店舗、飲食店など、多彩な“選択肢”を都市に設け、幅広い来街者を受け入れられるエリア構築に努めてきた。この経験から、建築と街は「境目がない方が良い」と感じていると言い、「都市につながる開かれた建築」の必要性を提起する。
働く場も同様だ。「木陰のベンチで働きたい」「集中したい」「皆で顔を合わせて議論したい」など、さまざまな気分に応えるためには「屋内外や場の形質といった差異を含め、多様な“環境”の創造が肝要だ」と指摘。「オフィスビル設計のリーディングカンパニーとして、建築設計、都市計画、ランドスケープ、土木設計などの各職能の高度な融合で、人が豊かに過ごせる環境づくりに取り組んでいる」
ここで重要なのが、“柔軟性”と“可変性”だ。設備や環境性能を含め、10年、数十年先の社会ニーズの変化を見据え、「都市と建築のライフサイクル全体にアプローチできるのが当社の強み。変化・更新に応える仕組みをつくる『ホワイトインフラ思考』で向き合う」と思いを込める。
続けて、「プロジェクトごとに条件こそ異なるが、こうした発想を基礎とし、ひいては都市全体の持続可能性を高めたい」と強調する。
さらに、人が豊かに過ごせる環境をつくるためには、設計者の「幅広い提案力」が欠かせないとし、「周辺地域の歴史やコンテクスト(文脈)を精緻に読み解き、これからの場所の在り方を構想する重要性」を感じている。
例えば丸の内エリアには、「大企業やスタートアップ(新興企業)、行政、学術など、立場や組織、都心と地方を超えた交流を可能とするオープンイノベーションの場がある」とした上で、「これまで接点のなかった人の出会いが価値を生み、まちの魅力を高める」きっかけになっていることを説明する。
こうした思いが2026年以降に予定している本社移転にもつながるという。「多様かつ複雑な今日の社会的要請に応えるべく、人と人の媒介となり、都市に展開できる就業環境をつくる。高度な社内外の交流、創造性の創発を可能とし、設計者の提案力強化を支えたい」と展望する。
さらに、「人が集うことで価値が高まるのは、まちも組織も同じだ。設計者自身にも“人との出会い”が不可欠。設計の過程では異なる専門領域との協業が求められる。こうしたコラボレーションによって相乗効果が生まれ、建築に新たな価値が宿る」とみる。
【業績メモ】
今年度の売上高、受注高ともに、「昨年度よりも上回って着地する見通し」。近年、リノベーションやコンサルティング、CM(コンストラクション・マネジメント)業務が増加し、「新築設計監理との両輪体制の構築を強化する」。現在、26年から3年間の中期経営計画の議論を進めている。
まちづくりは人と人との出会いを生み出すこと--。東京・丸の内の開発に長らく事業者として携わってきた三菱地所設計の谷澤淳一社長は、「人」をキーワードに、街と建築に向き合ってきた。「人が集うことで街の価値が高まる」からこそ、「ハード・ソフト両面からの仕掛けが重要だ」とし、設計事務所が果たす役割の大切さをかみしめる。
「人が集まる街づくり」で重視するのが、「どんな時代でも選ばれる仕掛けづくり」だ。丸の内では、美術館や広場、店舗、飲食店など、多彩な“選択肢”を都市に設け、幅広い来街者を受け入れられるエリア構築に努めてきた。この経験から、建築と街は「境目がない方が良い」と感じていると言い、「都市につながる開かれた建築」の必要性を提起する。
働く場も同様だ。「木陰のベンチで働きたい」「集中したい」「皆で顔を合わせて議論したい」など、さまざまな気分に応えるためには「屋内外や場の形質といった差異を含め、多様な“環境”の創造が肝要だ」と指摘。「オフィスビル設計のリーディングカンパニーとして、建築設計、都市計画、ランドスケープ、土木設計などの各職能の高度な融合で、人が豊かに過ごせる環境づくりに取り組んでいる」
ここで重要なのが、“柔軟性”と“可変性”だ。設備や環境性能を含め、10年、数十年先の社会ニーズの変化を見据え、「都市と建築のライフサイクル全体にアプローチできるのが当社の強み。変化・更新に応える仕組みをつくる『ホワイトインフラ思考』で向き合う」と思いを込める。
続けて、「プロジェクトごとに条件こそ異なるが、こうした発想を基礎とし、ひいては都市全体の持続可能性を高めたい」と強調する。
さらに、人が豊かに過ごせる環境をつくるためには、設計者の「幅広い提案力」が欠かせないとし、「周辺地域の歴史やコンテクスト(文脈)を精緻に読み解き、これからの場所の在り方を構想する重要性」を感じている。
例えば丸の内エリアには、「大企業やスタートアップ(新興企業)、行政、学術など、立場や組織、都心と地方を超えた交流を可能とするオープンイノベーションの場がある」とした上で、「これまで接点のなかった人の出会いが価値を生み、まちの魅力を高める」きっかけになっていることを説明する。
こうした思いが2026年以降に予定している本社移転にもつながるという。「多様かつ複雑な今日の社会的要請に応えるべく、人と人の媒介となり、都市に展開できる就業環境をつくる。高度な社内外の交流、創造性の創発を可能とし、設計者の提案力強化を支えたい」と展望する。
さらに、「人が集うことで価値が高まるのは、まちも組織も同じだ。設計者自身にも“人との出会い”が不可欠。設計の過程では異なる専門領域との協業が求められる。こうしたコラボレーションによって相乗効果が生まれ、建築に新たな価値が宿る」とみる。
【業績メモ】
今年度の売上高、受注高ともに、「昨年度よりも上回って着地する見通し」。近年、リノベーションやコンサルティング、CM(コンストラクション・マネジメント)業務が増加し、「新築設計監理との両輪体制の構築を強化する」。現在、26年から3年間の中期経営計画の議論を進めている。













