予算消化より「目標達成」/国土強靱化計画の本質強調/山本強靱化推進室次長 | 建設通信新聞Digital

12月15日 月曜日

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予算消化より「目標達成」/国土強靱化計画の本質強調/山本強靱化推進室次長

 内閣官房の山本巧国土強靱化推進室次長(内閣官房内閣審議官内閣官房副長官補付兼任)は、2026年度を初年度とし、5年間でおおむね“20兆円強程度”の事業規模となる『第1次国土強靱化実施中期計画』について、「このお金を使うことが目的ではない。定められた目標をきちんと達成できるかどうかが大切だ」と述べ、国土強靱化の目的や本質を強調した。国土交通省の国土技術政策総合研究所が10日に開いた25年度「国総研講演会」での発言。
 さらに山本次長は「目標達成のために(資材価格や人件費など)コストが上がった分も、これで見ていくことになっている」と説明。政府は計画期間内の目標となるKPI(重要業績指標)を掲げた同計画を閣議決定したことから、「5年間、これを達成できるように必要な投資をしていく。必要なコストが上がった分はきちんと反映していくことになっており、目標にめがけて、しっかりと予算を確保していく計画になっている」と解説し、目標を達成しようとする思いも伝えた。
 今年6月に閣議決定した第1次国土強靱化実施中期計画は、計画期間を26年度から30年度までの5年間とし、この期間内に実施すべき施策として全326施策、推進が特に必要となる施策として全114施策を位置付けている。
 山本次長は、計画初年度が26年度ではあるものの、その予算は25年度補正案から計上し、措置していることを説明。これで実施中期計画の初年度を「前倒し」し、国費約1.9兆円、事業費約3兆円を措置していることを報告した。この額は、現在の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の最終年度1.4兆円から約1.3倍に増やした規模であり、計画全体の規模が5か年加速化対策の15兆円から、実施中期計画で20兆円に拡大していることに比例した額という。
 山本次長はこのほか、南海トラフ地震が発生した場合、経済被害額は1241兆円、資産被害額は225兆円に上り、税収減や復興費用などによる財政的被害が506兆円と試算されていることを説明した。ただし、事前に道路や港湾、建物の耐震化などの対策に58兆円を投資して事業を行えば、約400兆円の被害軽減が見込まれることも指摘。「事前にこの対策を行うことは、財政的にも非常に意味がある」と述べ、国土強靱化の取り組みを通じた事前防災の効果や意義を強調した。