そこが聞きたい・東鉄工業執行役員環境・技術開発本部長 菊池 淳氏 | 建設通信新聞Digital

12月18日 木曜日

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そこが聞きたい・東鉄工業執行役員環境・技術開発本部長 菊池 淳氏

【環境・技術開発で目指す姿は?/各部門に環境の横串通す】

 東鉄工業の菊池淳執行役員環境・技術開発本部長は、同本部の使命を「当社の柱である線路、土木、建築の各部門に第四の柱である環境の横串を入れ、環境保全のレベルを高めて会社を発展させることだ」と強調する。環境と技術開発は一見違う分野だが、相乗効果を図り、線路・土木・建築の各施工本部に共通する環境課題の解決を目指す。「グループ全体の技術開発を推進し、その成果によって労働環境の改善、生産性向上を継続し、最終的に環境負荷を低減する」と語る菊池執行役員に、本部の取り組み方針などを聞いた。 同本部では、「三位一体の経営」の実現に向け、「変わらないために変化し続ける」をキーワードに据え、グループ全体の成長を環境・技術面からけん引する。そのため、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、機械化などそれぞれを組み合わせて、最終的には働き方改革を実現する。
 環境企画部、環境戦略部、環境事業部、技術開発部の四つから成り、環境企画部は本部の取りまとめ、環境保全や年間計画の策定、廃棄物処理などを担う。
 環境戦略部は、各種施策の企画などを検討する。例えば、2050年カーボンニュートラルに向けて、会社の経営方針に沿った数値目標を示したロードマップを定めた。スコープ1・2(直接・間接排出)は、26年度までに18%削減する目標を公表している。
 「環境対策制度」も導入。電動建設機械やバイオ燃料の使用にかかる増加分の費用を支店経費とし、現場の利益を下げない仕組みを整えた。事務所の電力を再生可能エネルギー100%に切り替える取り組みも進める。
 環境事業部は緑化事業や太陽光発電に取り組む。「当社の環境ブランドのイメージを向上させる施策を検討したい」とし、若手を中心に勉強会を開くなど準備を進めている。
 技術開発は、「機械化、装置化、工具の改良で満足するのではなく、計画やマネジメントの部門も含め、真の意味での働き方改革を実現する」構えだ。
 これまで、生産性向上、労働環境の改善、働き方改革を念頭に、現場の困りごとをハード面から支える技術を展開してきた。現在は、DX、GX、AI(人工知能)などを統合し、ソフト面からも生産性向上に資する技術開発を進めている。31年度から始まるJR東日本の新幹線大規模改修にも備え、機械・装置化や、材料の開発に取り組む。
 技術開発、DX・GX、機械化には、5年間で500億円を投資する。また、24年度には技術開発を促進するための新制度を設けた。開発の成果は特許などの取得により、事業の拡大につなげたい考え。

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 (きくち・じゅん)1978年3月岩手県立盛岡第四高校卒後、同年4月日本国有鉄道(現JR東日本)入社。2020年6月東鉄工業入社。22年6月土木本部鉄道土木部長などを経て、25年6月から現職。国鉄に入社し、鉄道の魅力に取りつかれた。分割民営を控える中、鉄道橋梁の設計業務を経験したことが印象深いと振り返る。「2年ほどほぼ休みなく自ら測量、図面製作、構造計算し、達成感や自信を味わった。仕事での最も大きなターニングポイントだ」ときっぱり。「どんなこともやればできると考えるようになった」とし、今の自分を形づくった経験として誇らしげに語る。岩手県出身。59年10月29日生まれ、66歳。