【外国人材 評価、住まいは?/“現場発”議論進む】
育成就労制度の開始まで1年を切り、新制度に向けた企業の動きが本格化している。新制度は長期就労を前提に転職も可能となるなど、現行の技能実習制度とのギャップは小さくない。外国人材に注目が集まる中、共に働く上での課題は何なのか。草の根の議論を取材した。
3月中旬、東京・日本橋。日が落ちたオフィス街の一角では、建設系の外国人材を雇う企業担当者などが集まり、交流を深めていた。どうすれば外国人が定着するのか。企業の実務担当者同士がビールグラスを傾けつつ真剣な表情で話し込んでいた。
「評価が『実習生』とひとくくりになりがちでは」。そんな疑問を投げかけたのは、関東・関西圏で仮設工事を営む山栄建設工業(神戸市)の山根龍太関東支店長。制度にある違和感を覚えていた。
在留期間は最長5年。技能は着実に向上する。ただ、それに見合う賃金の伸びは乏しい場合が多い。「昇給幅が小さく、総じて賃金水準は低いと思う」と語った。自社では、こうした課題意識から昇給幅を大きくした。面談などで能力を評価し、勤続年数と賃金が連動する仕組みに改めた。
外国人の受け入れを始めたのは約10年前。現在は社員約40人のうち3割、技能者に限れば6割を外国人が占める。人材の定着は着実に進んできた。
そんな同社でも、転職可能な新制度には緊張感をもっている。「今の建設現場は実習生がいて当たり前だ。転職可能な新制度になれば、人材獲得は競争になり、“周りと同じ”では選ばれなくなる。まして、外国人とうまくやっていけない会社は今後、生き残れないと思う」と口にした。
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課題は「現場の外」にも広がる。代表的なのが住まいだ。
「外国人というだけで入居を断るオーナーや不動産会社は一定数いる。電話で話を切り出しただけで、ガチャッと切られることも多い」
都内で不動産業を営むTRUST AGENT(東京都新宿区)の塩見大樹代表取締役は、こうした実情を明かす。一般向け仲介のかたわら、外国人を受け入れる企業の寮や住宅の仲介支援にも取り組むが、成約までの道のりは険しい。「10件の依頼があっても、支援できるのは多くて6件程度」という。
背景にあるのは文化や生活習慣の違いだ。「同じマンションに外国人が何人も住むとなれば、不安を感じる人もいる」と冷静に語る。
一方で、外国人に対するいわれなき不信感は年々高まっている。「SNS(交流サイト)で差別的な動画が日々拡散されている。大きな問題だと思う」と話した。
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イベント主催者で、外国人材の定着支援に取り組むProud Partners(東京都新宿区)は、こうした企業交流会を定期的に開いている。企画した岡田航希営業本部長によると、参加人数は増加傾向で「交流のニーズは高まっている」という。
こうした背景もあり、同社は4月、外国人の「あるべき受け入れの姿」の社会的議論を深めようと、在留資格別の実態把握に向けて「特定技能コンソーシアム」を設立した。政府機関への政策提言も見据えており、岡村アルベルト取締役は「外国籍の人々の現状を多くの人に知ってもらうきっかけをつくっていきたい」と語る。
厚生労働省の定点調査によると、建設業で働く外国人は2025年10月末時点で20万人を超え、4年連続で増加している。人手不足が深刻化する中、現場は既に外国人材なしには成り立たない。新制度への移行が迫る中、差し迫った課題に向き合おうと、現場発の議論が広がっている。
