【PwCアドバイザリー パートナー 片山竜氏/官民連携『第三世代』へ/四半世紀の知見で拓く】
PwCJapanグループを構成するPwCアドバイザリーは、PFI法と同じ1999年に産声を上げ、官民連携市場とともに四半世紀を歩んできた。M&A(企業の合併・買収)、事業再編・再生、インフラ構築などに関連するアドバイザリーサービスを提供し、行政の発注者支援から事業構想まで、その守備範囲を広げてきた。社会課題が複雑さを増す中、官民連携市場は新たな局面に入っている。建設分野との連携をどう深め、次代にどのような価値を提供していくのか。同社パートナーの片山竜氏に聞いた。
最近の建設業との関わりの一つに、水関連事業の伸長を挙げる。政府が推進するウオーターPPPなどの案件が各自治体から多数発注されており、同社の2025年度業績にも貢献した。伸長の理由を「意図的にリソースを集中させたというよりも、行政の予算付けの早い段階から情報を取り、支援に入れる体制を構築できたことが大きい」と説明する。
同社の歩みは官民連携市場の成長と軌を一にする。片山氏は市場の変遷を三つの世代で整理する。00年代の箱物PFIを中心とした『第1世代』では、政府の積極的な旗振りの下で市場が大きく拡大した。
その後、若干の停滞期を経て、10年代半ばから空港コンセッション(運営権付与)に象徴される『第2世代』が活発化する。公共施設の運営権を民間に開放する動きが本格化した時期でもあった。スタジアムやアリーナ、美術館などにも対象が広がった。
現在、市場は『第3世代』に移行し、インフラ分野にも対象が及びつつある。最大の課題として挙げるのは、受発注者双方の人材とノウハウの不足だ。地方では技術系職員の退職が進み、技術的な蓄積を持たない職員が業務を担う場面が増えている。民間企業も施設更新や老朽化対策で手元の業務量が多く、事業の経営や運営を担える人材は限られる。
こうした中で、持続可能な官民連携事業を進めていくには「どうやって実施するかの『HOW』ではなく、事業によって解決したい課題は何かを解きほぐす『WHAT』の視点が不可欠だ」と指摘する。多くの社会課題が絡み合う中でクライアントの本当のニーズをくみ取り、事業の細部をカスタマイズする力がこれまで以上に問われている。
同時に重要なのが、公平・公正・中立な競争環境の確保だ。建設費高騰やインフレの影響で将来コストの予測が困難さを増す中、企業側が入札を見送るリスクも顕在化している。
「民間の独自提案をそのまま採用すれば、特定の一社しか応札できない条件になりかねず、応札者がいなかった場合の事業継続への影響は計り知れない」。民間のノウハウを最大限に引き出しつつ、いかに市場の競争性を担保するか。その知恵がいま、官民双方から求められている。
片山氏は「説明責任を負う行政と持続可能な収益モデルを求める企業の双方を橋渡ししたい」と強調する。その裏付けとなるのが、会計事務所を母体とする組織背景と、官民連携の黎明(れいめい)期から蓄積してきた知見、それを支える人材の厚みだ。
近年はシンクタンクから実務志向の人材が会計系ファームに流れる傾向があり、水関連分野では専門性の高い建設コンサルタント出身者も迎え入れている。公平性や透明性といった価値観を発注者と共有しつつ、過去の成功事例をなぞるのではなく、新たな課題に応じて知見を組み替え、多様な専門性を生かした解決策を示すことで、官民連携市場の次の発展を下支えしていく考えだ。
