【AI、ICT浸透に重要なことは?/統一基準と現場に寄り添う姿勢】
五洋建設の執行役員グローバルDXセンター長に、森屋陽一氏が就いた。従来のICT推進室を発展させた新組織で、建設現場の生産性向上、ナレッジ活用、経営管理の3分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を束ねる司令塔を担う。AI(人工知能)やICTを現場に浸透させるには「本社の統一的な基準と、多様な現場条件に寄り添うバランスが大事」と強調する森屋氏に、今後の展望を聞いた。
--就任の抱負を
「当社は創業130周年を迎えるに当たって、10年後の建設現場の未来の姿を見据え、AIとロボティクスの現場実装により建設現場をより魅力的なものに進化させる目標を掲げた。実現に向けた大役を担い、身が引き締まる思いだ。技術の導入そのものを目的とするのではなく、現場で実際に使われ、安全性、生産性、働きやすさの向上につながるDXを進めたい」
--組織の運営方針は
「建設現場の生産性向上と省人化、オートメーション化に取り組む建設DXをはじめ、設計や施工計画の検討支援、書類作成の効率化を担うナレッジDX、データに基づくタイムリーな工事管理を行うための情報基盤・基幹システムの構築、情報セキュリティーなどを扱う経営DXという三つの切り口からDXを推し進める」
「土木技術部や技術研究所、支店・現場と連携していくため、人員を全てセンターに集約せず、多くのスタッフがあえて兼務の形をとっている。元の部署に籍が残れば情報も入りやすく、連携の窓口にもなる。特に現場では、本社の統一的な基準でAIやICTを展開することも必要だが、押しつける形では建設現場のDXはなかなか進まない。現場に寄り添う形で展開することが大事で、バランスに注意したい」
--現場展開のポイントは
「単に効率化のツールを入れるというより、現場条件によって効率的に進められない部分を解消するためにAIやICTを紹介したい。本社で何らかのツールの導入を決めても、現場によっては違うものを求めている場合もあり、利用に対する姿勢には地域差もある。現場のニーズに合うものを導入することが一番だ。本社・支店と現場の間でデジタル化したデータがうまく流れる仕組みができるならば、現場で使うツールそのものは現場ごとに違っていて良いと考えている」
--課題は
「現場でも管理部門などでも、デジタル化されていなければAIの活用につながらない点は同じだ。さまざまなデータをデジタル化し、うまく使うことで生産性向上や省人化につながる。ナレッジも人の頭の中や紙ベースのままでは有効活用できない。デジタル化して蓄え、使える形に整理していく必要があり、この点も注力したい」
--中期経営計画への貢献は
「AIやロボティクス、BIM/CIMなどをフル活用し、現場のオートメーション化を進めることで中計の達成に貢献する。特に建機や作業船の自動化に積極的に取り組む。3年後には一連の動作を自動化する『自動化レベル2』を先行実施し、5年後に普及拡大、10年後には理想的な条件の場合に人が操作しなくてもシステム側で自動化できる『自動化レベル3』を目指す」
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(もりや・よういち)1996年3月中央大大学院博士後期課程修了後、同年4月五洋建設入社。2020年4月ICT推進室ICT推進部長(技術)、24年4月洋上風力事業本部副本部長兼ICT推進室副室長、25年4月執行役員ICT推進室長兼土木部門担当(洋上風力)を経て26年4月から現職。東京都出身。68年9月2日生まれ、57歳。
