【保守と変革の両輪で】
6月26日付でUBE三菱セメントの社長に加藤秀樹氏が就いた。2022年4月に宇部興産(現UBE)と三菱マテリアルのセメント事業が統合して誕生した同社を、加藤社長は「歴史と実績のある新しい会社」と表現する。ただ、製品の安定供給が重視されるビジネス構造上、「どうしても前例を踏襲するような保守的思考になりがちだが、今はチャレンジ精神旺盛な社員も必要だ。両輪で取り組める会社にしたい」と力を込める。理念に掲げる「挑戦と変革」をどう実現するのか話を聞いた。
--抱負は
「小山誠前会長や平野和人前社長から引き継いだ礎をさらに発展させるのが私の役割で、身が引き締まる思いだ。当社は天然資源のほかに、大量の廃棄物などを活用しながらセメントを製造している。社会インフラの基礎資材であるセメントの安定供給や資源循環への貢献といった社会的価値を、企業の成長という経済価値と両立させている。そうしたグループの社員であることに対して、一人ひとりがプライドを持てるような会社にしたい」
--市場環境の見通しは
「25年度のセメントの国内需要は3053万tで、7年連続で減少している。建設現場の担い手不足や週休2日制度の浸透、働き方改革によるものだと捉えている。一方で、国土強靱化や老朽インフラ対策などの官公需要は底堅いと見込んでいる。国内需要の減少は今後落ち着き、30年ごろまではおおむね3000万tの水準で推移すると見込んでいる」
--海外需要は
「米国事業では、主に南カリフォルニア地区で事業を進めている。足元では高金利が続いているものの、同地区のセメント需要は住宅需要やインフラ投資を背景に公共投資が堅調だ。人口も増加しており、中長期的には十分なポテンシャルがあるマーケットだ」
--注力事業は
「国内事業の収益向上と競争力強化に取り組む。既に公表したとおり、九州工場の一角にある苅田第二地区でのセメント製造を27年3月末で終了し、リサイクル拠点化によってセメント生産体制を最適化していく。米国事業では、セメント・骨材の製造・販売から生コンの製造・販売に至る垂直統合モデルを進化させる」
--事業環境は
「25年度を最終とした前中期経営戦略期間を振り返ると、目標営業利益とした390億円を3カ年を通じて達成した。全社一丸となって、収益基盤の強化に取り組んできた成果だ。今年度からは新たな3カ年の中期経営戦略が始まった。前の3カ年でまいた種の果実を刈り取っていくフェーズだ」
--人材育成の考え方は
「人員増に依存しない生産性の向上と人材配置の最適化を進める。社員一人ひとりが改革を担うような組織への転換を図っていきたい」
--上場申請の狙いは
「カーボンニュートラルへの投資に加え、海外ではM&A(企業の合併・買収)への資金需要がある。その際の資金調達の選択肢を増やす。社内のベクトルを合わせ、モチベーションを上げていく意味もある」
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(かとう・ ひでき)1986年3月九州大法学部法律学科卒後、同年4月三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)入社。2022年4月UBE三菱セメント常務執行役員、25年4月常務執行役員CFOなどを歴任。64年3月15日生まれ、62歳。
◆記者の目
「ボールがここに来るだろうと先読みして動く。そこに見事にボールが来る。そんなシーンがいくつもあった」。最近はもっぱらサッカーワールドカップに熱中した一人。そのテレビの画面には、社員数千人の人生を預かる経営者としての自分も重ねていた。「最後のシュートを打つのは一人だが、そこまでボールをつなぐには個人技が必要だ。その力が集約されたのがゴール。経営と一緒」。座右の銘とする『cool head but warm heart(冷静な頭脳と熱い気持ち)』を実践している瞬間を垣間見た。
