働き方改革で就労時間が短くなる中、社員教育が転換点を迎えている。ベテランの知恵を限られた時間で伝承するにはどうすれば--。大成建設の土木本部はこうした課題意識から、東京都新宿区の本社オフィスのリニューアルに着手した。執務空間を変え、働く時間の密度を濃くする。現場の知恵がものをいう“経験工学”の土木分野で、新しい風が吹き始めている。
「かつては“時間が人を育てていた”」。そう話すのは、土木本部長として組織を率いる白川賢志取締役兼副社長執行役員だ。
「日中は現場で物を見ながら経験を蓄え、夜は残業する。私たちの時代は、そうやって成長してきた。一方で今の現場は『午後6時には帰りなさい』という時代だ。この中で、どうやって人が成長していくかを考えなければならない」。こうした白川氏の強い危機感から、オフィスのリニューアルがスタートした。先行して進めた16階フロアが7月に完成し、下階のリニューアル工事も年内に仕上がる予定だという。
8月中旬、完成したばかりの16階フロアを訪ねると、おしゃれなカフェにも負けない現代的な空間で同社社員が働いていた。
以前は仕切り壁で3エリアに分かれていた約1200㎡の空間は一つにつながり、各所にちょっとしたミーティングスペースが設けられた。座席はフリーアドレス制で、各自が業務に応じて柔軟に執務環境を選ぶことができる。自由に行き交い、回遊を通じて社員同士が交流する。属人化しがちな経験・知恵を共有しやすい環境を目指した。案の定、オフィスのあちらこちらでは既に社員同士が集まり、気軽な交流が生まれていた。
同本部ではこれを機に、ペーパーレス化にもかじをきった。資料のデジタル化、整理を促すことで、“もの探し”のムダを減らし、時間密度を高める狙いがある。
白川氏は「建設業界そのものの在り方が変わってきている。働き方改革は、その一つのきっかけだった。今までのような働き方はもうできない。これまでの蓄積をどう生かすか。今回のリニューアルはその入り口に過ぎない」と語った。
