先日、日本の建設系団体のフィリピン視察に同行し、地方の農村部を訪ねた。見渡す限りサトウキビ畑が広がっていた◆しばらくして小さな村落に着く。「ここに技能実習生の母親がいる」。案内役の大柄な青年がバンを止め、小道に向かって歩き出す◆レンガ風の壁にトタン屋根。小さな家の奥で、夫婦と親戚らしき人が4人で暮らしていた。息子2人は出稼ぎ中で、長男は日本の建設現場で働いている。「さみしい?」と聞くと「スマホで毎日チャットしているわ」。穏やかな表情だった◆私事ながら、地方には仕事がないと20歳代で上京した。広い意味では出稼ぎかもしれない。ただ、親への仕送りなどは数えるほど。それで一人前になったつもりでいた。最後に母の声を聞いたのはいつか。かの息子に自分を重ね、己の未熟さを知る。
