【木質の可能性を広げる】
10月30日に設立された新たな業界団体「DLTジャパン」の初代会長に、総合木材メーカーである長谷川萬治商店の長谷川泰治社長が就任した。接着剤や金属金物を使わず木ダボのみで木材を固定・塊状化する「DLT(木ダボ接合積層材)」は、丸太1本当たりの「価値歩留まり」を向上させ、地域材利用の拡大にも貢献する。「設計者や施工者など全国のプレーヤーを広く巻き込み、普及に向けて活動を推進していく」と力を込める長谷川会長に今後の展望を聞いた。
--団体設立の背景と、新会長としての抱負を
「注目を集め始めているDLTをさらに普及し、標準化や技術開発も強力に推進していくには、一般社団法人という組織の力が必要だと考え設立に至った」
「地域の大工や工務店、そして山を守り育てる人々を助ける一助としてDLTを普及させ、木造建築の新たな可能性を全国へ広げていきたい」
--法人としての今後の具体的な目標や普及体制のイメージは
「設計者や施工者、地域材の有効活用を目指す全国の多彩なプレーヤーを巻き込み、組織の枠組みを通じて普及活動を強化する。具体的には、全ての都道府県に一県一社、地域材を活用したDLTを製造・供給できるコア事業者をしっかりと確保・育成していくことを目標に掲げている」
--DLTの技術的な特徴や、木造建築における位置付けとは
「最大の特徴は、従来の接着剤や金属金物を一切使わず、木ダボだけで木材を固定・塊状化する点にある。既存の素材や工法と競合させるのではなく、あくまでも建築における『新たな選択肢』として位置付けている。内装材や家具、パーティションといった活用に加え、今後は構造材としての活用も視野に入れ、適用範囲を広げていきたい」
--歩留まり向上や環境面での強みについては
「間伐材をはじめ、これまで十分に生かしきれずチップにするしかなかった部分まで、DLTで有効活用できるため、製材時の歩留まりを飛躍的に向上させられる。丸太1本当たりの価値を最大限に高める『価値歩留まり』の追求こそがDLTの根底にある強みであり、木材資源の循環利用や山林の保全にもつながっていく」
--行政連携や標準化のロードマップ、業界関係者との関わり方について
「林野庁が推進する『多様な木質材料の活用促進』の動きに歩調を合わせ、2028年度までに標準化の第1弾を確実にまとめ上げる。木を大切に使う姿勢を広めるため、まずは気軽に参画できる『DLTクラブ(ファンクラブ)』で関心を持っていただき、本格的に活用したい事業者には本会員として参画してもらい、全国で普及を進めていきたい」
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(はせがわ・たいじ)2001年3月慶大大学院修了後、同年4月ソニー入社。10年4月長谷川萬治商店入社、21年7月から社長。東京都出身。1975年5月3日生まれ、51歳。
◆記者の目
諦めずに努力を続ければ事を成せるという志を重んじ、常に挑戦を続ける姿勢が印象的だった。山を守り建築へつなぐことを大切にする言葉からは、建材の枠を超えた「木と人間の共鳴」を目指す熱い思いが伝わる。間伐材やチップまで生かして価値を高める工夫は、長谷川萬治商店のアロマオイルの展開にも息づき、「木を無駄にせず価値歩留まりを追求する」という哲学で結ばれている。既存工法と競合せず、新たな選択肢として内装から構造へと展開し、仲間を募りながら木造建築の新時代を切り開く歩みから目が離せない。
