未来の復旧工事を実現
大林組は、「令和6年能登半島地震」「令和6年奥能登豪雨」の緊急・応急復旧で、「建設機械の無人化・遠隔施工」「DX監視モニター」「自動充電ポート付きドローンの遠隔運航による災害現場のデジタルツイン化」といった新技術を駆使している。二次災害のリスクがつきまとう中、施工性と安全性の両立を念頭に置きつつ、最終目標である早期の復旧・復興に貢献するのが狙いだ。
汎用遠隔操縦装置「サロゲート」、DX監視モニター、自動充電ポート付きドローンの遠隔運航による災害現場のデジタルツイン化
◆汎用遠隔操縦装置を直轄復旧で初実装
大林組が施工する「令和6年能登半島地震地すべり(曽々木・渋田)緊急復旧工事」は、国土交通省北陸地方整備局と日本建設業連合会との災害協定に基づくもので、国道249号沿い(石川県輪島市曽々木地区)の山腹に堆積した土砂(約3000m3)を除去し、200m先の仮置き場に運搬する。大型耐候性土のう、落石防護柵の設置も含まれる。
ただ、被災箇所は、豪雨による追被災で土砂が広範囲にわたって流出したほか、岩肌が露出。堆積土の積み込み、運搬、荷下ろしについても地すべり直下で行わなければならず、大きな危険が伴った。
そこで、同社が大裕と共同開発した汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を採用、国土交通省直轄の復旧工事では初めての導入となった。また、現場でオペレーターが対象物を目視しながら建機を遠隔操作する「目視操縦方式」を併用した。
サロゲートは、特別な改造や工具を必要とせず、既存建機の操縦レバーなどに後付けで駆動装置を装着することが可能である。操作レバーアクチュエータのガイドレールと、走行ペダルアクチュエータのピンを脱着するだけで、遠隔操作と搭乗操作を短時間で切り替えられることができ、この構造により、複数機種への適用性が高く、汎用性に優れている。
遠隔操縦室には、現場の建機に取り付けた操縦用カメラ、周辺の状況を確認するための俯瞰カメラの映像がリアルタイムで表示されるモニターを設置。現場の作業関係者と直接やりとりできる無線機、異常時の非常停止ボタンも備えている。
室内の操縦席ではバックホーによる積み込み作業と、キャリアダンプの運転が切り替えられ、一人のオペレーターで複数の建機が操作できる。
今回は、協力企業である宮本組関東支店(千葉県君津市)の敷地内に実際の遠隔操縦室を設置し、オペレーターが約350㎞離れた現場の無人バックホーを操作した。通信環境を構築する上では、高速・大容量データを低遅延で伝送可能な光回線と、移動する複数の建機に適したメッシュWi-Fiを組み合わせた。
大林組北陸支店能登半島災害復旧工事事務所の西中淳一所長は、「当社の無人化施工の実績では例のない急勾配の現場だったが、社内組織が協働して通信環境を最適化することで、円滑かつ遅延のない操作信号、画像伝送に成功した。結果として、極めて危険度の高い災害復旧の現場で、無事故・無災害を達成できた」と振り返る。
オペレーターの現場従事が不要であるとともに、一人で複数の建機を遠隔操縦できることから、大規模な複合災害時の課題である宿泊場所や食事の確保、長時間移動などが解消されたという。
さらに、身体的な理由から現場への長距離移動、建機への昇降が困難なオペレーター、操作経験が少ない若手、女性も従事できるため、「多様な人材の登用、働き方につながることが期待される」としている。サロゲートは、「総務省テレワークトップランナー2025」で総務大臣賞を受賞した。
一方、2次元のモニター映像から3次元である現場空間の距離感などを正確に把握する難しさを実感。大林組西日本ロボティクスセンター施工技術部の谷征一担当部長は、高い精度が求められる掘削作業で搭乗操縦と比べて作業効率の低下が見られ、「3次元情報などをオペレーターに適切に伝える手法が不可欠」と、さらなる研究の必要性を示唆している。
遠隔操作技術は安全性や施工性の観点で大きな効果があることから、「災害対応の標準的手法として普及・発展させていくことが求められる」との考えを示す。被災地のなりわい再建、創造的復興への寄与を見据えている。
◆DX監視モニターで危険回避、変位解析
大林組施工の「令和6年能登半島地震地すべり(曽々木・渋田)緊急復旧工事」では、国際航業開発のDX(デジタルトランスフォーメーション)監視モニターを導入した。
伸縮計や光波測量を活用した従来の崩落斜面モニタリングは、センサーや光波ミラーの設置で作業員の現地立ち入りが必要なため、二次災害が懸念される。
DX監視モニターを崩落斜面の下方に設置することで、そのリスクを回避するとともに、画像解析を通じて変位の有無を検知した。
具体的には、携帯電話回線機能を持った安価なデジタルカメラで10分ごとに対象箇所を撮影し、10分前と後の画像を自動解析することで、面的な変位の有無を監視。解析結果は関係者に配信した。

◆遠隔で自動空撮、災害現場をデジタルツイン化
大林組は震災発生直後、国道249号、能越自動車道、のと里山海道の3区間で道路啓開を担当した。
いずれもオペレーターによるドローン空撮で得た情報をSfM解析し、3次元点群データを作成。被災状況を加味した道路啓開計画の立案などにつなげた。空撮から計画立案までに要した期間はわずか2日だったが、▽現地作業は余震などに伴う追被災の危険にさらされる▽被災地の通信環境が不安定なため、クラウドへの写真のアップロードに時間がかかる--ことが明らかとなった。
この課題を解消するため、当時施工中の「令和6年能登半島地震地すべり(曽々木・渋田)緊急復旧工事」で、新たな取り組みとして「自動充電ポート付きドローンの遠隔運航による災害現場のデジタルツイン化」を始めることとした。
工事全体の基本コンセプトに設定した「常時余震などに伴う新たな災害の危険性があるという状況下でも、ほぼ無人で迅速、安全、そして確実に作業を行う未来の復旧工事の実現」に沿うもので、建設機械の無人化・遠隔施工も一翼を担う。
自動充電ポート付きドローンの遠隔運航による災害現場のデジタルツイン化の仕組みは、定時運航するドローンが工事場所である国道249号の指定ルートを自動空撮する。ポートはRTK通信の基準局となり、移動局であるドローンと通信する。
ポートに帰還したドローンは充電を行うとともに、空撮写真をクラウドに自動でアップロードする。また、ポートは衛星インターネットサービスに接続されており、自然災害などでキャリア回線の通信が確保できない場合でも高速データ通信が可能となる。
ドローンの離陸は、協力会社のKDDIスマートドローンの社員1人が約300㎞離れた東京から操作した。
現地操作による被災の危険性がなくなっただけでなく、空撮写真のSfM解析、それに基づく点群データと設計3次元モデルとの統合、出来高の迅速かつ定量的な把握につながり、受発注双方にとって施工管理が高度化された。
加えて、大林組土木本部先端技術推進室技術第一部の近藤岳史技術第二課長は、「土量管理の測量作業は従来の2人から協力会社社員1人に省人化でき、事務所作業を含めて人手がかかる業務時間を従来の測量に対して90%以上削減できた」と効果を口にする。
奥能登豪雨でも「発災前後の点群データの差分解析から被害状況を迅速かつ明確に把握できた」とし、「今後も本取り組みをさまざまなシーンで実装・応用し、さらに知見を深めていきたい」と話している。


▽工事名=「令和6年能登半島地震地すべり(曽々木・渋田)緊急復旧工事」
▽活用企業=大林組







