建設業への人材サービスを手掛けるウィルオブ・コンストラクションが、BIM/CIMに特化した外国人技術者の派遣事業を本格的に展開している。現時点で大手・準大手ゼネコンを中心に10数社に約40人の技術者を派遣しており、3年後には200人規模まで拡大する計画だ。田中謙社長は「まだ受け入れ企業が限定的な状況ではあるが、いずれBIM/CIM原則化を背景に、地域の建設業にも動きが出てくる」と先を見据えている。
同事業は、ベトナムのハノイ国立土木大学と提携し、同社独自の人材育成プログラムで日本語とBIM/CIMのスキルを取得した卒業生などを自社の正社員として受け入れ、日本の企業に派遣する枠組み。今春からは入国審査を終えた一期生と日本国内で中途採用した外国籍エンジニア合わせて約40人が日本企業で働き始めた。2期生約50人も採用面接から内定まで進んでおり、来春にも日本企業に派遣する予定だ。
同社の育成プログラムは、同大の必須科目である設計エンジニアリング教育に加え、日本の建設会社で豊富な業務経験をもつベトナム人技術者の講師から、日本の商習慣を伝授されながら「Revit」「Civil 3D」「Navisworks」など日本の建設プロジェクトで使われている主要BIM/CIMソフトの操作スキルを一通り学ばせる点が強み。
田中氏は「日本語のスキルも重要視している。当社現地グループ会社ウィルオブ・ベトナムによるBIM/CIM教育と日本語教育を約1年行い日本語能力試験で日常会話レベルのN3以上の語学力も身につけてもらうようにしている。派遣後のアフターフォロー体制も確立しており、日本で長く働けるよう支援していく」と強調する。
同社はBIM/CIMの人材派遣事業に加え、今春からアウトソーシング事業にも乗り出した。既に建設会社を中心に10社と契約を締結済み。ベトナムのオフショア拠点を設け受託業務に対応する体制を確立している。現在のオペレーター体制はまだ数人だが、将来的には100人規模に拡充し、日本企業だけでなく海外企業からも受託する狙いだ。
国土交通省のBIM/CIM原則化に加え、民間建築プロジェクトではBIM導入の流れも拡大している。田中氏は「企業からはBIM/CIM人材だけでなく、業務を外注したいというニーズも出ており、その両方に対応できるように体制を拡充していく」と力を込める。同社はBIM/CIM普及の下支え役として着実に事業基盤を整えている。