【BIM/CIM未来図】構造データ連携の行方(中) 「ST-Bridge」求める声相次ぐ | 建設通信新聞Digital

7月23日 水曜日

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【BIM/CIM未来図】構造データ連携の行方(中) 「ST-Bridge」求める声相次ぐ

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構造BIMラウンドテーブルには、オートデスクBIMソフト『Revit』のユーザー会「RUG」と、Revitによる業務プロセスの効率化を目指す大手ゼネコン組織「BIM Summit」の主要メンバーに加え、一貫構造計算ソフトベンダーのユニオンシステム、構造システム、構造ソフトなどから担当者が参加した。

BIM確認申請がきっかけに


これまでRUGとBIM SummitはBIM確認申請を見据え、BIMソフトと一貫構造計算ソフトのデータ連携の枠組みについて議論してきた。ラウンドテーブルでは現在(フェーズ1)から中間(フェーズ2)、さらには2030年を見据えた将来像(フェーズ3)までの最適なデータ連携の枠組みを提示した。

フェーズ1はBIMソフトから出力した構造図と、一貫構造計算ソフトからの計算書を目視で整合確認する現在の流れを示しており、フェーズ2ではBIMソフトと一貫構造計算ソフトそれぞれから出力したデータをシステム上で整合確認する流れを前提に描いた。いわばフェーズ1は26年春からのBIM図面審査、フェーズ2は29年春からのBIMデータ審査を踏まえた枠組みになる。

ラウンドテーブルに出席した一貫構造計算ソフトベンダーの担当者からは、BIMデータ審査に向けた意見がいくつか上がった。共通するのは「図面と計算書のデータ整合性を担保する際、計算書を形づくる情報がどこから来ているか、その根拠を示す必要がある」との見方だ。計算の過程をデータ審査で求められた場合、一貫構造計算ソフトの作り方も変えざるを得ない。「審査対象になるBIMデータの位置付けがどういう方向に進むかについても注視している」との声も上がった。

背景には、BIMデータ審査について現時点で、どのデータ形式を前提に審査を進めていくかが厳密に定まっていない状況がある。26年春からのBIM図面審査では参考として国際標準フォーマット「IFC」データの提出が求められるが、その対象となる項目は物理形状と材料情報の部分だけにとどまる。そもそもBIMソフトと一貫構造計算ソフトは日本独自の構造中間フォーマット「ST-Bridge」でデータ連携している。BIMデータ審査でIFCが全面採用されるか、ST-Bridgeも含めた対応が可能になるのか、それによって一貫構造計算ソフトベンダーのスタンスも変わってくる。

そもそもIFCデータは鉄筋情報などを属性情報として表現しづらいことから、日本では独自フォーマットとしてST-Bridgeを開発した経緯がある。日本の構造設計では定着しているだけに、一貫構造計算ソフトベンダーだけでなく、構造設計者からもBIMデータ審査の対象として「ST-Bridgeを加えてほしい」との声が相次ぐ。ラウンドテーブル出席者からもBIMデータ審査を見据え、「BIMソフトと一貫構造計算ソフトのST-Bridgeデータ連携環境をさらに充実させるべき」との声が上がった。

既にBIM確認申請の運用を始めているシンガポールでは、独自のデータフォーマットとして「IFC-SG」を確立している。日本でも29年春のBIMデータ審査を見据え、どのようなデータ形式が望ましいかを早急に議論する必要がある。

ラウンドデーブルのファシリテーターを務めた東畑建築事務所構造設計室D×デザイン室の山本敦氏は「IFCデータの位置付けはまだ明確に定まっていないが、BIMデータ審査が動き出せば、その先(施工段階)にデータが流れる起点ができる。これまでの図面を軸にした流れが大きく変わるきっかけになることは間違いない」と先を見据えている。

構造データ連携の中間(フェーズ2)



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