自然災害はいつ、どこで起きるか分からない。同じ地域の企業と住民は、日頃から防災と向き合い、いざという時には共に行動する「共助」の精神が求められる。こうした理念を実現するべく、防災安全協会(東京都世田谷区、斎藤実理事長)は建設業などの参加を念頭に置いた「防災アカデミー会員」制度をスタートし、地域の「防災リーダー」の育成を後押ししている。斎藤理事長は「防災を企業経営や事業継続、地域との共生に結び付けていきたい」と語る。
同協会は2011年に発足した。背景には、東日本大震災における斎藤理事長自身の被災体験がある。「東京都世田谷区の自宅は、軟弱な盛土地盤という立地もあって、震度5弱の地震で壁に亀裂が入り内装が崩れるなど住めない状態に陥った」と明かす。
自然災害に対する備えの重要性を痛感し、自ら防災士資格を取得するとともに、自助・共助・公助を基本に据えた防災・減災事業を展開するため協会を設立した。防災グッズや非常食などを扱う製造業、災害支援サービス業、地域建設業を中心に、全国250社以上の会員が加入している。
同震災後、飲料水や簡易トイレ、懐中電灯、軍手など多様な防災備蓄製品が現れたが、「これらの製品は命に関わるのに、需要対応が最優先された結果、粗悪品が出回った」。
そこで「防災製品等推奨品認証制度」を立ち上げ、専門家や大学教授を審査員に迎え各製品の性能や安全性などを審査し、一定の基準を満たしたものに「防災製品等推奨品マーク」を付与している。自然災害が激甚化・頻発化する中、同マークの認知は徐々に広がり、認証数は累計1200アイテムに上った。消費者には優良品の目印、メーカーなどの供給者にとっては自社製品の信頼性を示す手段になる。
また、大規模災害時は公助だけで被災者を支援しきれないことから、共助に重点を置き事業を推進している。その一環として「災害備蓄管理士」資格制度を創設し、運営を手掛ける。備蓄品の適切な保管・管理や、被災地における支援物資の搬入出・仕分けといった実践的な災害対応を担える人材を育てる狙いだ。
建設現場の作業所長や企業の総務担当者らが持つことで、従業員だけでなく地域の安全確保にも貢献できる。「自治体を含め各所に備蓄管理の専門人材を配置することが、災害対応力を高める鍵となる」と強調する。
26年7月には、防災を社会貢献にとどめず、経営や事業継続に直結する取り組みにするため「防災アカデミー会員」(賛助会員)制度を新設した。防災庁設置法が参院本会議で可決された同月に合わせ運用を始め、9月から会員募集を始める。企業が「地域の防災リーダー」になるための豊富な研修プログラムをそろえている。
「防災アカデミー会員」になると、地域防災啓発活動を実施し、地域住民の安全・安心に向けた防災意識の向上に努めていることを証する「防災推進協力法人」に認定される。また、会員は、事業継続計画(BCP)、インフラ整備/復興、耐震、備蓄品など30種類以上のテーマのセミナーを無料で受講できる。会員間における企業間ネットワークの形成にもつながる。
「建設業など地域に根差す企業が防災を学び、近隣住民との交流や支援活動を重ねれば、地域全体の防災力は高まる。地域貢献を続ければ社会的な存在感が大きくなり、災害時に復旧・復興を担う役割も果たせる」と力を込める。「知る防災」と「つながる場」のハブとなり、企業の価値向上と地域防災を両立させる新たな仕組みを創出する。

