【全建技術研究発表会】最優秀賞に木内建設の「コンクリート圧送中にホースの振動による鉄筋等のずれ防止のための手作り免震装置」 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【全建技術研究発表会】最優秀賞に木内建設の「コンクリート圧送中にホースの振動による鉄筋等のずれ防止のための手作り免震装置」

受賞者による記念撮影

 全国建設業協会(近藤晴貞会長)は15日、東京都中央区の鉄鋼会館で2017年度技術研究発表会と表彰式を開き、最優秀賞に木内建設(静岡市)の「コンクリート圧送中にホースの振動による鉄筋等のずれ防止のための手作り免震装置」を選定した。現場にある材料を使ってコストを抑えながら容易に製作でき、大きな効果を発揮する点が高く評価された。
 特別賞には、一二三北路の「VRによる安全管理『ゴーグル型ディスプレイによる安全の可視化』」、発表会の開催が10回目を迎えたことから、第10回記念賞には丸本組の「建築躯体工事の階段開口部の転落防止手摺」がそれぞれ選定された。
 また、過去10年の功績をたたえる特別表彰として設けた技術研究大賞には丸本組が輝いた。全建の施工改善事例集に掲載されている955事例のうち、同社の事例が最多の104件を占めることから、その功績が評価された。
 今回は、10回目の節目ということもあり、前年度を大幅に上回る112件(土木85、建築21、その他6)の応募があった。発表会では特に優れた11事例(土木8、建築2、その他1)が発表された。
 最優秀賞の免震装置は、複数のゴルフボールを上下から板で挟み込む構造で、ホースを上に乗せることでコンクリート圧送中の振動を緩和し、鉄筋などのずれを防止する。
 これまでに土木2現場での適用実績があり、鉄筋のずれ防止に効果を発揮するとともに、筒先もち作業員の負担が軽減され、打設の施工性が向上した。また、圧送に携わる作業員の削減も実現している。
 ボールの偏りを防ぐため、底面の板上は4つの空間に仕切られている。改良を重ね、軽量化、コンパクト化を図り、急傾斜地や狭あいな現場にも容易に持ち込むことができる。
 表彰後、審査委員を務めた国土交通省官房技術調査課の常山修治建設システム管理企画室長は、「技術力の研さんに向けた日々の取り組みに敬意を表したい。業界全体の生産性向上などに皆さんの創意工夫が大いに役立つと思っている」とあいさつした。
 岡野益巳審査委員長(全建副会長)は、「発表会が今後も会員の技術力向上、生産性向上の一助になることを期待している」と述べた。最優秀賞、特別賞、第10回記念賞の受賞を惜しくも逃した8事例は優秀賞として表彰された。

 優秀賞は次のとおり(カッコ内は発表企業)。
 ▽中頭病院移転新築工事における施工者としての創意工夫(大城組)▽布設管基礎材の締固め方法の工夫(西松建設)▽OPTジェット工法によるSCP工法施工不能箇所への対応方法(丸本組)▽大口径長尺鋼管杭打設の施工性・安全性の向上(濱谷建設)▽鉄道高架橋構築工事における工期短縮(清水建設)▽港湾工事での「i-Construction」試行(南建設)▽タブレットを活用した架設土留の点検(大豊建設)▽熟練技能維持システムの開発と次世代建設生産性に関する研究(淺沼組)。

「受賞を糧に創意工夫にまい進したい」 木内建設土木部副主任・松下圭佑氏

 第10回発表会という節目での栄誉に、「資料づくりなどを手伝ってくれた仲間に感謝したい」と満面の笑みを見せる。

松下圭佑氏

 受賞直後のあいさつでは、「手づくり感、現場感を評価していただけたと思っている。今回の受賞を糧に、今後も創意工夫の取り組みにまい進していきたい」と決意を新たにした。
 開発の背景には、ホースの振動で鉄筋がずれて、作業か中止になった過去の苦い経験があった。検討過程では、ホースの下に古タイヤや竹を敷く案もあったが、タイヤはゴムの摩擦が強く鉄筋も動いてしまう。竹は前後の揺れには有効だが、左右方向の対応が弱いという課題があった。
 名案は意外なところから降りてきた。ゴルフコンペの帰りに車中で転がるゴルフボールを見て「これだ」と直感した。
 入社6年目。現場では安全で働きやすい環境づくりを常に心掛けている。
 「働いている人が無事に家に帰ることができる環境をつくり出せる技術者でありたい」と、さらなる創意工夫に意欲を見せる。

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