「現場の困りごと」意識
中央復建コンサルタンツは、ICT技術に関する社内講習に力を注いでいる。「国内トップレベルのICT技術者育成と全社ICTリテラシー向上」に向けた取り組みの一環で、社員のICTスキル向上へ「アウトリーチ」の視点に立った積極的な取り組みが特徴だ。社内講習の企画・実施の主体を担っているのが、同社ICT戦略室だ。
◆講師は社員、コンテンツを内製化
同室の森博昭室長によると「講習で学んだ知識や技術を実際の業務に反映してもらう」(森室長)ため、講習は時間に比較的余裕がある第1四半期を中心に、年度の上期に主に行われている。2026年度は「国内トップレベルのICT技術者の育成と全社リテラシー向上」を目標とし、9月上旬までに10の講習を行った。
講習のメニューは多彩だ。ワードやエクセル、チームズといった業務上の基本ソフトの使い方を学ぶ「リテラシー研修」や2次元・3次元CAD講習といったスタンダードな講習以外に、社員からの需要に応じた講習も用意している。
社員が講師を務めることが多く、コンテンツが「内製化」されているのも特徴だ。オンデマンド配信にも対応し、社員が必要に応じて視聴できる仕組みも構築している。
講習でスタンダードなメニューの一つが、一般社員向けのCAD講習だ。2次元・3次元それぞれについて行われ「リスキリング」の場としても機能している。同社は09年度から3次元CAD講習を開始するなど、早い段階からCAD講習に力を入れてきた。「データ連携のオートメーション化に向けた対応が急務だ。計画系部門でのBIM/CIM普及をさらに図っていきたい」と森室長は説明する。
最新動向に対応したメニューも増えている。BIM/CIMデータ活用拡大を目的に同社が現在注力しているのが、ゲームエンジンモデルの活用。「ゲームエンジン活用研修」では代表ソフト「UnReal Engine(アンリアルエンジン)」の概要説明のほか、参加者は理経と同社が共同開発した走行シミュレーションツールを使いCADデータをゲームエンジンモデルに変換するための基本操作などを学んだ。
「属性情報研修」は、26年3月の国土交通省BIM/CIM取扱要領改定を受け企画された。「建設とテクノロジーの架け橋になる」を掲げるONESTRUCTION(ワンストラクション)の藤田尚史氏を講師に招き、「なぜ属性情報が必要なのか」といった経緯や考え方について学んだほか、ハンズオンによる操作演習が行われた。
社員講師の一人でもあるICT戦略室の阿比留麻織氏は、実践的な学びが得られるよう「現場の困りごと」をなるべく意識して講習に臨んでいると話す。「操作説明だけに終始すると、受講者が自らの業務に落とし込めないままになることもある。『なぜこれをしなければいけないか』という目的を明確にし、受講生が『腹落ち』する説明を心がけている」(阿比留氏)。
◆何を教えるべきか
「ICTスキルの底上げが進み、業務の効率化と成果物の品質確保、社員のモチベーション向上につながった。業務品質の向上は、国土交通省を始めとする発注者からの信頼と評価に直結する。DXに前向きという企業イメージも形成され、リクルート面においても有利だ」と、森室長はこれまで実施してきた講習の意義を強調する。
一方で、新たな取り組み課題も見え始めている。
阿比留氏は土木工学の専門家集団でありながら「分野や領域ごとに、知識やノウハウが分断されている」現状を指摘する。社内連携の必要性を指摘する。
森室長は「生成AI(人工知能)普及で業務への取り組みが大きく変わりつつある中、土木技術者としての『素養』が改めて問われていると感じる。ICTだけ、あるいは土木工学だけでも駄目。両者をきちんと理解し、掛け合わせる能力が、これからの建設コンサルタントに必要だ」と考えている。
「何を教えるべきか」を課題に、これからも手を差し伸べ続ける覚悟だ。



