【大深度地下に人工河川】全国初の整備を計画! 大阪の寝屋川流域浸水解消で | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【大深度地下に人工河川】全国初の整備を計画! 大阪の寝屋川流域浸水解消で

 大阪府は、寝屋川流域の内水域の浸水を解消するため、全国初となる大深度地下使用による地下河川整備を計画している。5年以上をかけてさまざまな調査や検討を重ね、ことし2月に国土交通省へ大深度地下の公共的使用に関する特別措置法に基づく使用認可を申請。同時に設計なども進めており、2019年度からいよいよ初弾工事となる城北立坑の築造工事を発注する見通しとなっている。

大深度地下河川整備の概要図

 寝屋川流域は地形的特徴によって水はけが悪く、河川・下水道が一体となって総合治水対策を進めている。その一環として計画されている寝屋川北部地下河川は、上流端を寝屋川市讃良東町、下流端を大阪市都島区中野町とする総延長約14㎞(本線約11㎞、枝線約3㎞)の地下放水路。河川と流域下水道増補幹線から取水し、下流端でポンプによって大川に排水する。
 本線は上流側から門真調節池(径5400mm、延長2900m)、北島調節池(径同、延長1700m)、古川調節池(径7500mm、延長2000m)、鶴見調節池(径9000mm、延長1700m)、都島調節池(径1万1500mm、延長2900m)となり、全線供用までは完成区間を調節池として活用する。

2012年8月局地的豪雨による被害

 現時点では門真、北島、古川調節池が完成しており、鶴見立坑~城北立坑の鶴見調節池と城北立坑~排水機場の都島調節池が事業未着手となっている。
 ただ、この区間は都市計画道路都島茨田線と同北野今市線の地下に整備する計画だが、都島茨田線の一部区間は事業化の見通しが立っておらず、これが大きなネックとなっていた。地下河川事業単独で用地取得するのは現実的に不可能で、このままではいつまで経っても事業が進められない。そこで管渠の深度を変更し、用地取得が不要となる大深度地下を採用することにした。
 大深度地下使用区間は約3.5㎞で、想定事業費は1495億3970万円。全体供用は44年度を予定しており、現在は鶴見調節池詳細設計を日建技術コンサルタント、城北立坑詳細設計を東京建設コンサルタントに委託して進めている。
 19年度に城北立坑築造工事に着手すると仮定して、その後の工事を事業概要書の作業工程に当てはめると、鶴見調節池の発進立坑築造工を19年度から22年度、管路築造工を21年度から25年度、鶴見調節池の到達立坑築造工を24年度から27年度、管路築造工を25年度から30年度、排水機場築造工を29年度から37年度に実施することになる。
 大深度地下使用法は、公共的な事業に限定して通常使用されない大深度地下(地下40m以深)を用地買収なしに使用できることを定めた法律で、対象地域は首都圏、近畿圏、中部圏に限定している。

シールド工法による整備イメージ(大阪府寝屋川市)

 2月に行った府の使用認可申請は、通常4-5カ月程度で認可される場合が多い。申請したのは3区域で、事業区域1(大阪市都島区中野町5~都島本通2)が延長0.3㎞、地下71-86m、同2(城東区野江3、4、成育2、3、関目1、2)が延長1.4㎞、地下69-85m、同3(城東区古市1)が延長0.5㎞、地下65-81m。
 これまで(1)既往資料調査(2)地盤調査(3)想定地層断面図作成(4)支持地盤(支持層)の特定(5)大深度地下の設定--という流れで進めてきておりこの過程では将来、上の地盤に建築物が建てられても管の構造に支障がない耐力を確保すること、地震に対する安全の確保、急勾配区間の管内減勢対策、環境保全などについての検討を重ねてきた。
 管内減勢対策では、鶴見立坑~城北立坑の区間が37分の1の急勾配となること、城北立坑では取水を予定している地上河川から約70mの高度差で地下河川に流入することの懸念があり、下側に階段状の構造物を設ける「階段工」、同じく下側に複数の突起をつける「桟粗度」について模型を使った実験を重ね、桟粗度で十分な減勢ができることを確認している。

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