【関空驚異の復旧】迅速な修復によりほぼ平常運転 完全復活はまだ先 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【関空驚異の復旧】迅速な修復によりほぼ平常運転 完全復活はまだ先

 日本各地で自然災害が相次ぐなかで、にわかに注目を集めた場所のひとつが関西国際空港だ。2017年には年間約2800万人が利用、成田空港と並び文字どおり日本の空の玄関口となった同空港が9月4日、近畿地方を襲った台風21号により甚大な被害を被った。その後14日に第1ターミナルビル(TB1)とA滑走路の運用が再開。1週間後にはターミナルビルが全面再開されるなど驚異の復旧を遂げたものの、完全復活にはまだ至っていない。発災から約1カ月の道程を振り返る。

復旧後、旅行者でにぎわう関空国際線出発フロア


◆排水量は37万m3
 台風21号により神戸港で233cm、大阪港で329cmと第二室戸台風(1961年)を超える過去最高潮位を記録。大阪市内では最大瞬間風速50m以上を観測するなど強風も相まって高潮や高波被害が発生した。なかでも大阪湾の沖合につくられた関西国際空港は1期島を中心に大規模な冠水被害に見舞われた。比較的被害の少なかったTB2とB滑走路を使い国内線は7日から一部再開したものの、国際線の運行は完全にストップした。
 国土交通省近畿地方整備局は5日からポンプ車10台を派遣、排水作業に当たった。7日午後4時までにA滑走路とTB1の浸水をほぼ解消。その後は電源設備が集中するB共同溝地下部分の排水を継続し10日午後2時に作業が完了。排水総量は37万m3にのぼった。
 浸水が最もひどかった国際貨物地区では航空会社が管理する輸入関連上屋の電気・水道インフラがストップ。またTB1でも地下にある電気室6室のうち3室が浸水した。
 台風は空港本体だけでなく、空港アクセスにも大きな被害を与えた。対岸の泉佐野市と同空港を結ぶ連絡橋(長さ3750m)にタンカーが衝突、下り線側の橋桁が損傷した。同橋を管理しているNEXCO西日本は12日から損傷した下り線側橋桁(2径間約190m)の撤去を開始。14日までに作業を完了した。その後、鉄道会社による鉄道桁の修復を経て、当初想定よりも2週間近く早い18日始発からJRと南海の鉄道運行が再開された。

浸水した地下電源設備

整備局による排水作業


◆TB1電源の地上化も
 石井啓一国交相は17日、懸命な復旧作業が続くなか同空港を視察。視察を終え石井国交相は「ビルの地下には電源設備のみならず防災設備、空調設備など必要不可欠な施設が配置されている。被害を最小限に食い止める抜本的対策が必要だ」との認識を示した。
 こうした指摘も踏まえ空港運営者である関西エアポート社は「災害対策タスクフォース」を設置。「護岸」「地下施設」「危機対応」の3課題に分け、問題点の洗い出しを進める。特に「地下施設」のタスクフォースでは浸水により機能不全に陥ったTB1地下の電気設備を地上化することも含め検討する。10月下旬をめどに中間報告をまとめる方針だ。
 10月3日には有識者らで構成する台風21号越波等検証委員会(委員長・平石哲也京大防災研教授)が初会合を開き、今後の復旧や防災対策に関する検討に着手している。

◆連絡橋復旧は来年5月
 発災直後は1カ月以上かかると見られていた復旧作業だったが「2週間で相当機能が回復し、日本の災害に対する強さを世界に示すことができた」。大阪府の松井一郎知事は9月19日の定例記者会見でこう述べ、空港機能の早期回復を高く評価した。
 浸水被害が甚大だった国際貨物地区の医薬品倉庫は10月1日から稼働を再開。機能復旧に手間取っていたTB1南側の旅客手荷物取り扱いシステムも11日時点で完全に回復したとして、関西エアポート社は旅客施設の「本格運用」を宣言した。
 平常運転にほぼ戻った関空だが、空港連絡橋の自動車専用道路はいまも上り線のみの対面通行が続き、復旧時期は現時点で「来年のゴールデンウィークころ」(NEXCO西日本)。完全復旧にはまだ時間がかかる見通しだ。

関空連絡橋の撤去作業

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