【日本の「間」の文化にも感銘】仏・建築家クリスチャン・ド・ポルザンパルク氏が建築を語る | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【日本の「間」の文化にも感銘】仏・建築家クリスチャン・ド・ポルザンパルク氏が建築を語る

 フランスの建築家クリスチャン・ド・ポルザンパルク氏が第30回(2018年度)高松宮殿下記念世界文化賞の建築部門を受賞した。1994年に50歳の若さで同国初のプリツカー賞を受賞するなど、フランスを代表する建築家・都市計画家。大胆なデザインと芸術的アプローチ、水彩画家としての側面を生かした想像力豊かな作風で、とりわけ音楽施設の設計で高い評価を得ている。来日した同氏に、日本との関わり、建築設計に携わる上で必要な心構えなどを聞いた。

1969年エコール・デ・ボザールを卒業し、80年に事務所を設立。代表作は『音楽都市』、福岡市の『ネクサス集合住宅』『LVMHタワー』『フランス大使館』『フィルハーモニー・ルクセンブルク』『芸術都市』『パリ・ラ・デファンス・アリーナ』など。『蘇州文化センター』が進行中。国立の特別高等教育機関「コレージュ・ド・フランス」に2006年に新設された芸術創造講座の教授として、建築を「知の領域」の最先端に引き上げる役割も果たした。44年4月9日カサブランカ(モロッコ)生まれ、74歳

フィルハーモニー・ルクセンブルグ

音楽都市の回廊

--受賞の喜びを
 「これまでさまざまな賞を受賞してきたが、世界文化賞はわたしにとって特別な意味を持っています。デビューして最初のプロジェクトはフランスではなく日本の出版社が紹介してくれました。それ以降、日本に頻繁に足を運んできました。77年以降、日本を代表する建築家の磯崎新氏と親交を持つようになり、日本の“間”の文化に触れて感銘を受け、自分なりに理解しようと努めてきました」
 「また、常に成長を続ける都市として東京の動向に注目してきました。近代的な大通りを古い裏通りが網の目のように包み込む街並みは、欧米にはないものです。そこに新旧含め異なるスタイルの建物が混在していることが、公的空間に親近感をもたらしているのではないでしょうか。日本の都市は、単に美を追求する純粋なデザインではなく、コミュニティーを考えたものだととらえています」
--日本から学んだことはありますか
 「日本にある多くのものを意識して学んできました。この先、重要なことは、都市には一定の密度が必要だということです。サンパウロやメキシコシティーなど都市が拡張することで自然が破壊され、自動車による環境負荷が高まっています。都市の中で農業ができる空間を開放する必要があります。この先、日本の都市の中心部がどのように変遷していくのか、注目していきたいと考えています」
--日本の建築家の印象は
 「日本の建築の素晴らしいところは多様性に富んでいることです。かつて安藤忠雄氏は、わたしの建築をバラエティーに富んでいると評し、自身もそうありたいと紹介してくれました。構造と空間を探求する伊東豊雄氏、スタイルを追求する槇文彦氏、谷口吉生氏のMOMAも時代を超える作品となります。磯崎氏の作品は東洋と西洋の懸け橋として、愛してやまないものが多く、パリのカルティエ美術館で石上純也氏の個展も見ました」
--福岡市で手掛けたネクサスワールドについて
 「磯崎氏のコーディネートで6人の建築家の1人として参加しました。それぞれの建築家が自分らしさを追求し、別々に作業しながら1つのまちをつくり上げていきました。詩に例えると連歌のように、多様性とバリエーションを備えながら、調和するスタイルは、その後の作風をかたちづくるものになりました」
--若い建築家、これから建築を目指す若者にメッセージを
 「1つ目は世界中を旅行することが必要です。いろいろな都市を訪れ、写真を撮ったり、スケッチしてほしいと考えています。2つ目に建築は公的な側面を持つ芸術であり、そこを常に意識し、それに伴う責任を考えてほしいと思います。3つ目は都市や環境問題に対する建築家の責任の重さです。素晴らしいプロジェクトは、それを実現するためのアイデアだけではなく、その建築による影響を念頭に進められたものだと考えています」

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