【YKKAPフォーラム】冬でも暖房いらず 住宅の未来像・高断熱住宅についてパネルディスカッション | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【YKKAPフォーラム】冬でも暖房いらず 住宅の未来像・高断熱住宅についてパネルディスカッション

 断熱性能を高めれば、冬でも暖房なしで快適な住宅は実現可能か。4日、東京国際フォーラムでYKKAPが主催した「APWフォーラム&プレゼンテーション2019」で、前真之東大大学院工学研究科建築学准教授と坂本雄三日本建築センター顧問が、高断熱住宅について講演とパネルディスカッションを行った。その中で前准教授は「冬でも暖房のいらない高断熱住宅」など、設備の組み合わせで快適・低コストを実現する住宅の未来像をを示した。
 前准教授は「天井の断熱材を厚くし、壁にダブル断熱を採用して、高断熱窓(U値1.6)を採用すれば、窓面積を30㎡と大きくしてもHEAT20のG2等級(外皮平均熱貫流率0.28-0.46)を満たす高断熱住宅を実現できる」との前提を挙げ「大開口窓と高断熱を両立すると、太陽光から受け取る熱が大きくなり、冬場でも暖房なしで外気温に対し室温が摂氏10.6度ほど高くなる」と、大開口窓と高断熱の両立による、暖房なしでも冬を快適に過ごせる住宅のモデルを示した。
 加えて前准教授は「冬は太陽光発電量が少ない一方、暖房で電力消費量が増えるので、現状は太陽光発電設備を備えた住宅であっても買電しなければならない状態だ。冬に暖房を使わずに済むことで、この電力需給ギャップを埋めて、発電所への電力依存を少なくすることができる」と単なる節電・ランニングコスト低減以上のメリットがあると語った。
 それに対して坂本氏は「住宅の断熱性を高めるとともに、住宅内をまんべんなく暖めたり冷やしたりすることが、快適性向上・ヒートショック防止のためには必要だ」と住宅内での温度ギャップをなくす必要性を説いた。その手段としてYUCACOシステムによる全館空調化を挙げた。
 同システムは、高断熱・高気密住宅、高効率な壁掛けエアコン、高効率の小型ファンを組み合わせて、工務店でも設計・施工可能でありながら、初期コスト100万円、1年あたりの運転コスト5万円程度と安価な全館空調システムとして開発された。
 坂本氏は「過去にも住宅用の全館空調はあったが、住宅の断熱性能が不十分で戸内に温度ムラができてしまい、コストも高く普及しなかった。しかし住宅の断熱化、エアコンやファンの高効率化が進んだいま、全館空調は合理的な選択肢になった」とまとめた。
 再び前教授は「消費者が住宅に求めているのは、快適・健康的で電気代が安くなるパッケージである」として、設備を組み合わせて快適な生活を提案する重要性を指摘し、坂本氏も賛同した。

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