【北海道新幹線】新函館北斗~札幌延伸 着々と進むトンネル工事3件の取り組みに迫る | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【北海道新幹線】新函館北斗~札幌延伸 着々と進むトンネル工事3件の取り組みに迫る

 北海道新幹線は、青森市から札幌市を結ぶ路線として計画された整備新幹線。2016年3月には、新青森駅~新函館北斗駅間約149㎞が開業し、現在、新函館北斗駅~札幌駅間の約211㎞で延伸工事が進められている。鉄建建設はこのうち、「北海道新幹線、渡島トンネル(天狗)他工事」など3件のトンネル工事に携わり、工期内完成を目指して着実に施工を進めている。各現場の取り組みを取材した。

渡島トンネル(天狗)他/自社開発機材で効率施工

 北海道新幹線延伸工事は、総延長約211㎞のうち76%がトンネルとなっている。渡島トンネルはその中で最も長く、総延長は3万2675mと完成すれば陸上の山岳トンネルとしては日本最長となる予定だ。
 鉄建建設・アイサワ工業・西江建設・北土建設JVが北斗市内で施工する「北海道新幹線、渡島トンネル(天狗)他」は、同トンネルのうち4600mと、本坑施工のための斜坑1067.8mを構築する。
 工事は、鉄建建設が開発した急速施工用インバート桟橋の初適用現場であることが特長の1つ。機材は、コンクリート打設区間に架かる作業ステージや分割型斜路によってインバートコンクリートの打設中やインバート掘削中も残土搬出などの車両の通行を確保することが可能で、昼間のコンクリート打設と夜間の底盤掘削のサイクルを毎日実施可能とすることでインバートコンクリートの急速化を実現できる。生産性向上に寄与し、由布壮一郎所長は「横移動式の桟橋よりも使い勝手が良く、作業性が向上している」と評価する。

現場初適用の急速施工用インバート桟橋

 一方、由布所長は苦労した点として、濁水処理を挙げる。当初は1時間当たり150tの水を処理できる濁水プラントを1機設置していたが、斜坑掘削時点で湧水量が初期想定よりも増加。湧水量が処理能力を超えると工事を進めることができないため、定期的に1時間当たり200tを処理できる濁水プラントを増設し、現在は計4台を設置している。「設備の増設で1、2カ月は工期に影響した」と説明する。
 由布所長は、九州新幹線で2本のトンネル工事を経験している。北海道での工事は初体験で、「これまで経験してきた九州の現場と北海道では現場の管理の仕方が違う」と指摘、屋外に置いてあったものが雪で隠れる、凍結するということに当初は戸惑ったと振り返る。これまで九州を中心に活躍してきたが、藤森伸一副社長は「ベテランの技術力を買って赴任してもらった」と語る。

由布所長

 10月20日時点での進捗率は40.7%。由布所長は「一生に1度経験できるかどうかという長大トンネルの現場を任せてもらっている。事故なく早期の完成を目指していきたい」と意気込みを語る。また、現場は50代の下は20代と若い職員が多いことから、休日確保とともに「技術の継承も進めていきたい」と強調した。

内浦トンネル(東川)/安全祈願終え工事本格化

 「北海道新幹線、内浦トンネル(東川)」は、長万部町、黒松内町、蘭越町の3町を通る全長1万5560mの内浦トンネルのうち、5000mと工事用の斜坑1005mを施工する工事だ。東川工区は同トンネル3工区に分割した中央部分で、鉄建建設・TUCHIYA・西江建設・アラタ工業JVが担当している。
 斜坑と本坑の交差部は、本坑のほぼ中央部に位置し、ここから終点の札幌方へ2850m掘削し、その後起点の青森方へ2150mの掘削を実施する。掘削した土砂の運搬は、札幌方は連続ベルトコンベヤー方式、青森方はタイヤ方式(ダンプ)とそれぞれの距離にあわせ、コスト面を考慮し適した方式を採用する予定だ。

掘削を開始したばかりの内浦トンネル斜坑

 斜坑の坑口から本坑までの高低差は77mあり、平均で7.7%の急勾配となっている。斜坑を現在の位置に設定した理由は土地取得の都合に起因するが、須志田藤雄所長は「掘削中に水が出るなどで工期に遅れが生じた場合、両方向に掘り進めることで挽回することもできる」とメリットにも言及した。

須志田所長

 工期は18年10月10日から25年4月9日の79カ月。ことし9月26日に安全祈願を実施し、10月28日時点では斜坑を20m掘り進めた段階で、まさに工事が本格開始したところだ。

昆布トンネル(桂台)他/掘削土の仮置き場設置し効率化

 鉄建建設・アイサワ工業・福津組・西江建設JVがニセコ町で施工を進める「北海道新幹線、昆布トンネル(桂台)他」は、掘削作業が終盤を迎えている。
 全長1万0410mの昆布トンネルのうち、青森方から4800mを施工する工事で、10月末の時点で約4400mの掘削を完了している。掘削方式は上半を50m程度先に進めるショートベンチカット工法で、機械で掘削し連続ベルトコンベヤーシステムで坑口まで掘削土を運搬している。
 1日に掘り進められる距離は6~7m程度。概ね順調に進捗しているが、吉田学所長は「途中、約2000m掘り進めたところで湧水が多く3カ月程度作業が止まった時もあった。長いトンネルなので、地表からの地質調査も精度良く実施することが難しく、100m掘り進めるごとに先進ボーリングをしながら地山の状況を確認して慎重に掘削しているが、それでも捉えきれない大量湧水もある」と自然と向き合う慎重さと苦労を振り返る。
 搬出した掘削土の受け入れ地は、坑口から約8000m離れた蘭越町内の元牧場となっている。土地選定はスムーズに進んだものの、近隣で複数の工事が進んでいることから車両の確保がままならず、坑内から搬出される掘削土に対して土捨て場までの運搬が追いつかない場面や、さらに冬季は積雪による通行止めが生じることで土捨て場までの運搬ができず、工事が止まってしまうこともあった。そこで、坑口付近に仮置き場を設置し、土捨て場への運搬が困難な場面でも掘削を続けることができるようにしている。

昆布トンネル残土仮置き場

 工期は13年12月13日から22年3月12日まで。
 吉田所長は「無事故・無災害で完成させることが最大の目標。あとは良いものをつくって発注者に納め、少しでも利益を上げて会社に貢献したい」と抱負を語った。

吉田所長