【北陸新幹線】金沢~敦賀間延伸工事 「安全」「地域」「環境」に配慮して完成へと前進 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【北陸新幹線】金沢~敦賀間延伸工事 「安全」「地域」「環境」に配慮して完成へと前進

 北陸新幹線は整備新幹線5路線の1つで、東京~大阪間を上信越・北陸地方を経由して結ぶ新幹線として計画されている。2015年3月に開業した東京~金沢間から先の金沢~敦賀間114.4㎞では、石川、福井の両県内で着々と延伸工事が進行中だ。鉄建建設ではそのうちの約8%に当たる、5現場約10㎞の施工に携わっている。林康雄会長の現地視察に同行し、各現場の取り組みを取材した。
 石川県小松市では、2つの現場で新幹線高架工事を進めている。同社が担当する工区の中で最も金沢寄りに位置する「北陸新幹線、梯川橋りょう他」工事は、長さ2912mと金沢~敦賀間延伸工事のなかで最も長い区間となっている。施工は鉄建建設・りんかい日産建設・北都建設・高田組JVが担当し、工期は16年9月から20年6月まで。主要構造物にT桁橋を支える58基のRC橋脚、24面のラーメン高架橋、梯川をまたぐ2径間連続PC箱桁橋などがある。9月20日時点で進捗率は48.6%となっている。
 また、場所打ち杭は673本にもおよび、深さ50mまで施工した。総延長で約30㎞にもなる。木塲康幸所長は「杭はトラブルが生じやすい。ここまでトラブルはなく進めているが、このまま生じないよう気をつけていきたい」と語る。

木塲所長

 事故防止の取り組みでは、視覚言語を重視して安全看板を漫画形式で作成し、現地の金沢弁の台詞(せりふ)を付けて従業員の心に訴えるものにしている。新規入場者教育ではオリジナルビデオを使い、地元観光名所CMなどを映像内に盛り込むことで映像への注意を継続させる工夫をしている。

梯川の視覚言語に訴える安全看板

 工事用道路などの借地確保を担当した鈴木大介副所長の奔走も見逃せない。10町域143人の関係者に当たり、総契約面積約11万8000㎡、実に東京ドームグラウンド約9倍の面積を確保した。
 市街地に隣接する個所が含まれるため、周辺への影響を抑えることも課題となっている。新幹線用地からわずか10㎝の位置に稼働中の企業建物がある。ここでは隣接建物に土や汚れが付着しないよう高さ10.3m、幅50mの建枠を利用した堅固な巨大飛散防止ネットを設置して隣接建物を丸ごと養生することで、現在まで大きな汚れが生じることなく工事を進めている。また、ICT技術も積極的に活用しており、クレーンなどの用地侵入をレーザー式検知システムで監視する。

梯川橋りょう他工事作業所の木塲所長から説明を受ける林会長(手前)

 加賀三湖の1つである木場潟に面した区間を含む長さ2289mを施工する「北陸新幹線、小松木場潟(北)高架橋」工事では、工区の一部が軟弱地盤であることから鋼管杭271本のうち118本を斜杭として、桁方向に対して直角に、斜角4度で施工している。鉄道工事への斜杭の採用は、今回の北陸新幹線延伸事業が全国初めて。施工は鉄建建設・TSUCHIYA・向出組JVが担当し、工期は17年2月から21年1月を予定。9月末時点の進捗率は36.5%となっている。

斜度4度で 斜杭を施工

 同工事も市街地に隣接する個所があるため周辺への配慮は必須だ。上野宏史所長は、町中での施工について「シートパイルを打つ際に油圧のパイラーで打設することで音や振動を抑えている。また、ポンプなどは24時間動かしておかなければならないため、音の出る発電機は極力使わず電源を引いてくるようにしている」と語る。加えて、「地域の理解がなければ工事を前に進めることはできない」と述べ、地域住民とのコミュニケーションを重視。側溝清掃や夏祭りなど地域行事への積極的な参加、仮囲いに近隣の幼稚園児が描いた絵や配置技術者の似顔絵の掲示などの取り組みで「地元を愛し地元に愛される現場」を目指している。

上野所長


 福井市の「北陸新幹線、九頭竜川橋りょう他」工事では、全国初の新幹線・自動車道併用による下部工一体構造の九頭竜川橋梁を施工している。工事長さは1495mで、橋梁414mと高架橋区間1081mで構成。工期は15年3月から20年3月まで。施工は鉄建建設・安部日鋼工業・清水組JVが担当している。
 橋梁施工個所の周辺は「アラレガコ(カジカの一種)生息地」として国の天然記念物に指定されているため自然環境の保護には最大限の注意が必要となっている。そのため、流水部では瀬替えをせずに仮橋と架設構台を設置して工事を進めている。
 また、河川内の工事は毎年10月16日から6月15日までの非出水期間しか施工できないため、これらの設備は出水期が訪れるたびに撤去する必要がある。非出水期であっても放流のサイレンが鳴ると工事車両を退避させることになり、2、3日は作業を進めることができなくなってしまうなど障害は多い。そうした中でも着実に工事を進め、10月20日時点の進捗率は82.2%となっている。

非出水期が訪れ河川内作業が再開


 上部工の施工は張り出し架設工法を採用しており、平田惣一所長は「張り出し架設工法は上げ越し管理が重要だ。下期には橋梁がつながることになるが、管理をしっかりして所定の線形でつなげたい」と意気込みを語った。

平田所長


 福井県越前市の「北陸新幹線、武生トンネル他工事」では、長さ2470mのトンネル工を含む2560mを施工している。施工は鉄建建設・五洋建設・田中建設JVで、工期は15年3月から20年12月まで。全体の進捗率は9月末時点で50.5%となっている。

武生トンネルの掘削は約5分の3まで進行


 トンネルは標高794.5mの日野山の北西に張り出した尾根を横断する形で計画されており、NATMで金沢方から敦賀方に向けて片押し施工中。地山の堅さに応じ、発破と機械掘削を使い分けている。
 入り口付近は柔らかい強風化花崗岩で形成されているため難しい個所だったと唐戸裕二所長は振り返る。トンネルは越前市の上水の3分の1を担う配水タンクから約18mの位置を通り、また出口の敦賀方では北陸自動車道に隣接するため、それらが沈下しないように施工する点が難関だと唐戸所長は指摘する。「足かけ3年かけて1500mを掘り進んだ。これまで無事故で工事を進めており、まもなく30万時間を突破する。残りの900mも引き続き無事故で工事を進めたい」と気を引き締める。

唐戸所長


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 4現場を回り視察を終えた林会長は、「当社として最重要項目と位置づけている安全第一については、ほぼいままで大きな事故なく進められている。今回視察に来てみて、それぞれ作業所単位でのさまざまな取り組みが感じられた。厳しい工期の中だが全力を尽くしてほしい」と評価した。

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