【熊本居住したまま復旧】鉄建建設JVが熊本県・秋津団地で杭の破損補修など実施 | 建設通信新聞Digital

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【熊本居住したまま復旧】鉄建建設JVが熊本県・秋津団地で杭の破損補修など実施


最も大きな被害を受けジャッキアップを実施した棟


 2016年4月14日に発生した熊本地震は、震源の熊本県益城町や熊本市を中心に大きな被害を与えた。2年以上経過した現在でも、震災の爪痕は各所で目にすることができる。震源に近い熊本市の秋津団地では、道路の隆起に加えて建物の傾斜や沈下などの被害を受けた。鉄建建設を中心としたJVは、建物の傾斜や沈下の原因である杭の破損を補修するため、アンダーピニング工法を採用した工事を進めている。
 秋津団地は1985年から88年にかけて建設された市営の共同住宅。全12棟のうち7棟で熊本地震による杭の損傷を確認し、補修工事を進めている。施工は鉄建建設・三ツ矢建設・熊本利水工業・六香建設JVが担当している。
 工事中の7棟のうち、特に損傷が著しい1棟では建物が140mm沈下し80分の1の傾斜が生じている。100分の1以上の傾斜は三半規管に影響し吐き気などの健康被害があるため、この棟の住民は退去している。残りの6棟は住人が居住したままで補修工事を進めており、ここが工事の大きな特徴となっている。鉄建JV秋津作業所の伊藤健司所長は、「住民第一の工事だ。コミュニケーションを怠ると大事になる」と強調する。
 工事による騒音や振動、大型車両の出入りによる交通災害など留意すべきことは数多い。「ただ、管理組合の会長を筆頭に、住民は工事に理解を示してくれている。熊本市も頻繁に集会を実施するなど、円滑な工事の手助けをしてくれている」と伊藤所長は感謝する。

破損した杭と杭の間にジャッキで仮受け鋼管を圧入していく


 アンダーピニング工法は、既設構造物の基礎を補強する工法。建物の基礎下に鋼管を設置し建物荷重を反力にして油圧ジャッキで鋼管を杭の支持層まで圧入することで、建物の沈下・傾きを水平にする。
 アンダーピニング工法による復旧工事では、まず切梁で建物を支えながら建物基礎の下を掘削する。切梁の本来の役割は周りの土が崩れないようするものだが、この工事では地震発生時に揺れを止める役割を担っている。取材当日(7月25日)も最大震度4の熊本を震源とする地震が発生しているが、「建物の傾斜・沈下に異常なしと確認している」と伊藤所長は語る。
 続いて、基礎の下へ仮受け鋼管をジャッキで圧入し、仮受け鋼管の上にサポートジャッキを設置して折れた杭の代わりに建物を支える。
 その後、既設杭の健全性を打撃試験で確認し、損傷部分を解体・撤去し整形する。そこにモルタルを充てんして補強鋼管と上部鋼管を設置し、上部鋼管の上にサポートジャッキを設ける。杭の補修はここまでの工程で完了し、ジャッキアップが不要な建物は基礎コンクリートを打設してから埋め戻して完成となる。
 傾斜が大きくジャッキアップを必要とする建物では上部鋼管の上にサポートジャッキを設けた後、基礎配筋を施工して1次定着コンクリートを打設し、サポートジャッキ内に油圧ジャッキを設置して建物をジャッキアップした後、2次定着コンクリートを打設する。
 1棟当たりの工期は約8カ月、全体の工期は17年9月から19年3月までを予定している。7月末時点の進捗率は約55%。

伊藤作業所長


 伊藤所長が震災復興のための工事に従事するのは阪神・淡路大震災に続いて2度目。当時はJR西日本の駅やビルの復旧工事などに携わった。「災害復興のような社会貢献になる仕事に携わることができることは、鉄建建設に入社して良かったと思っている」と震災復興に対する思いを語る。竣工に向けては「声を出して、元気にスマートに終わらせたい」と意気込みを示す。「活気のない現場はうまくいっていない現場。雑談ができるような現場が良い現場だ」と断言し、作業員との積極的なコミュニケーションに努めている。