【第1回インフラテクコン】最優秀賞は橋梁点検に"気付けば参加"してしまうスマホゲーム!? | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【第1回インフラテクコン】最優秀賞は橋梁点検に”気付けば参加”してしまうスマホゲーム!?

 高等専門学校生を対象とした「第1回インフラマネジメントテクノロジーコンテスト(インフラテクコン)」の最優秀賞に、チーム名・わくわくピーナッツ(徳山工業高等専門学校、山口県周南市)の「ICT+スマホゲームによる気付けばインフラメンテ依存症!?」が輝いた。橋梁の点検作業をスマートフォン用のゲームとすることで、“気付けば参加”してしまう自然な市民協働を促しつつ、健全度を診断する能力の養成と維持管理費用の創出などを両立させる。若い感性による着想と柔軟かつ斬新なアイデアが高い評価を得た。

 インフラテクコンは、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)インフラマネジメント研究部会のメンバーなどで構成する「インフラマネジメントテクノロジーコンテスト実行委員会」が主催した。

 わくわくピーナッツは同コンテストの協働促進部門に応募した。広報、合意形成、住民参加の3つをテーマとした。チームは稲田透直さん(リーダー)、梅木遼大さん、中村央延さん、谷口敦哉さん、川邊颯大さん、山根秀太さんの6人で構成。コンテスト用提案の制作作業は、コロナ禍に伴うカリキュラムの遅れで生じたたくさんの課題や定期試験と重なったが、未来の社会インフラを案じる思いを形にするため、意を決して挑戦を始めた。

わくわくピーナッツ(徳山高専)のメンバー


 一方、進級もおろそかにはできない学生の本分であることから、指導教員の海田辰将教授に「テクコンやりたいです! 賞をとったら単位下さい!」と打算的(!?)に懇願したものの、「ごめん、そういうのはシラバス(授業計画)にないから…」と丁重に断られた。ただ、海田教授は彼らの積極的な姿勢をくみ取り、コンテストと学業の両方をサポートした。

 チーム全員が不退転の覚悟の中、提案の柱に「インフラメンテナンスの第1歩は『いつもと違う何か』に気付くこと」を据えた。社会インフラの維持管理では、施設管理者の人手・予算不足、担い手である地域のコンサルタント、建設企業の技術者減少のほか、専門的な知識が求められるにもかかわらず、利益を確保しづらいことなどが課題となっている。

 解決策として、AI(人工知能)やビッグデータ、XR、5G(第5世代移動通信システム)などによるICTの活用が挙がる。マンパワー拡充の観点で地域住民の参加が全国に広がりつつあるなか、「土木に縁もゆかりもない人たちが、休日などの大切な時間を削ってまで橋の点検、報告などの『技術的な行為』を行うことは非現実的」との見解に達し、それを実現するツールとして橋梁点検のスマホゲームという発想にたどり着いた。

 具体的には、「インフラとるとる」をタイトルとするゲームアプリを想定。スマホで撮影した橋梁の全体写真をAIの画像認識で解析し、構造形式などに基づいてキャラクター化するとともに、初期ステータス(攻撃力、防御力、スピード、体力、魔法など)を決定する。点検調書のような橋梁写真はステータスが高めに設定される。

インフラとるとるポスター


 さらに、橋梁の損傷個所を撮影すると、AIがその種類や程度を判断し、強化アイテムやスキン(キャラクターの着せ替え機能)が獲得でき、全国のプレーヤーとのバトルを有利に進められる。

 このスマホゲームはAIによるハイテクと住民参加のローテクを組み合わせ、橋梁点検に「気付けば参加している」ことを重視する。社会インフラは「大切なもの」という基礎的要素に「楽しいもの」を加え、“インフラで遊ぶ”という新感覚を通じて関心と愛着を醸成し、施設利用者のユーザー意識高揚と理解を促進する。

 ゲーム参加者の見る目が養われるにつれ、インフラメンテナンスの推進と人手・予算不足の解消につながる。蓄積された写真データは、維持管理体制の前提となるPDCAサイクルの構築に寄与するほか、民間企業や研究機関の新技術・製品開発にかかるリソース利用が見込まれる。

 他のプレーヤーと差別化する上で不可欠な課金制度を設定。その収益の一部は地方自治体などがインフラメンテナンスを実施するための財源に充てる。

 また、ゲームアプリの特徴と言えるアップデート、新バーションによって、インフラとるとるは橋梁だけでなく、目視可能なインフラであれば適用できるようになる。

 「イマ、助けを求めている橋がいる…」「仲間を集めて、橋を救う物語に飛び込もう」「キミも壮大な物語の主人公にならないか?」との誘い文句は、インフラメンテナンス、ゲーム市場双方の無限の可能性を指し示している。

 わくわくピーナッツの稲田リーダーは今回の受賞に合わせ、「最優秀賞の知らせを聞いたとき、『やってよかった!』と思ったのが1番です。本コンテストは1回目ということで何をやればいいのか手探りでしたが、試行錯誤を繰り返す中でみんなに親しみやすい「ゲーム」という案にたどり着きました。男子チームなので、そこから先は気合と根性で作品をまとめましたが、コンペを楽しみすぎたせいか、いくつかの単位を犠牲にしてしまいました。再試験がんばります!」とのコメントを寄せている。



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