【箱根駅伝支える地域建設企業 難所の通行を守る「闘い」】三和建設の石川忠之社長に聞く | 建設通信新聞Digital

5月19日 日曜日

公式ブログ

【箱根駅伝支える地域建設企業 難所の通行を守る「闘い」】三和建設の石川忠之社長に聞く

 箱根駅伝は、ことしも数多くのドラマを生み出した。この大会を陰で支えている地域建設企業がある。神奈川県箱根町に本社を置く三和建設だ。神奈川県からの道路維持管理業務の受託者として、最大の難所、往路5区・復路6区を含むエリアを長年にわたり担当してきた。選手にとっては晴れ舞台だが、地域を守る取り組みにスポットライトが当たることは少ない。石川忠之社長が「闘いに行く」と表現する仕事への思いなどを聞いた。

社員とともに(前列右から5人目が石川社長)


 同社の設立は1952年。往路ゴール地点となる芦ノ湖のそばに本社を構える地域を代表する建設企業の1社だ。維持管理業務を担当する国道1号は、日本有数の観光地・箱根を支えるだけでなく、神奈川県と静岡県を結ぶ重要な幹線道路でもある。そして駅伝コースの中で最も標高が高い場所になる。

 同社の冬の朝は特に早い。午前3時過ぎから準備を始め、4時から約1時間かけて延長約30㎞、往復約60㎞の道路をパトロールする。その日ごとに変化する天気や路面状況を目視などで確認する。
 凍結防止剤を散布する場合は午前7時台に全ての作業を終えるが、降雪や積雪の場合は除雪の体制を構築することになる。雪の状況にもよるが現場を担当する約20人の社員が総出となり、数日かけて対応することもあるという。24時間体制で実施するこうした仕事はまさに『闘い』だ。

 さらに箱根エリア特有の事情が業務を難しくする。比較的温暖な湘南や相模湾エリアから箱根に入ると急激な天候の変化に見舞われることがある。観光地でもあり、「地元住民以外の雪慣れしていない人が多い。作業が遅れるとスタック車が増え、事故が多発する可能性もある。いち早く対応することが重要だ」

 このため、県などと連携しながら除雪の手順などを決める初動活動が重要になるという。その後の作業にも多大な影響を及ぼすため、スピード感が求められるとともに緊張感も強いられる。だが、培った経験や地域の状況に精通する建設企業の強みを生かし、迅速な対応を実現している。

 こうした維持管理業務を担う中で毎年、箱根駅伝が開催される。通常の道路補修はもちろんのこと、凍結防止剤の散布のタイミングなどを見計らうなどランナーが走りやすい環境整備に注力しており、「選手に事故が起きないよう万全を期している」と力を込める。当日は会社敷地の一部を無償で運営用に貸し出すなど大会を側面からも支援している。

 「子どもの頃からこうした風景は当たり前だった」と話す。自身が29歳の時に父親が他界した。その翌日に自社が担当するエリアで台風被害が発生した。「災害対応が社長としての初めての業務になった」と振り返る。
 維持管理業務は、誰もがやりたがる仕事ではないという。だが、「県の職員など意識の高い人との出会いがあり、続けてこられた」と笑顔を見せる。人との出会いと、地域を守る取り組みの積み重ねが「社員の仕事へのプロ意識を高め、会社の雰囲気を良くしている」と語る。
 除雪機にはメルセデス・ベンツブランドの『ウニモグ』を使っている。「会社の看板になる。社員が仕事に誇りを持つきっかけにもなる」ことが導入の理由だ。

「ウニモグ」を使って除雪


 ともに現場で奮闘する社員に対しては「感謝しかない」と思いを語る。「信頼関係がないと続かない。チームワークを大事に、これからも闘える環境を整えていきたい」と気を引き締める。
 来年、箱根駅伝は100回目の大会を迎える。 積み重ねた大会の歴史の陰には常に地域の建設企業の奮闘があった。 それは、これからも続く。



【公式ブログ】ほかの記事はこちらから


建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら



関連記事

関連記事は存在しません