【i-Con2023③】浜松町駅ホーム拡幅工事 JR東日本と鉄建建設 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【i-Con2023③】浜松町駅ホーム拡幅工事 JR東日本と鉄建建設

リアルタイム点群計測を桁移動の進捗管理に試行 遠隔地で正確な情報共有

 JR東日本東京建設プロジェクトマネジメントオフィスと鉄建建設は、3次元レーザースキャナで計測しながら点群データを生成するリアルタイム計測技術の試行を行った。2022年5月21日~23日に実施した浜松町駅の京浜東北線南行(大船方面)ホーム拡幅に伴う線路切換工事で初試行し、ジャッキで移動する鉄道橋の桁をリアルタイム計測して点群データを生成。実際の桁の動きを3次元空間上に再現し、BIMモデルと照合して基準値内の設置精度を持つことをリアルタイムで確認した。遠隔地の関係者も桁の設置精度を同時に確認し情報共有の円滑化に貢献した。

 浜松町駅は、同駅西口開発計画や芝浦プロジェクトなど周辺の大規模再開発に伴う利用者の増加が予想され、混雑緩和のために京浜東北線南行ホームを最大3.6m拡幅する。拡幅に合わせて移設する京浜東北線南行の約442mのうち、北口の大門通りをまたぐ鉄道橋では、約30mの既設桁を東海道線側に5.6m移設し、拡幅後もそのまま使う計画とした。

計測位置。移設する桁の山側と海側に3次元レーザースキャナを設置して計測した


 移設工事は、6回のジャッキストロークで桁を横移動させ、最後に0.98度回転させて固定する。回転が加わる分、通常の移設工事に比べて精度管理の難易度が高まるのが特徴だ。そのため、移設する桁を再現した実物大の試験施工などとあわせ、駅周辺の施工エリアを再現したBIMモデルを作成し、事前に支障物の把握や施工シミュレーションを行ったほか、ジャッキで桁を移動する動画の作成、BIMモデルと工程連携による切換工事全体の4D管理などに取り組んだ。

 従来の桁移設では、桁が適切な位置や角度に移動するまでトランシットを見続けて確認する作業や、測量用スタッフを使って高さを確認するなど手作業が多い。アナログ的な作業に替わる効率的な手法を検討するため、施工者の鉄建建設とクモノスコーポレーション(大阪府箕面市)が共同開発したリアルタイム計測を試行した。切換工事を所管する永井辰樹東京建設プロジェクトマネジメントオフィス東京工事区副長は「通行止めなどが伴う移設工事は限られた時間内で工事を進める必要があり、測量時間などを短縮するメリットは大きい」と説明する。

色分けして設置精度を確認

 リアルタイム計測は、計測時に公共座標を持つ点群を即座に生成できるクモノスコーポレーションの3次元レーザースキャナ(開発中)を活用し、移動する対象の点群を動画のように連続して生成するのが特徴。具体的には海側と山側に桁を計測するためのレーザースキャナを設置し、双方に座標既知点である基準点を三つずつ設け、対象構造物の公共座標を持つ点群を生成する。その点群と差分解析用に準備した各ステップ移動完了時のBIMモデルを同じ3次元空間に表示し、移設する桁がBIMモデルと正確に重なれば所定の位置にあることを確認できる。その際、桁が規定の許容値に近づくに従い赤、黄、許容値内になったら緑と表示し、設置精度をひと目で確認できるようにした。

リアルタイム差分解析のイメージ


 さらにJR東日本と鉄建建設がそれぞれ設置する対策本部でもビューアを通じて遠隔地から点群の動きをリアルタイムで確認できるようにした。これまでも通信カメラなどを通じて対策本部で工事を確認していたが、現場はアナログ作業で設置精度を測定し、監督社員が作業員から数値を確認した上で無線機による報告を都度行っていた。ビューアを活用することで、対策本部も色の変化を見ながら状況をひと目で把握でき、情報共有の精度と効率が格段に向上した。永井副長は「工事の状況を本部でもリアルタイムに把握でき、 本部とのやり取りが減るなど、現場監理に集中できた」と手応えを語る。

 移設後には、従来のアナログ計測とリアルタイム計測の二つを同時に行い、設置精度を確認し、基準値内にあることを確認した。現場を指揮した小松章良鉄建建設浜松町駅作業所長は「従来手法で測定したデータとリアルタイム計測で測定したデータに差異がないことを確認した。手法が確立されれば遠隔地から精度を判断できるため、業務効率化が期待できる」と語る。

対策本部でもリアルタイムで確認した


 三瓶晃弘鉄建建設i-Con推進部課長は、「今回は山側と海側の2方向から計測し、点群と桁ウェブ面の差分を把握したが、将来的には3次元的な管理も目指したい」と方針を示した。井口重信東京建設プロジェクトマネジメントオフィス企画戦略ユニットマネージャーは「本技術は3次元的に複雑な形状や位置の把握が必要な工事に威力を発揮する。人が行きにくく、支障物が多くあるような桁架設工事などへの適用も検討したい」とさらなる展開を見据える。



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