ONESTRUCTION(鳥取市)が、日本における「オープンBIM」の社会実装に向けて存在感を増している。国際組織ビルディング・スマート・インターナショナル(bSI)が提唱するオープンBIMに準拠した建設ワークフロー最適化ツール『OpenAEC』の海外版を今年2月、日本語版を9月にリリースした。西岡大穂代表取締役CEOは「建設とテクノロジーの架け橋として日本のオープンBIMを先導していきたい」と強調する。

西岡CEO
国土交通省のBIM/CIM原則適用を背景に、工事発注時の積算に用いる情報モデルに中間フォーマットのIFCデータなどを使うオープンBIMの導入検討が進むほか、建築分野でもIFCによるBIM確認申請を準備中。宮内芳維取締役CTOは「日本でオープンBIMが徐々に広がり始める中で最適なルールを決める制度設計の立場からも活動してきたい」と考え、bSI日本支部のビルディングスマートジャパン(bSJ)に加盟し、自身はIFC利用支援小委員会の委員長も務めている。
同社の事業は多岐にわたる。BIMのモデル作成や導入支援に加え、オープンBIMコンサルティングにも取り組む。西松建設と共同でジェネレーティブデザインを活用し、トンネル工事の仮設設備配置を効率化するシステムを開発したように、企業の開発パートナーとして参加するプロジェクトも進行中だ。
経営理念に掲げる「建設とテクノロジーの架け橋」を実現する上で、西岡氏がもっとも大切にしているのは「価値観の共有」だ。新たなテクノロジーを導入する際、その企業の礎をリスペクトし、それに見合った最適な枠組みを融合する。「一度、仕事をした企業からは継続して仕事がもらえている」と明かすように、価値観の共有が次への原動力になっている。オープンBIMの社会実装に向けて「仲間を増やしていきたい」と強調する。
海外版に続き日本語版も投入したOpenAECはオープンBIMを試行する大手・準大手クラスのゼネコンや建設コンサルタントに加え、建築系大学などが導入を決めるなど、順調なスタートを切った。技術的な側面も評価され、bSIが主催する「openBIM Awards2024」のテクノロジー部門で応募800社の中から日本企業として初のファイナリストに選ばれる快挙を成し遂げた。

OpenAEC日本語版も投入

宮内CTO
BIM/CIM原則化を背景に、先行する大手企業だけでなく、中小規模の企業にも広くBIM/CIMデータの活用ニーズが高まりつつある。企業規模にかかわらず広く普及させることが求められる中で、両氏は「OpenAECで得のあるデータ活用を進めてほしい」と口をそろえる。
海外では一般化するオープンBIMの流れだが、日本ではまだ大手を中心に一部の企業が推進しているのが現状だ。西岡氏は「OpenAECの成功事例を積極的に発信し、われわれが日本でオープンBIMを啓蒙する架け橋になっていく」と力を込める。
現在30人を超える体制の同社には土木、建築、設備などさまざまな分野で活躍したスペシャリストが集まる。米国オートデスク社とオープンBIMの普及に向けた戦略的提携(MOU)を日本のスタートアップ企業として初めて結ぶなど、既に海外から高い評価と期待を受けている。建設とテクノロジーをつなぐ「課題解決型の新たなソフトベンダー」として急速な成長を遂げようとしている。