福山コンサルタントのBIM/CIM推進チームには、本支店からの技術者8人に加え、各グループから選抜されたCADオペレーター7人も参加した。同社は2022年7月のチーム発足時からCADオペレーターの育成を活動方針の一つに掲げてきた。チームリーダーを務めるインフラマネジメント事業部東京第2グループの栗山尚人係長が「最初から3次元に対応できた人材もいた」と振り返るように、当初からCADオペレーターがBIM/CIMの先導役として力を発揮してきた。
その1人、紫はるみさんはオートデスクの情報サイト『BIM design』に収録されている動画教材を使って以前から独学でBIM/CIM関連ツールを習得してきた。社内研修用テキストも自作し、先生役として取り組んでいる。「AutoCADの3次元機能をマスターするところから取り組み、徐々に他のBIM/CIMツールにも挑戦していくことで無理なく学んでいける」とアドバイスしている。
渡邊加奈子さんも同社のBIM/CIMを支えるCADオペレーターの1人だ。活用するオートデスクのBIM/CIMソフトは複数あり、モデリングに際して道路構造令などの技術的な知識も求められるだけに「BIM/CIMにチャレンジするようになって常に学ばないといけないという意識が芽生え、それが責任感ややりがいになっている」と強調する。
CADオペレーターはBIM/CIMに取り組む中で、どう対応すればいいか、判断に苦しむ場面も少なくない。栗山氏は「実は、その相談役として外部のアドバイザーにも入ってもらった」と明かす。同社は建設DX(デジタルトランスフォーメーション)のスタートアップ(新興企業)として豊富な実績を持つONESTRUCTION(鳥取市)やMalme(東京都千代田区)などと契約し、BIM/CIMソフトのレクチャーに加え、最新技術や国内外のデジタル化の動向についても意見交換してきた。
「自社内でスキルを上げていくには限界があった。経験豊富な方から学ぶことで、より実践で有効なスキルを習得できる」。CADオペレーターはトレーニングする中で、属性情報の扱いやソフトの高度な操作方法などを相談した。渡邊さんは「目的にあったBIM/CIMモデルづくりを丁寧に教えてもらえたことが、実務に生きている」と感謝している。
業務ではオートデスクの土木設計ツール『Civil 3D』を活用して道路設計の3次元モデルを作成し、そこから縦断図や横断図を出力するほか、統合モデルの作成ではコンセプトデザインソフト『InfraWorks』をフル活用している。「アドバイザーの方々が、経験に基づいたツール活用のコツを分かりやすく伝授してくれたことで、作業効率が向上している」と続ける。
栗山氏は、いずれBIM/CIM推進チームメンバーが各部門の推進役として活動することを期待している。「メンバーがBIM/CIMマネージャーとして機能すれば、組織としてもより機動的にBIM/CIMへの対応力を増していける」と強調する。
同社はBIM/CIM業務におけるモデリング作業のすべてを内製化することを基本にしているが、業務量に応じて簡易作業の一部を外部に委託することも考えており、今後を見据えて国内外の対応可能な協力会社との連携も模索している。国土交通省のBIM/CIM原則適用がスタートしてまもなく2年が経過する中で「われわれも着実に対応力を引き上げている」としっかりと先を見据えている。