【三菱商事の受渡基盤「Mill-Box」】ミルシート管理を電子で効率化 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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【三菱商事の受渡基盤「Mill-Box」】ミルシート管理を電子で効率化

建設業界・ゼネコン向け機能・サービス


 三菱商事が開発したミルシート(鋼材検査証明書)の電子受け渡し基盤「Mill-Box」の活用が、ゼネコンに広がっている。鉄鋼メーカー、建材商社、ファブリケーター、建設会社などのサプライチェーンに流通するミルシートを電子化し、従来の紙業務に比べて大幅な効率アップを実現する。2023年1月のリリースから2年間で200社以上が導入し、電炉メーカーでは6割が正式採用するなど市場に浸透してきている。今年1月には建設現場向けに開発した「鉄筋ラベルとミルシートの自動照合」をリリースし、準大手と地域ゼネコンで導入が進むほか、複数のスーパーゼネコンもトライアル利用している。 鉄鋼メーカーが鋼材を販売する際、検査済みであることを証明するミルシートは、メーカーから建材商社、ファブリケーター、ゼネコンへと鋼材とともに引き渡され、“バケツリレー”のように流通していく。

 三菱商事の試算によると、サプライチェーン全体のミルシートの流通枚数は年間約7000万枚。鉄鋼メーカーが発行する約480万枚の帳票が、流通が進むにつれて複写され増えていく。最終工程に位置するゼネコンでは中間、完成検査に活用する。

サービス概要


 こうした紙のミルシートを電子化するプラットフォームとして三菱商事が開発したのがMill-Boxだ。クラウド型サービスで安く早く簡単に利用できるほか、従来の紙の業務を削減し、大幅な効率化に貢献する。ミルシートの検査・登録はもちろんのこと、建設業界向けに必要な裏書き機能や、鉄鋼メーカーからデータを取り込む機能も搭載。電子開示が可能で、従来の取り引き企業間の印刷、仕分け、郵送などの手間が不要となるのが大きなメリットだ。

 市場投入から2年がたち、主要電炉メーカー30社のうち約20社が導入を決めている。「今後も一段と増える見込みだ」と同社の荒木隆之介新規事業開発本部産業素材DX部デジタル事業推進チームリーダーは胸を張る。流通を担う建材流通業者もIT導入補助金を活用して採用するケースが増え、鋼材のサプライチェーン全体でMill-Boxの市場浸透が進む。

 また、電子化に対応していない鉄鋼メーカーから受領したPDFや紙の帳票は、専用OCR(光学文字認識)を使用してデータ化し、Mill-Boxで一括して利用できる。ペーパーレス化による業務効率化やCO2削減、管理スペースの削減などの環境負荷低減効果が見込まれる。

 上流のメーカーや商社の電子化が進む中、川下のゼネコンを対象とした機能も充実させている。建設現場で鋼材を使うゼネコンの検査準備業務を効率化するために開発したのが、鉄筋ラベルとミルシートの自動照合機能だ。

 具体的には、スマートフォンのカメラで現場に納入された鉄筋の束ラベルに印字しているQRコードを読み込むと、鉄筋ラベルとミルシートデータを自動でひも付けできる。QRコードの印字がない場合は、OCRを使用してラベルの文字情報を認識する。これまでは職員が手作業と目視でラベルとミルシートを照合していたが、そうした手間を省き、鉄筋の品質や納品状況の管理を効率化する。

 Mill-Boxの管理画面には、ミルシートの一覧が自動生成され、発行日・鋼種・寸法・合計数量などを表示するとともに、鉄筋ラベルとひも付いているかどうかを確認できる。納品書、鉄筋ラベル、ミルシートをセットで印刷し、確認書類として活用することが可能だ。

 Mill-Boxはビジネスモデル特許を取得しており、鋼材の現物とミルシートをひも付ける仕組みが現場の働き方改革に貢献するとゼネコンからの評価も高い。

 25年度は、生産性向上の効果を把握するため、電子化による現場での定量的な時間短縮効果も検証していく。

 荒木チームリーダーは「マニュアルがなくても使えるほど操作は簡単で1日もかからずに誰もが習得できる。現場の規模に関係なく効果を発揮できるため、幅広い企業に利用してもらいたい。今後も建設現場の働き方改革に役立つ機能を充実させていく」と力を込める。

 

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