インフラメンテナンス/首長の覚悟問われる問題/家田教授が市区町村長会議で講話 | 建設通信新聞Digital

5月14日 水曜日

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インフラメンテナンス/首長の覚悟問われる問題/家田教授が市区町村長会議で講話

 インフラメンテナンス国民会議の副会長や、社会資本整備審議会(国土交通大臣の諮問機関)の小委員会委員長などを務める家田仁政策研究大学院大特別教授は、12日開かれたインフラメンテナンス市区町村長会議の全国大会で講話した=写真。投資の優先順位付け、インフラの集約、公共料金の値上げなど難しい判断を伴うことから、インフラメンテナンスは首長が主導して進めるべきとし、「市区町村長の見識と覚悟が問われている」と指摘した。
 インフラメンテナンスの問題は、機能喪失によってボトルネックとなる基幹インフラの改良・更新問題と、小規模インフラの将来戦略問題の二つに大別できると主張し、「この二つを混同しない方がいい。いま議論しているものはどちらなのかを明瞭にした上で話を進めることが重要」と説いた。
 市区町村のメンテナンス予算が限られる中、小規模インフラは集約を含めて検討すべきとし、「トリアージ(インフラメンテの優先順位付け)をして身を軽くしなければ、大事なところに投資ができない。身を軽くしつつ、大事なものに集中投下して質を上げていく。質の方向へ転換するしかない」と述べた。
 基幹インフラの改良・更新問題と小規模インフラの将来戦略問題は「ともすると先送りにされたり、看過されがち」であることから、「政治のトップ、つまり首長の見識と覚悟が問われている」と指摘した。
 インフラの健全度とメンテナンスの実施状況を見える化することの重要性を示し、「正直に見えるようにして、国民と問題を共有することが始めの一歩。これをやらないところは絶対に無理だ」と断じた。
 市区町村の技術職員が減っている状況に触れた上で、国交省が推進する地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の考え方に沿って、複数自治体の技術職員を束にする「人の群マネ」の重要性も説いた。
 インフラメンテナンスの現状については、「2014年に社整審の道路分科会長だったとき、『最後の警告 いますぐ本格的なメンテナンスにかじを切れ』と書いた提言を出した。その後、道路橋の点検周期を5年にするなど前進しているが、90度までかじを切れたかというとまだまだ」と受け止めを語った。