時流読解・工事繁忙期の解消見える化/国交省 | 建設通信新聞Digital

7月18日 金曜日

行政

時流読解・工事繁忙期の解消見える化/国交省

ピークカット指標の2023年度実績値
【第3次・全国統一指標にピークカット/年明けに新たな平準化事例集】
 国土交通省は公共発注者の取り組みを見える化する「第3次・全国統一指標」を決めた。施工時期の平準化に向けて1-3月の工事稼働状況を把握するピークカット指標を新たに設けた。2023年度実績では奈良県や福岡県などが高くなった一方、冬季の施工が難しい日本海側は基準値を割り込むなど地域特性による差が見られた。国交省は積雪寒冷地に対して実情に見合った目標設定を求めつつ、それ以外の地域に対しては積算の前倒しや早期執行の目標設定などでピークカットを進めるよう呼び掛ける。 全国統一指標は、国や都道府県、市町村などの公共発注者が発注関係事務の取り組み状況を客観的に把握できるようにするため、16年に初めて設定した。その後、公共工事品質確保促進法の改正に合わせて指標を刷新しており、今回の見直しは20年の「新・全国統一指標」以来となる。
 第3次・全国統一指標は、工事が「地域平準化率」「週休2日達成状況」「低入札価格調査基準や最低制限価格の設定状況」の3項目、業務が「地域平準化率」「低入札価格調査基準や最低制限価格の設定状況」の2項目で構成する。地域ブロックごとの発注者協議会で各指標の目標値や地域独自指標を決め、今秋以降に公表する。
 工事の平準化率は従来と同様、閑散期の4-6月期に加え、新たに繁忙期に当たる1-3月の実績を把握する。実績値は「1-3月期の工事平均稼働件数」を「年度の工事平均稼働件数」で除して算出し、「1.00」に近いかどうかで平準化の度合いを測る。工事稼働量の谷をなくすボトムアップだけでなく、山を解消するピークカットの視点を取り入れ、通年での施工時期の平準化につなげる。
 ピークカット指標について、都道府県や政令市、市町村発注工事を対象に算出した23年度の県域単位の実績を見ると、奈良県の1.29が最も高く、福岡県の1.24、山口県の1.21、大分県の1.19が続く。
 一方、積雪などで冬季の施工が難しい日本海側の地域を見ると、山形県の0.82を筆頭に、北海道と青森、秋田、新潟、富山、石川、福井の6県で1.00を下回る。全国平均は1.10だが、地域特性で必然的に1.00を割り込む積雪寒冷地を除くとその数値はさらに高くなる。
 国工事も含めた地域ブロック単位では、北海道が0.85、東北が1.00、関東が1.11、北陸が0.94、中部が1.12、近畿が1.14、中国が1.13、四国が1.12、九州が1.14、沖縄が1.12だった。
 県域単位の平準化率について、国交省は大きく2通りに分類できると指摘。このうち「ボトムアップ指標が1.00以下かつピークカット指標が1.00以上」の地域には、積算の前倒しや、早期執行のための目標設定などによるピークカットの推進を呼び掛ける。「ボトムアップ指標、ピークカット指標とも1.00以下」の地域に対しては、冬季の施工が物理的に難しくピークカットの改善が見込めないため、現状維持の目標設定を容認する考えを示す。
 その上で施工時期の平準化に向けては、4-6月の工事稼働率の低下が全国共通の課題と分析。まずはボトムアップの改善を優先し、支障のない範囲でピークカットを進めるよう求めていく。
 第3次・全国統一指標の各指標の目標値を公表した後、26年1月ごろに平準化の「さしすせそ」(債務負担行為の活用、柔軟な工期設定、速やかな繰り越し手続き、積算の前倒し、早期執行の目標設定)の新たな事例集を作成する。同年3月ごろにはボトムアップ指標、ピークカット指標を見える化するマップも公表する予定だ。