フィーチャーインタビュー2025・UBE三菱セメント 平野 和人社長 | 建設通信新聞Digital

8月28日 木曜日

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フィーチャーインタビュー2025・UBE三菱セメント 平野 和人社長

【世界視野に営業利益750億目標/ビジネスモデルで勝つ】

 社長就任から約5カ月になる。三菱マテリアルと宇部興産のセメント事業の統合、会社発足から3年が経過し、「この間に統合・融和がかなり進んだ」と話す。「当時は石炭価格が高騰し、非常に厳しい環境下だった。この時、危機感を共有できたことが大きかった。社員全員で意見を言い合える会社になった」と言い切る。  --就任の抱負は
 「今までは、宇部興産出身の小山誠前社長と三菱マテリアル出身の私の二人三脚で進んできたが、今年度から執行体制を一本化することになった。課題は多いが、責任を持ってやっていきたい」
  --国内需要をどう見るか
 「近年の需要下落傾向は、人手不足による工期の延長などによるものだ。働き方改革で工事が長引くと、当然、セメント需要も落ちる」
 「ただ、この傾向は落ち着いてくると期待している。社会インフラを支えているのはセメントだ。産業廃棄物処理も担っており、社会のインフラを資材供給、廃棄物処理の両面で支えている。産業がなくなることはあり得ない。一定の時期で下げ止まる。そうでなければならない」
  --米国事業については
 「セメント原料から生コンまでを自社で一貫して行う垂直統合ビジネスを進めている。生コンクリートだけ、セメントだけでは事業に限界があるため、生コン原料の骨材鉱山も持っている。流通段階では、セメントを取りに行く車、骨材を取りに行く車、生コンを出荷するミキサー車、全てをオペレーションルームで一元管理している」
  --モデルの水平展開は
 「垂直統合は、新規拠点を開設する際の見本になる。ビジネスモデルで勝つ。競争力はビジネスモデルだ」
  --次期中期経営戦略は
 「今年度を最終年度とする中期経営戦略は、戦略策定初年度で最終年度利益目標を達成した。あわせて30年度で営業利益を750億円とする目標も掲げている。この達成を前倒しで、できれば次期戦略で達成したい」
 「750億円は大きな数字だが、グローバルな視点に立てば、当社の組織規模として決して高い目標ではない。達成のイメージは既にある。精緻に予算を積み上げ、それを次期戦略として発表したい」
  --価格戦略は
 「今春のセメント値上げは、今の事業を維持するためのもので、カーボンニュートラル関連のコストは入っていない。コストが明確になれば、それなりの値上げも検討しなければならない」
 「国内のセメント事業は、一番のコアであり、アイデンティティーの事業にもかかわらず、採算が厳しい。ここでしっかりと利益を出すことが大切だ」


 (ひらの・かずと)「『前もこうだったから』は理由にならない」との言葉が印象的だ。自ら考え、変化を恐れない。挑戦する心が発言の端々から感じられた。